かつては選手として、現在はクラブスタッフとしてアルディージャを支えるOB選手に、ベストイレブンを選んでいただきました。今後、現役選手バージョンも!? 選定基準に縛りなし! 自分を入れるかは、本人の自由! 第2回の選定者は、2006年から2014年まで選手として、2017年からはクラブスタッフとしてアルディージャで活躍している元GK江角浩司さんです。
構成:粕川哲男
FW:ノヴァコヴィッチ(2012-2013/38試合/17得点)
FW:ズラタン(2012-2014/71試合/17得点)
MF:石原直樹(2009-2011/90試合/20得点)
MF:橋本早十(2004-2013/107試合/5得点)
MF:家長昭博(2014-2016/92試合/28得点)
MF:小林大悟(2006-2008/90試合/14得点)
DF:村上和弘(2010-2013/86試合/4得点)
DF:レアンドロ(2007-2008/58試合/3得点)
DF:冨田大介(2004-2009/190試合/10得点)
DF:波戸康広(2006-2009/123試合/0得点)
GK:江角浩司(2006-2014/117試合/0得点)
監督:樋口靖洋(2008)
※カッコ内はJリーグ参入後の所属年/大宮でのJリーグ戦出場試合数/得点数
一緒にプレーしてやりやすいと感じたDFや、対峙してうまいと思ったFWはいますが、ベストイレブンを考えるのは初めてですね。正直、選び切れていません(笑)。
大宮アルディージャには選手として9年間在籍させてもらって、試合に出たり、長くベンチにいたりという日々がありました。そんな過去の記憶を引っ張り出しながら決めさせていただければと思います。だけど、本当にいろいろな選手がいて、僕自身は周りの選手たちに助けられたことの方が多かったし、学ばせてもらってばかりだったので、僕なんかでいいんでしょうか。
システムも悩みますね。リードしているときとかボールを握りたいときは、ギャップを作るという狙いもあって、アンカーを置いた4-1-4-1を選択することもありましたが、やっぱり、4-4-2でいきますか。しっかりとした3ラインのブロックで、まずは良い守備からというのが大宮のスタイルでもありますからね。
2トップの1人はノヴァコヴィッチですね。ブンデスリーガやスロベニア代表でも結果を残しているストライカーで、高さもあるしスピードもある。フィニッシュの精度が高く、シュートコースを予測しているGKの重心を確認して、ニアサイドにもファーサイドにも蹴り分けられるうまさがありました。
もう1人はズラタンかな。ラファエルやデニス・マルケスも素晴らしいFWでしたが、J1リーグ21戦負けなしのときの2人のコンビネーションはすごかった。僕はベンチから見ていることが多かったですが、対戦相手は嫌だろうなと思っていました。
ボランチは小林大悟とアキ(家長昭博)ですかね。中盤にも良い選手がたくさんいたと思いますが、この2人のうまさは飛び抜けていました。どちらも前目の選手で、守備的なところは何とも言いにくいですけど、面白そうじゃないですか。2人とも感覚、ボールの扱い方、視野、テクニック、判断力が素晴らしく、本当に頼りになる存在でした。
大悟は僕と同じタイミング、2006年に大宮に加入したのですが、彼はその年に日本代表にも選ばれましたよね。練習中も「なんだコイツは!」と思うくらいのうまさがあり、FKを決めたり、いろいろなパスを供給したり。プライベートでも仲良くしていて優しい性格も分かっていたので、そのあたりもプレーに表われている感じがしました。
アキとは最後の1年(2014年)だけでしたが、一緒にプレーしてみて、対戦相手として見ていた以上の衝撃を受けました。クレバーさ、卓越した技術、視野、体の強さ――。サイズはそこまでなくても体幹が強く、コンタクトで負けない。彼がしっかりとボールを収めてくれるので、その間に全体を押し上げられる。紅白戦で戦いながら、味方にいると頼れるけど、相手にいると本当にやっかいだと思うことが多々ありました。
サイドハーフは、左が橋本早十。ゲーム中は寡黙というか独特の間合いがあって、クールに飄々とプレーしていました。彼自身、中村俊輔選手の影響が大きいようで、左足から繰り出す質の高いセットプレーなど似た雰囲気を感じる選手でした。今はアカデミーで一緒に仕事をする機会が多いですが、現役時代と変わらない真面目さで、自分と向き合いつつ目の前の仕事に取り組んでいる印象です。
右は……石原直樹選手でどうでしょう。トップで使いたいところはありますが、中盤に置いても戦えると思います。左の橋本からのクロスにファーサイドから飛び込んで来て、あの滞空時間が長く、打点の高いヘディングでゴールを奪うイメージですね。スピードがあって、競り合いに強く、守備でも頑張れる選手です。
