6月25日(木)発売の大宮アルディージャマガジン『VAMOS』最新号には、高木琢也監督のインタビューが掲載されます。ここでは、その内容を“ちょい出し”しながら、インタビュアーを務めた戸塚啓さんのJリーグ再開に向けたコラムをお届けします。
文=戸塚 啓 写真=髙須 力
誰も経験したことのない戦いへ、チームは一丸となっている。
全体練習の再開は6月4日で、明治安田生命J2リーグの再開は同27日だ。準備期間は3週間強である。冬のプレシーズンには6週間ほどを要するのが一般的なので、かなり急ピッチで仕上げていかなければならない。
しかも、再開後は過密日程が予想される。高木琢也監督は「そうやって考えてると……」と切り出す。
「連戦に向けた準備というのは、6月4日から27日の再開へ向けた期間しかできないわけです。シーズンインしたら、試合とコンディションの維持、回復を繰り返していく。戦術的なトレーニングは、なかなかできません。ですから、今のうちにしっかりと戦術理解を深めて、戦う準備をしておかないといけないですね」再開後は新たな大会方式で行われる。J2からJ1への昇格は上位2チームの自動昇格となり、J1参入プレーオフは開催されなくなった。J3への降格もなくなっている。また、選手交代枠は3名から5名へ拡大される。
J1参入プレーオフがなくなったことで、昇格争いはこれまでよりもシビアになる。J3降格を恐れる必要がなくなったために、順位が下位のチームの戦い方が変わってくるかもしれない。上位チームを相手にしても、意欲的に立ち向かってくることも考えられる。
交代人数の拡大は、試合の行方にはっきりとした影響を及ぼすだろう。前半と後半でガラリと戦い方を変えるチームが、出てくるかもしれない。試合中のシステム変更も、選手交代をきっかけに活発になりそうだ。J2には前節とまるで違う戦いをするチーム、事前のスカウティングが当てはまらないチームが存在するが、今シーズンは不確定要素が増していくかもしれない。
高木監督も「いろいろと変わるところはあるでしょう」と想定する。「いつものシーズン以上に監督の力量が問われるのでは?」との質問には笑顔を浮かべ、落ち着いた表情で語るのだ。
「リーグ戦がこれだけ長い間中断して、梅雨の時期の6月末に再開されるのは、誰にも経験したことのないことです。こういうときはこうした方がいいというのは、まったく分かりません。それならば、成功するか失敗するかはともかく、いろいろなアイデアを出し合ってやってみようと。私自身も新しいやり方でチームを組み立てていかなければならなくなったので、そういう現実をネガティブにとらえるのではなく、コーチ陣とも話しながらアイデアを出し合っていく方がいいのかなと思っています」
感染拡大の予防と安全確保の観点から、トレーニングは非公開で進められている。全体練習初日にオンラインで取材に応じた高木監督は、選手たちのコンディションが良かったことを明かした。この時点では別メニューの選手もいたが、「数日のうちに戻れる」との見通しも示していた。
「J1昇格という目標に変わりはない」と、高木監督は言葉に力を込める。誰も経験したことのない未知なる戦いへ、アルディージャは覚悟と決意を持って飛び込んでいく。
戸塚 啓(とつか けい)
1991年から1998年までサッカー専門誌の編集部に所属し、同年途中よりフリーライターとして活動。2002年から大宮アルディージャのオフィシャルライターを務める。取材規制のあった2011年の北朝鮮戦などを除き、1990年4月から日本代表の国際Aマッチの取材を続けている。