今野浩喜の「タダのファン目線記」浜谷健司[後編]
突撃インタビューシリーズ 今野浩喜 vs 浜谷健司[後編]
今野さんがタダのファン目線でクラブスタッフに逆取材を敢行! 今回もOle!アルディージャMCを務める浜谷健司さんの登場です。競争の激しい芸能界を生き抜いてきた2人によるアルディージャトークをお楽しみください。前編はこちら
インタビューって難しい?
今野「最初のころ、選手に質問するにも何を聞けばいいんだって、ならなかった?」
浜谷「だから、最初の最初は本当にディレクターさんと相談しながら、試合終わりにまず『こんな質問どうですか?』って確認して、『いいですね』とか『これはいらないかな』とか言われて、それで質問してましたね」
今野「台本に書いてあることすら分からないってことは?」
浜谷「そこは常識の範囲内で勉強しましたけどね」
今野「分かる? ゲーゲンプレスとか」
浜谷「ん?」
今野「そういう専門用語とかあるわけじゃない」
浜谷「最初は『何か言ってるな』と思いながらもスルーしてましたけど、赤ちゃんが言葉を覚えるように、だんだん分かるようになってきました」
今野「……」
浜谷「あれ? また止まってますけど。柔道から真面目な話に変えたのに……。今野さん、起きてください(笑)」
今野「何で〜。調子悪いね」
(……しばらく中断)
浜谷「これがどういう記事になるのか、楽しみでしょうがないですね(笑)」
今野「(戻ってきて)今、スタッフさんと俺の悪口言ってた?」
浜谷「いやいや、正直に言うと、こんな感じで大丈夫なのかって言ったら、いつもこんな感じだし、そこが今野さんの良さだって」
今野「不安に思う人はいるみたいね」
浜谷「でもね、このスタンスでやってると、意外と普段は出てこない言葉が聞けたりするかもしれないですからね」
今野「そうなのよ。浜谷くんもいつも聞く側じゃない。聞かれる立場になったことある?」
浜谷「……ないですね」
今野「だからいいんだよ。自分的に、これはいい質問だったってのはありますか?」
浜谷「選手に対してですか? う〜ん、そんな自画自賛できる質問したことあるかなぁ。いやぁ、あれはナイスな質問だったなっていうのはないけど、やっぱり浜谷健司なりの、選手の思わぬ笑顔を引き出すような場面はあったかもしれないですね」
今野「あぁ〜」
浜谷「選手も、おそらくお決まりのフレーズがあるわけじゃないですか。そうじゃなくて今、今野さんが私にやっているように、普段の顔を引き出せたときはうれしいですね」
今野「なるほどね。選手って、やっぱりゴールを決めた瞬間から考え出すのかな?」
浜谷「いや、決めた瞬間からインタビューのこと考え出す選手はいないと思いますけど、今日は呼ばれるだろうなってのはあるんじゃないですかね」
今野「そうだろうね。あれ? 浜谷くんは『真田丸』で一緒だったじゃない」
浜谷「あっ、そうだ。すごい。これ大河俳優対談ですよ」
今野「ふふふ……」
浜谷「これは、とんでもない神回ですよ」
今野「このコーナー、大河俳優出てきたの初めてだわ」
浜谷「あははは……。貴重な回ですよ。『真田丸』、私は服部半蔵をやらせてもらいました」
今野「世間は忘れてるのかな」
浜谷「忘れてるから(笑)、定期的に言わないといけない」
今野「あれの打ち上げとかさ……」
浜谷「(笑) 『真田丸』の打ち上げの話?」
今野「一人ひとり、コメントを言わされたじゃない。打ち上げで」
浜谷「そうそう。ホテルに何百人も関係者が集まって、出演者全員が挨拶するんですよね」
今野「ああいうのって俺、撮影中から考え出すんだ」
浜谷「は〜、そういうことね。撮影中から、打ち上げでコメント求められたときに何を話すか考えてる。それがゴールを決めたサッカー選手と同じってことを言いたいの?」
今野「そうじゃない?」
浜谷「あははは……」
今野「だから、その場で答えてるわけじゃなくて、用意はしてるよねって」
浜谷「確かに。1、2行は考えてるかな。だから、その先を引き出すのがインタビュアーの面白いところではありますよね」
呼び方問題
今野「サポーターの人から話しかけられたりする?」
浜谷「ありますね。スタジアムに行くと『ケンジ』とか『今日勝とうね』とか」
今野「へ〜、『ケンジ』は腹立たない?」
浜谷「立たないですよ(笑)。腹立ってても、ここでは言わないですよ。『初対面のヤツに呼び捨てにされて腹立つ』って、そんなこと言うタレント聞いたことありますか(笑)」
今野「ふふふ……、聞いた以上に答えが返ってきたけど(笑)」
浜谷「さすがっ。インタビュアーとして優秀! いや、うれしいですけどね」
今野「なんだろ、サポーターの人にとってはサッカー選手こそがあこがれの人で、それ以外の人は同等の立場じゃない」
