ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”するオフィシャルライター陣の視点で、毎月1回程度お届けします。
U18期待の星
トップチームに大宮アルディージャユース(現U18)出身選手が12人いる。クラブに関わる多くのスタッフが、地元の選手を中心に育ててきた証だ。幼い頃からオレンジのユニフォームになじみ、クラブに強い愛着を持つ彼らは、ファン・サポーターにとって期待の星であるだけでなく、後に続く後輩たちにとっても大きな存在だ。
U18からは、奥抜侃志、吉永昇偉、高田颯也と3年連続でトップチームに選手が昇格。昨シーズンは奥抜も吉永も出場経験を得て活躍した。新高校3年生には、吉永や高田とともにプレーした経験がある選手もいる。
4月4日に高円宮杯プレミアリーグ開幕を控えるU18の新3年生は、好成績を残してきた世代だ。ジュニア(U12)時代にはダノンネーションズカップで準優勝、Jr.ユース(U15)時代には高円宮杯で第3位と、全国規模の大会で結果を残してきた。今シーズンの目標は、初の全国タイトル獲得。「アカデミーの歴史を変える」が合言葉だ。そのためには、選手個々の飛躍も必要なのだが、楽しみな選手が多い。
中でも期待値が上昇しているのが、先日トップチームに2種登録されたGKジョーンズ レイ(3年)だ。「他クラブの同学年の選手が昨年2種登録をされていて、焦りもあったので、2種登録の話を聞いたとき、最初は驚いたけど、うれしかったです。自分がJr.ユースにいた頃、黒川(淳史)君たちがユースで2種登録をされていたので、自分もU18からの2種登録は目標にしていました」と、喜びの言葉を口にしている。
ジョーンズは、父が米国人、母が日本人のハーフ。ジュニア時代からのアカデミー育ちで、足下でボールを扱う技術に長けている。身長は180センチに満たず比較的小柄だが「その分は技術で補う」と言うだけあり、特にキックの精度は光るものがある。
持ち味は、パントキック。相手の背後やサイドのスペースに走る味方に正確に合わせ、一気に守備から攻撃に切り替えるプレーが持ち味だ。2月にはトップチームの練習試合に出場。「2失点したけど、得意のパントキックは成功したし、ビルドアップに関わるところはできた部分もあった。トップチームの選手は積極的な声かけをしていたので、U18でもやっていこうと思いました」と強い刺激を受けた。
GKは定位置争いが最も厳しいポジションだが、ジョーンズは明るく前向きなキャラクターで挑んでいく。「トップチームの練習に参加するときは、他の選手の良いところをどんどん真似して採り入れたいし、もっと信頼を得たい。今後、目標であるトップ昇格を果たして、最初から試合に出るくらいの気持ちで、信頼を得られる選手になりたい」と、どん欲だった。
ジョーンズの普段のキャラクターについてU18主将の谷口大晟に聞くと、「黙っていれば男前で格好良いのに、寮でもいつもうるさい。誰も求めてないのに一発芸をやりたがって、それがまた全然面白くない……」と、いたずらっぽく話した。空回りしても気にせず、どんどんトライして進化する若き守護神は、U18の最後の砦として、そしてトップチームの一員として、新たなシーズンでさらなる成長を目指す。
今シーズンのU18はジョーンズのほかにも、ジュニア時代からのエースストライカー・大沢朋也や、切れ味あるドリブルやパスで攻撃をけん引する柴山昌也ら、注目株がそろっている。奥抜、吉永、髙田――。次はオレだと自負するU18戦士にも、ぜひ注目してもらいたい。
平野 貴也(ひらの たかや)
大学卒業後、スポーツナビで編集者として勤務した後、2008年よりフリーで活動。育成年代のサッカーを中心に、さまざまな競技の取材を精力的に行う。大宮アルディージャのオフィシャルライターは、2009年より務めている。