【大宮アルディージャVENTUS PRESS】村社汐理

前節、歴史的勝利を挙げた大宮アルディージャVENTUS。デジタルバモスでは毎月1回程度、大宮アルディージャVENTUSの情報をお届けします。



Vol.008 文・写真=早草 紀子

「迷っている暇はない。やるしかない」
村社汐理は前だけを見据えて走り続ける

 ひとたびボールを持つとスタジアムが沸き立つ。何かやってくれそう、そう思わせる魅力を放つのが村社汐理だ。もともと三菱重工浦和レッズレディースの下部組織でプレーしていたが、自らの可能性を求めてAC長野パルセイロ・レディース、ちふれASエルフェン埼玉、FC十文字VENTUSと渡り歩き、大宮アルディージャVENTUSでのチャンスをつかんだ。最後まで全力でボールを追いかける彼女のプレーの源泉、いままさに壁を越えようと向き合っている目下の目標――。村社選手が語ってくれたのは、プレーそのままの真っすぐな想いだった。

抜群の走力はどこからきた?

——FC十文字VENTUSから大宮Vへ。どこを評価されてオファーにつながったと思いますか?
「私も『何が良かったのですか?』って聞いたんです(笑)。そうしたら『球際の強さ』と返ってきました。1対1には自信があったので、そこを評価していただいてよかったです。ちょうど手術をしていた時期だったので、ケガをしている私を残してくれたということで、どんな理由であっても『やります!』という答えしかなかったです』

——初めて大宮Vの練習に参加したときのことは覚えてますか?
「めちゃくちゃ緊張してました。大野(忍)さんだ、鮫島(彩)さんだ、有吉(佐織)さんだって(笑)。先輩方の活躍は強烈でしたから。いまでもときどき、『同じチームなんだな……』としみじみ感慨に浸ることもあります」

——印象に残っているアドバイスなどはありますか?
「シノさん(大野コーチ)にボールを取るときの守備範囲を広げるアドバイスをもらったときに、『こうやってそこでボールを取れれば、“スーパー”になれるよ』と言われたんです。いままでそのように言われたことはなかったので、上を目指してる人は言うことが違うなと衝撃でした」

——大野コーチは独特の感性がありますから。そうしたアドバイスを受けてきていま、村社選手が最も自信のあるプレーは?
「何でしょう……やっぱり走ることでしょうか。技術はチームでも一番下だと思っているので、どこでチームに貢献できるかと考えたら、とにかく走ることだと思っています」

——走ることはもともと得意だったんですか?
「ペガサスという少年団でやってたのですが、すごく走るチームだったんです。小学校4年のときに6年生の男子と一緒にやっていたので、そこで揉まれました。そのときに『なぜペガサスというチームは走るのか』という題名の紙をもらったんです。『全員攻撃、全員守備をすることで勝てるし、守れる。サッカーの醍醐味はそこ!』と書いてありました。いまでも持ってます』

——いいですね。ぜひ大宮Vにも持ち込みましょう。
「行けますかね(笑)」

——だからいまの村社選手のプレースタイルがあるんですね。プレシーズンマッチでは左サイドをガンガン走ってました。スタンドの観客のみなさんも沸いてましたが、聞こえてました?
「うれしかったです。でもアリさん(有吉)は『コソがボール持ったときにすっごい沸いてたけど、全然キャラじゃないよね』と笑っていました。確かにそういうタイプではないのですが、楽しんでもらえたならうれしいです」

——キャラじゃないんですか?
「本当にドリブルとか嫌いで(苦笑)。技術的な練習が嫌いだったんです。だからこうなっちゃったんですけど……。ちふれASエルフェン埼玉時代はセンターバックだったのですが、『そこでFWを一枚はがせたら有利になる』と言われて、その手段の一つとしてドリブルの種をまいてもらって、実践したのがFC十文字VENTUS時代です。自分ではドリブルが武器だとは思ってないんです。逆にボールは裏に蹴ってくれ、走るから! という感じです(笑)」

