Vol.013 岩本 勝暁「みんなの思いをピッチで表現したい」【オフィシャルライター「聞きたい放題」 】

クラブオフィシャルライターが今、気になる人や話題についてどんどん切り込みます! 今回は、開幕からゴールマウスを守る上田智輝選手に話しを伺いました。昨年までJFLの奈良クラブでプレーしていた上田選手の目に、Jリーグの舞台はどう映っているのでしょうか。



Vol.013 岩本 勝暁

みんなの思いをピッチで表現したい


――まずはお誕生日おめでとうございます(取材があった3月3日が誕生日)。チームメートから祝ってもらいましたか?
「ありがとうございます。『おめでとう!』と言われたり、みんなから祝ってもらいました」


――ひな祭りが誕生日というのも素敵ですね。何か得したことはありますか?
「早生まれなので、中学生の頃は下のカテゴリーの代表に呼ばれることもありました。サッカーだったら早生まれの方がいいかもしれませんね。私生活だったら、免許を取得できるタイミングが同級生よりも遅れてしまうので……、そこはあまり得なことではないです(笑)」


――水戸ホーリーホックとの開幕戦がデビュー戦になりました。
「チームが始動してから、開幕スタメンを狙っていました。そこを達成できたことは個人としてうれしく思います。なおかつ、デビュー戦で勝利できたので、自分にとって最高の一日になりました」


――スタメンを告げられたときはどういう気持ちだったのですか?
「正直、自分の中で驚きはありました。でも、そこに向けてずっと準備をしてきました。みんなの代表としてピッチに立たせてもらうので、気持ちもすごく高まりました」


――80分にはゴール前でのビッグセーブがありました。あのプレーがなかったら、逆のスコアになっていたかもしれません。ご自身のプレーを振り返っていかがですか?
「前半の最初に失点してしまったんですけど、自分の中では冷静にプレーできたと思っていました。同点に追いついてくれたので、逆転ゴールを取ってくれることを信じてずっと守っていました。(80分のシーンは)集中力を切らさなかったことが、自分の中では大きかったと思っています」



――J2のレベルをどのように実感しましたか?
「スピード感は、今までやってきたJFLとは違うと感じました。そこに早く適応しないといけないと思っています。判断が少しでも遅れると、相手のプレッシャーがくるので、そのあたりのスピード感をもっと上げていかなければいけません」


――水戸戦のあとは、奈良クラブの関係者からもお祝いはあったのでしょうか?
「はい。昨年まで監督だった林舞輝さんや同級生から『おめでとう!』という言葉をいただきました。奈良クラブから来た僕がこうしてJ2で活躍することで、JFLのカテゴリーでプレーしている人にもいい影響を与えると思います。そういうみんなの思いをピッチで表現できたらいいですね」


――あらためて移籍を決断した思いを聞かせてください。
「中学高校と京都サンガF.C.のアカデミーでやらせてもらっていて、もともとプロが目の前にある環境でした。高卒でプロにはなれませんでしたが、関西学院大に行ってからもずっと意識はありました。奈良クラブでプレーしていたときも自分の夢だった『Jリーガーになりたい』という思いはあったので、アルディージャからオファーをいただいたときはすごくうれしかったです。もちろん、地元の奈良クラブをJリーグに上げたいという気持ちもすごくありました。でも、Jリーグでサッカーができるチャンスを与えていただいたことで、すぐに自分の中ではチャレンジしたいという思いが強くなりました」


――アルディージャに加入して感じたことはありますか?
「25歳になってもう若くもないので、自分がしっかりリーダーシップを出していかなければいけないと思っています。GKのポジションでも自分が引っ張っていく。JFLから来た選手じゃなくて、今はJ2の大宮アルディージャに在籍する選手なので、そこは遠慮なしにどんどんやっていきたいですね。チームが始動してここまでの間、そういうことをすごく感じています」


――奈良クラブではどういう環境で練習していたのですか?
「僕の場合、午前中はチームで練習して、午後からはスポンサーさんのところで働いていました。工場で荷物を梱包したり、そういうことをメインに週4日で仕事をしていました。だから、練習のあとに自主練ができなかったり、ちゃんとした食事も摂れなかったりしたのですが、アルディージャに来てからは自主練をする時間もあるし、食事もしっかり出してもらっています。今はサッカーに集中できる環境がすごくあると実感しています」