浜谷「仲間なんでしょうね」
今野「でも、仲間でも敬語は使いたいじゃない」
浜谷「いやいや、皆さん敬語で話してくれますよ」
今野「距離が近いなって思わない?」
浜谷「それってサッカーの魅力の1つじゃないですか。距離感の近さというか。関係者もガッチリ握手で、ヨロシクッみたいなところあるじゃないですか」
今野「ファミリー感の強さね。サッカーって選手間でもジャニーズのように〇〇くんって、タメ口でしゃべるよね」
浜谷「その文化が広まって、私も『ケンジ』なわけじゃない?」
今野「でも最近、あだ名を止めようってニュースがあったでしょ」
浜谷「急に世相を切ってきましたね」
今野「そうなると、試合中も結局、『〇〇さん』ってことになってくるわけですよね」
浜谷「それはそうですね。年下の選手は年上の選手の名字を、さんづけで呼ぶと」
今野「うんうん。だから、今後ね、サッカー界も変わりますよ」
浜谷「変わらないですよ。試合中『〇〇さん、パス!』って言うヤツいないでしょ」
今野「お相撲さんの名前だって、あだ名と言えばあだ名でしょ」
浜谷「ぬははは……。〇〇山とか〇〇海とか、あだ名だから良くないと(笑)」
今野「そうそう」
浜谷「ちゃんと本名で呼べと。しこ名がなくなったら盛り上がらないでしょ」
今野「だから、芸名みたいに自分から名乗ればいい」
浜谷「自分から?」
今野「こう呼んでくれって。芸名だってそうじゃない。あだ名じゃなくて自分から名乗る」
浜谷「それをサッカー選手も?」
今野「そうそう。人からつけられるからダメなんでしょ」
浜谷「確かに、それは、小学生のサッカーチームで提案してもいいかもしれないですね。こう呼んでほしいと言うってことね。しこ名に関しては、全然納得できないけど」
今野「それを、オレアルで呼びかけてください」
浜谷「(笑) 『子どもたちよ、今みんなあだ名で呼んでるけど、それは本人が呼ばれたい名前か?』と。『相撲とりの人も一緒だぞ』って(笑)」
今野「そうそう」
浜谷「本人が納得してれば、周りが決めてもいいと思いますけどね」
今野「突き詰めて言うと、あだ名じゃなくて悪口がダメだってことでしょ」
浜谷「あのね、答えを知ってるならいいじゃないですか。自分で答えを知ってて、それを言いたいから誘導尋問して。最後にそれを言いたかっただけでしょ(笑)」
タイトルホルダーの心構え
今野「選手とかサポーターから『おいっ、ゲスの極み』とか言われました?」
浜谷「あははは……。一発目からそれはないですね」
今野「『ゲスの極み、言ってください』っていうのは?」
浜谷「いないですね。テレ玉のスタッフで異常に言わせるヤツはいましたけど(笑)」
今野「ははは……。そうなんだ。ゲスの極みを言い始めたのは、いつごろから?」
浜谷「ライブシーンで言ったら、2008年とかじゃないですか。テレビとか有名なネタ番組とかで言ったのが、2010〜11年とかじゃないかな。もしかしたら、深夜番組とかではもう少し前から言ってたかもしれないですね」
今野「だって、『THE MANZAI』で優勝したころが、一番いい時期の『ゲスの極み』でしたよね」
浜谷「あれは2012年でしたね……って、終わったみたいに言うんじゃない!」
今野「いやいや。あれが一番いいころ。『THE MANZAI』優勝者としては、番組が終わるときはどういう気分だったんですか?」
浜谷「なんか、お笑い雑誌の取材みたいになってるけど、大丈夫ですか? いや、自分の番組でもないですし、そんなに悲しくはなかったですね」
今野「でも、長く続いた方が重みが」
浜谷「これ、デジタルVAMOSの取材ですよね?」
今野「いや、何にしても優勝者なわけですよ。だから、選手に教えてあげられることがあると思うんですよ」
浜谷「優勝の仕方を? いや、それ言うなら今野さんだって優勝してるでしょ。2010年の『キングオブコント』で」
今野「俺は選手に会う機会がないから」
浜谷「そうですかぁ?」
今野「優勝の仕方というか、物事の勝ち方だよね。例えば決勝の漫才をする前、気持ちの高め方とかありました?」
浜谷「それは、手前味噌ながらありましたよ。漫才の大会ですから、いろんな面白いヤツ、いろんな手法のヤツが集まってるけど、誰が面白いか、そんなものは知らん、と。だけどこの漫才をやったら自分が一番面白い! そういう強い気持ちでいきましたよ。つまり、勝ち負けじゃなくて、これをやらせたら俺が一番だっていうね」
今野「あぁ〜(深くうなずく)」
浜谷「サッカーに落とし込むなら、このサッカーをやったら俺たちが一番という気持ちを持つことですかね。……って、こんなことあんまり聞かれたくないな」
今野「なるほどね」