最終ラインの4人、センターバックの右はトミさん(冨田大介)、左はレアンドロかな。(片岡)洋介とか菊地(光将)とも長くプレーしたので難しいですね。決めきれません。どのシーズンをベースに考えるかで違いが出るのですが、僕自身は2008シーズン前後が一番チームに貢献できていたと思っているので、レアンドロでいきますか。
左から小林大、冨田、レアンドロ、森田浩史、デニス・マルケス、小林慶行
レアンドロは、2007シーズンの活躍が印象に残っています。第24節・浦和レッズ戦。森田(浩史)さんの決勝点をアシストしたドリブルでの攻め上がり! そして第33節・FC東京戦では試合終了間際に自陣中央からオーバーラップして、自らの足で決勝ゴールをたたき出しました。センターバックなのに得点に絡めるのは大きな魅力ですよね。
トミさんは僕の意見を聞いてくれるし、言ってもくれる心強い存在でした。チーム全体のことが見えていて、気づいて、コミュニケーションを取って、統率してくれる。一緒にプレーしていて本当にやりやすい選手で、GKの僕が安心させなきゃいけないのに、逆にトミさんから安心感をもらっているようなところがありました。
両サイドバックは、まずは波戸(康広)さんですね。試合に臨むメンタルが素晴らしく、必ずハードワークしてくれる職人といったイメージです。プロフェッショナルのお手本というか、教科書のような選手じゃないでしょうか。日本代表の経験があり、ハイレベルな選手たちと戦って学んだことを、いろいろ教えてくださいました。試合中、波戸さんから「しっかりしろ!」と叱咤されて、ハッと目が覚めるようなこともありましたね。
逆サイドは、村上、村上……、「ショージ」と呼んでいたので……、和弘ですね(笑)。サッカーIQが高く、後ろからチーム全体を見渡して、今どうすべきなのか指示できる選手でした。ムードメイカーの役割も担っていて、残留争いをする重苦しい雰囲気の中、声を出してチームをまとめて、みんなを引っ張ってくれていました。
GKですか? そこは考えていませんでした。僕自身、大宮ではいろいろな経験をさせてもらいました。2シーズン試合に出られない難しい時期もありましたが、そのときもゼロのまま終わることはなく、必ず一歩目が来ると信じていました。そのとき何を示せるか、常にそこを考えて練習していました。
GKというのは、そもそもポジションが1つしかありません。チーム内には常に競争があり、必ずサブの選手がいます。サブのGKが、サブとして何ができるか。ファーストで試合に出ていた北野(貴之)に対してのサポートもそうですが、常にチームに与えられる影響を考えていました。
もちろん、悔しい気持ちはありました。そういう感情がなかったら、プロとは呼べないような気もします。けれども、悔しさを押し殺してやらなきゃいけなかった。
今アカデミーのコーチという立場になって、そのあたりも意識して指導しています。常日頃、どのような姿勢で練習に取り組むべきなのか。突発的なことも想定外であってはいけません。常にピッチに入る準備をしておく。外側から見ているのではなく、しっかりゲームに入って戦っていられるか。自分が試合に出たらもっとこうする、こうできるってイメージを常に持っておく。そうした部分もGKに求められる能力だと思います。
ということで、すみません。自分を選んでもいいんですか?
最後、監督は2008シーズンにチームを率いた樋口(靖洋)さんにします。グアムでのキャンプからアラさん(荒谷弘樹)とポジションを争っていた中で、僕をファーストに選んでくれました。大宮で初めて開幕戦のピッチに立てた喜びもあったので、そういった個人的な部分も大きいと思います。
あのシーズンはアグレッシブにボールを握るという理想を掲げてスタートしましたが、勝点が取れない難しい状況になったことで原点に返りました。樋口さんは「3ラインでブロックを敷いた堅守速攻のスタイルの方がいいんじゃないか」という選手側の意見を聞き入れてくれて、柔軟に対応してくれました。樋口さんのそんな人柄が好きでしたし、監督のためにも結果を出すという思いが強かった。残留できたことですし、もう1年なり2年なり樋口さんと一緒にサッカーしたかったという思いもあります。
江角浩司(えずみ こうじ)
1978年生まれ、島根県出身。大阪体育大学、大分トリニータを経て2006年に加入。以後、9年間にわたってプレーした。第2GKとしての時期は長かったが、プロ意識の高さからチームメートの信頼が厚かった。現在はアカデミーでU15/U12GKコーチを務める。