――奈良クラブでの3年間で学んだのはどういうことですか?
「2年間はなかなか試合に絡めなかったのですが、3年目に林舞輝さんが監督に就任し、GKコーチがジョアン・ミレッさんになって、自分の練習に対する姿勢や考え方がすごく変わりました。練習でやっていることが試合に出るようになって、それがすごく自分の中で自信になりました」


――奈良クラブといえば、和柄のユニフォームが印象的です。
「そうなんです。サポーターもそうですけど、選手の間でも『今年はどんなデザインになるんだろう』といつも話題になっていました。生地もよくて、とても動きやすいんですよ。サポーターの皆さんも注目してくださるので、発表会では結構ざわついたりするんです」


――また、SNSを使って広く情報を発信するなど、クラブのプロ意識も非常に高いと感じました。
「はい。選手にも『ちょっと手伝ってくれないか』と言ってくださるので、積極的に広報したりビラ配りを手伝ったりしていました。奈良にJリーグを作りたいという気持ちが強いんです。奈良には奈良クラブとは別に関西1部に所属するポルベニル飛鳥というクラブもあって、切磋琢磨してきました」


――上田選手のご出身も奈良県ですが、奈良自慢はありますか?
「大仏が有名ですが、観光地としてはとてもいいところだと思います。新型コロナウイルスが広まる前は、外国人の観光客もたくさん訪れていました。Jリーグのチームができたら、より注目を集めるんじゃないかと思います」


――チームの雰囲気にはなじめましたか?
「はい。同級生も多いし、先輩たちも優しいので、チームには溶け込みやすかったです」


――同級生は誰ですか?
「大山啓輔選手、中野誠也選手、矢島輝一選手です。中野選手はジュビロ磐田のアカデミーにいた頃に結構対戦したことがあります。大学でも対戦することがあったので、面識のある選手がいたことはチームに溶け込む上でとても助かりました。加入が決まったときも、すぐに中野選手にLINEをして『また一緒に頑張ろう』という話をしたんです」


――加入が決まったときのコメントに「NACK5スタジアム大宮は思い出深い」とありました。どういう意味ですか?
「僕が大学2年生のときに、インカレの準決勝をNACK5スタジアム大宮でやったんです。相手は明治大でした。その試合に勝って決勝に進めたので、とても思い出に残っています。サッカー専用のスタジアムで、スタンドとピッチが近くてすごくプレーがしやすかった。そこがホームスタジアムになるのかと思ってワクワクしましたね」


――改めてご自身のアピールポイントを教えてください。
「持ち味でもある左足のキックを、ビルドアップの部分や前線へのフィードに生かしていきたいです。攻撃の起点になるようなパスを出したいので、そういうところをファン・サポーターの皆さんには見ていただきたいですね。まずはGKとしてゴールを守ることを最優先に考えて、相手の隙があればキックで狙いたいと思います」



――GKは競争が激しいポジションです。

「練習でも一つの油断だったり隙を見せたらすぐに取られるポジションです。アルディージャにはお手本になるGKがたくさんいるので、いいところを盗んで自分のものにしつつ、なおかつ自分の特長でもあるビルドアップの部分など自信があるところで勝負していきたいです」


――クラブとしてはJ1昇格が最大の目標になります。
「自分がその力になりたいと考えていますし、試合に出続けて自分をしっかりアピールしていきたいです。アルディージャの勝利に貢献できるよう、一試合一試合、一日一日の練習を無駄にせずやっていきたい。たくさんのファン・サポーターの皆さんに新しい大宮アルディージャを見てもらい、その声援にしっかり応えられるように頑張りたいと思っています。ぜひ応援よろしくお願いします」



岩本 勝暁 (いわもと かつあき)
2002年にフリーのスポーツライターとなり、サッカー、バレーボール、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ大会から2016年リオ大会まで4大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。2003年から大宮アルディージャのオフィシャルライター。

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