——これまでのポジション歴は?
「ほとんどサイドバックです。でも、いまプレーしている右サイドは初めてなので、戸惑うことばかりです。左サイドとは視界が変わるため難しくて、一番苦戦しているのが守備面です。自分の右サイドのラインに入ってる選手が裏に抜ける動きが見えにくいため、必死に首を振り続けるようにしてます」



悔しさと決意

——実際に経験したWEリーグの印象は?
「INAC神戸レオネッサとの開幕戦(0-5)は落ち込むことばかりでした。杉田妃和選手とマッチアップしたのですが、彼女とは同年代なんです。この間のオリンピックを見ていてすごいなと思った選手だったので、負けたくないという意識で守備をしていました。1対1のところで負けることはなかったのですが、それでも裏を取られてしまったり、自分の課題が浮きぼりになりました。技術力、判断力、戦術理解度の違いに対してもショックを受けましたが、なかでも一番大きな差を感じたのは連動性でした。全体を通してまだまだだなと、いまでも思い出すと悔しいです」

——0-5という結果を受けて、第2戦から守り方を変えました。
「フォーメーションが変わったので、一人ひとりの役割が明確になりました。少しずつわかってきたところはあります」

——失点も抑えられてきていて、三菱重工浦和レッズレディースとの初のさいたまダービーを迎えました。ユース出身としては想い入れもある一戦だったのではないですか?
「そうですね。ただ、4失点もするような内容ではなかったと思っているので悔しいです。劣勢の時間帯もありましたが、チームとしてのシュートは10本も打っているんですよね……」

——あの一戦では確かに推進力も見えました。
「何度攻められても攻め返す姿勢は大宮Vの強みです。ダービーで最後に1点を返せたのも、ゴールを決めたいという気持ちがみんなにあったからだと思います」

——自分の強みというのも実感してきましたか?
「第4節目までのWEリーグのデータで、1試合平均の守備時のチャレンジ成功数がリーグ1位の79%だったんです。裏を返せばそれだけ攻め込まれてるということですが、成功率も80%近くだったので、そこは自分の強みにしてもいいのかなって思います」

——数字で可視化されることは大事ですね。今シーズンの目標は何か設定してますか?
「数字はないですが、チームが始動する前に全メンバーを知ったとき、今年は学びの年にすると決めていました。ちちろんサイドバックで出たいけど、鮫島さん、有吉さんがいるのでチャンスは少ないだろうけど、たくさん学ぼうと。結果的にまさかのお二人のケガで自分が出ることに。学びどころか、スーパーコンピューターばりの処理能力が必要でした(苦笑)」

——その経験も含めて、大宮Vに来て何か変化はありましたか?
「前向きになりました。FC十文字VENTUSのときは自分が中堅というか、年上の方だったんです。小島(ひかる)さんと副キャプテンをやっていたので、自分が勝利に貢献して、引っ張っていかなきゃいけない。でも敗戦続きですごく落ち込んだし、試合をするごとに自分たちの良さがなくなっていくし、どうしたらいいのかわからず迷いがあって立ち止まることも多かったんです。でも、ここに来てからは迷っている暇はない。やるしかない」

——その面は有吉選手、鮫島選手、上辻祐実選手、阪口夢穂選手らベテランたちが背負ってくれてます。
「アリさんたち87会(1987年生まれの上記4名)の人たちがいろいろと笑い飛ばしてくれているのですが、実際、あの立場になると全然笑い飛ばせないですよ。あの立ち場のキツさがよくわかるだけに、だからこそこのメンバーでたくさん勝ちたいです。きっと波に乗れると思うから」

——そういう想いが形になるといいですね。きっとファン・サポーターのみなさんにも伝わると思います。
「新設チームでもあるし、あまり勝てないなかでも温かいメッセージを下さるファン・サポーターのみなさんのためにも、何とか勝利を重ねて、上位に食い込めるように全てを尽くすつもりです。これからも末永くよろしくお願いします!」



早草 紀子 (はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

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