今野浩喜の「タダのファン目線記」チームバス運転手

突撃インタビューシリーズ 今野浩喜 vs チームバス運転手

今野さんがタダのファン目線でクラブスタッフに逆取材を敢行! 今回は、チームバスを運転している中島さんを直撃しました。運転手さんならではの苦労話やアカデミー出身選手の話で盛り上がり、最後は卓球愛がほとばしる謎の展開に――。


クラブハウスの中心で、愛をさけぶ

今野「おはようございます(小声で)」

中島「(大きな声で)おはようございます!」

今野「あぁ、今野です」

中島「中島です」

今野「何て呼ばれているんですか?」

中島「会社だとナカジですね」

今野「だいたいそのパターンですよね。中島はナカジ、渡辺はナベちゃんとか」

中島「それか、下の名前で呼ばれるか。どちらかです」

今野「下のお名前は?」

中島「武清(タケキヨ)です」

今野「ほ〜〜。何て言うんでしょうね。クラシックモダンな」

中島「外国の方には、よく『武士みたいだ』と言われます」

今野「そうですね。タケキヨ、タケキヨ……。あっ、何か聞き覚えがあるなと思ったら、清武(弘嗣/セレッソ大阪)でしたね」

中島「そうなんです(笑)」

今野「ナカジさんは、どんなお仕事をされているんですか?」

中島「チームバスの運転をやっております。トップチームと育成の両方を」

今野「育成というのは、何歳くらいですか?」

中島「小学生のU12から、高校生のU18までですね」

今野「ナメた口とか叩かれないですか?」

中島「監督、コーチも乗っていますから(笑)。みんなきちんとしています」

今野「窓の外に手を出すとか、そういう子どもたちでしょ」

中島「いや、窓は……、ほとんど開けませんね」

今野「どういった経緯で、運転手さんというお仕事に?」

中島「もともとは会社の管理課にいて、幼稚園のバスなどを管理していました。運転手に欠員が出た場合などには運転していました」

今野「昔からバスを運転したかったんですか?」

中島「いや、どちらかと言うと不得意だったんですけどね。チャンスをいただいたので、2008年からずっとチームバスを運転させてもらっています」

今野「ご家族はいらっしゃるんですか?」

中島「妻と2人で」

今野「いいですね。いいと思います」

中島「気楽なもんで」

今野「昨年も、女優さんで運転手さんと結婚された方がいましたね。運転手さんはモテるんですかね」

中島「そんなことないと思いますけどね」

今野「どのあたりに惹かれたんですか?」

中島「優しさと人間性だと思います」

今野「愛してますか?」

中島「ええ、もちろん」

今野「あぁ、いいですね。じゃ、奥さまへの思い、一言いただいていいですか?」

中島「毎日毎日、仕事で忙しい中、自分のこと、家のこと、尽くしてくれてありがとう。感謝しています」

今野「素晴らしいですね。なかなか言えないですよ」

中島「ありがとうございます」


時間内に着けるか。それが問題だ

今野「……このミニカーは、何なんだろう」


中島「私が作ったから置いてあるのかな」

今野「作った! どういうことですか?」

中島「写真を見ながら、チームバスになるようにあれこれと」

今野「あぁ、デカールを貼ってるんですね。オレンジ色は塗ったんですか?」

中島「塗ったんです」

今野「マスキングして?」

中島「はい」

今野「もともとバスのミニカーはあるんだ」

中島「そうですね。観光バスで似たようなやつが。ずいぶん古くなってしまいましたけど」

今野「いやいや、すごいですね。ミニカーが好きなんですか?」

中島「ミニカーというか、モノを作るのが好きなんです」

今野「プラモデルとか?」

中島「そうですね」

今野「何で、自分から作ったと言ってくれなかったんですか。もし俺が聞かなかったら、ただ過ぎていっただけですよ。言ってくださいよ」

中島「すみません」

今野「危うく見逃すところでした。もうビックリするなぁ。この仕事をしていて、難しいことってありますか?」

中島「いかに安全に、時間内に着けるか。それが一番難しいですね」

今野「そうですね。それは分かるわ〜」

中島「そのために試走したり、いろいろ準備したり」

今野「事故渋滞とかは読めないですもんね」

中島「そうですね」

今野「1人だったら、早めに着いたら着いたでいいかってなりますけど。そうじゃない。マジで大変ですね。どうやっているんですか?」

中島「前日や当日に渋滞情報を聞いたり、先発隊に話を聞いたり。あとはマネージャーに相談したり」

今野「試合の日は、何分前にスタジアムに入らなきゃいけない決まりとかあるんですか?」

中島「チームからは、1時間半前までにとお願いされています」

今野「だいたいピッタリに着くんですか」

中島「10分前に着くようにしています」