浜谷「大丈夫かな。アイツ、何を偉そうに上から目線で言ってんだってならない?」
今野「ならないならない。優勝してる時点で浜谷くんの方が偉いんだから」
浜谷「偉くはない! こんなの活字にしないでよっ。活字にした途端に叩かれるんだから。この和気あいあいとした雰囲気も、ちゃんと伝えてよ(笑)」
今野「Jリーグは全部で58チームでしょ。それに対して『THE MANZAI』は?」
浜谷「何千でしょうね」
今野「だから、川崎フロンターレよりも偉いんですよ」
浜谷「いやぁ〜、ちょっと違うんですよね、それは(笑)」
今野「いや、そうなんですよ」
浜谷「全然違うと思うんだよな。今野さんも『キングオブコント』優勝してるでしょ」
今野「だから、そこは否定しませんよ」
浜谷「あははは……。最悪ですよ、今日のMCとゲストは。てめぇで大河俳優だと言って、優勝者だと言って(笑)。こんなの活字になった時点で大炎上ですよ」
今野「要は、今のチーム状況は良くないけど、やってることを目の前の勝利のために形を変えなくてもいいんじゃないかって考え方ですね」
浜谷「……そうかもしれないですね。いや、そう言い切りたくはないなぁ」
今野「どうして?」
浜谷「サッカーもお笑いも、いろいろ試して試行錯誤することも大事かなと。僕も最初、ゲスの極みは半年くらいスベリ続けましたからね」
今野「へ〜」
浜谷「最初は引かれたりしたけど、試行錯誤して、なんとかウケるようになってきたんで。だから、2020シーズンはそういうシーズンなんじゃないですかね」
今野「……」
浜谷「今野さん? また止まったよ。今、真面目に答えたつもりなんですけどね。またいつも面白い顔で止まるんだよ、この人は(笑)」
(しばらくして……)
今野「いやぁ、すみません。何の話をしてたっけ?」
浜谷「真面目な話ですよ。お笑いとサッカーに通じることがあるとすれば、自分のやり方、このスタイルでいくって信念を持つことだって」
今野「それでいて、試すことも必要だって言ってたよね」
浜谷「そうそう!」
今野「でも、それはずるいよ。何でもいいってなっちゃうじゃない」
浜谷「う〜ん、月並みな表現になっちゃうかもしれないですけど、失敗を恐れないで変化、進化するためにいろいろ変える勇気も必要かと……」
歯車が噛み合えば
今野「浜谷くんから見て、今チームがうまくいってない原因は何だと思いますか?」
浜谷「いきなり、そんなえぐるような質問来ます。エンディングに向かってるときに」
今野「だからこそなのよ。司会の立場だと自分の意見って言えないでしょ」
浜谷「いや、そんなことはないですけどね。これは素人すぎるのかもしれないですけど、私は何も悪いと思ってないんですよね、噛み合わせ、タイミングだけの問題だって」
今野「一つ噛み合えば、ものすごく強いと」
浜谷「僕は芸人の世界しか経験してないんで、そういうたとえになってしまうんですけど、すごくスベり倒してるけど何か引っかかって面白いヤツっているじゃないですか?」
今野「うんうん」
浜谷「そういうヤツって、何かのきっかけで跳ねて、ポンポン売れたりするんですよね。大宮アルディージャの試合を見てても悪いところは感じなくて、ただただまた次の試合を見たい、と思うだけなんですよ」
今野「大量失点しても?」
浜谷「誰だって、スベるときもあるじゃないですか」
今野「でも、ずっと客のせいにして消えていく人もいるよね」
浜谷「あははは……。それは芸人の世界の話ですね。だけど、そういうヤツとは違って、大宮アルディージャには感じるものがあるので、そこは全然違うんですよね」
今野「最後、『やべっちF.C.』が終わったことについては、どう思いますか?」
浜谷「(笑)。まずは、お疲れさまです」
今野「枠が空いたなとは?」
浜谷「それは一瞬よぎりましたけど、俺には関係ないって思い直しました」
今野「でももう、『SUPER SOCCER』か『FOOT×BRARIN』か『オレアル』だよね」
浜谷「ありがとうございます」
今野「はい。じゃ、今後も頑張ってください」
浜谷「うわっ、終わったー! 急に終わったよ(笑)」
今野「何か言い残したことは?」
浜谷「じゃ今野さん、『オレアル』のオファー断らないでください」
今野「いいですけど、その場にいてくださいよ」
浜谷「必ずいます」
今野「いなくても滞りなくいったから、別にどっちでもいいけど」
浜谷「いや、いるいる。私がいるときに来てください」
今野「はい。じゃ、そういうことで、気をつけて帰ってください」
浜谷「分かりました。ありがとうございました。じゃ、今野さんまた!」
インタビュアー:今野浩喜
構成:粕川哲男
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