今野「その誤差は、なかなか勇気いりますね」

中島「『早すぎる』と言われることもあるので、時間調整しながら走っています」

今野「歩行者の信号が点滅したら徐行して時間を稼ぐとか?」

中島「いや、黄色信号で止まるルールなので」

今野「そりゃそうなんですけどね(笑)。早ければゆっくり走るとか、時間がないと少し急ぐとか」

中島「そうですそうです」

今野「早すぎると言われても困りますよね。早いぶんにはいいでしょ」

中島「そこは……」

今野「着いてゆっくりする方がいいじゃないですか。言ってやればいいんですよ」

中島「へへへ……」

今野「遅れるのはダメだけど、早いぶんにはいいだろうって。違いますか?」

中島「どうでしょう……」


奥抜選手の成長にしみじみと

今野「車内の雰囲気、選手たちの様子はどうですか?」

中島「若い選手を中心に和気あいあいとした雰囲気ですかね。運転しながらなので詳しい話の内容は分かりませんけど」

今野「仕事をしていて楽しいと思うことは?」

中島「ちょっと場面が変わりますが、育成を長く見ていると、選手たちの成長具合とかを見られるのは楽しいですね。考え方が、少しずつ大人になっていくところとか」

今野「そんなことまで分かるんですか?」

中島「一緒に移動して試合も見ているので。挨拶できなかった子ができるようになったり、態度が良くなったり。そのままトップチームまで上がっていって活躍している姿を見ると、感慨深いところがあります」

今野「ずっと見てきたのは、どのあたりの選手ですか?」

中島「例えば、奥抜(侃志)選手や加藤(有輝)選手は、小さい頃から見てきました」

今野「偉そうになったりしていません?」

中島「それはないですね」

今野「奥抜選手、もともとはどういう感じでした?」

中島「本当におとなしい子でした。試合後のインタビューなどを聞いて、ちゃんと話せるようになったんだなって」

今野「当時は、大丈夫かコイツ、と思ってたんですね(笑)」

中島「いやいや(笑)」

今野「試合日のスケジュールはどんな感じですか? 例えば、試合が14時だったら」

中島「14時キックオフなら、6時頃には起きて……」

今野「早くないですか」

中島「朝食を食べた後、バスを清掃して」

今野「どれぐらい?」

中島「2時間ほど」

今野「えっ、2時間も掃除するんですか」

中島「やっぱり自家用車よりも大きいんで」

今野「こんなもんでいいか、って感じじゃないですね」

中島「室内外を、ぞうきんで拭いています」

今野「スナック菓子とか落ちてるんですか?」

中島「それはありません」

今野「どうして汚れるんですか?」

中島「そのまま入るので……」

今野「砂とか足跡とか?」

中島「そうですね。窓の手の跡とか」

今野「窓を曇らせて、ハートとか相合傘を書くやつがいるんですか? 2時間掃除するのか。運転よりも時間がかかるじゃないですか」

中島「そうですね」


ほとばしる卓球愛

今野「やっぱり、大宮のことは応援しているんですか?」

中島「はい。自分は卓球をやっていて、サッカーは体育の授業でやったくらいで、ほとんど知りませんでした。でも、最近は妻と年間4試合くらい見ています。あの臨場感は本当にすごいですよね」

今野「そうですよね。……ただ、今は卓球の話がしたくて仕方がない(笑)。戦型は?」
※今野さんは学生時代、卓球部に所属していました。

中島「一応、ドライブ攻撃型ですね」

今野「ペンドラ?」

中島「そうです」

今野「俺と同じですね。中ペン?」

中島「中ペンです」

今野「俺も中ペンです。両面つけて?」

中島「ですね」

今野「あぁ〜。中ペンの何つけてました?」

中島「40歳からまた始めて、ラバーはキョウヨウっていう中国ラバーをつけています」

今野「どっちもつけてるんですか」

中島「裏と表ですね」

今野「やっぱり表になるんだ。卓球知らない人は何を言ってるか分からないと思いますが、ザマアミロですね(笑)」

中島「いえいえ(笑)」

今野「知らない人が見たら、裏のラバーが一般的に見ている方だとは思わないでしょうね。俺はハイテンションラバーの一番高いやつを。厚みはトクアツですか?」

中島「自分はチュウアツです」

今野「俺は、片面はアンチラバーに。……って、俺だけですか食いついてるの」

中島「あっ、いやいや、私も興味はあります」

今野「何か一方通行な気がしたので。どうしたんですか、緊張してるんですか?」

中島「はい。緊張しています」

今野「このへんで大丈夫ですかね。これ聞かないのかよってことはないですか?」

中島「大丈夫です」

今野「では、どうもありがとうございました」


インタビュアー:今野浩喜
構成:粕川哲男

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