【ライターコラム「春夏秋橙」】真の育成型クラブへ。新体制で目指す「次の10年」

ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。アカデミーの定点観測を続けている土地記者が、今季から新体制となったアカデミーの取り組みについて取材しました。


【ライターコラム「春夏秋橙」】土地 将靖
真の育成型クラブへ。新体制で目指す「次の10年」

2022年は、大宮アルディージャのアカデミーにとって間違いなく大きな節目となるであろう。長く大宮の育成に携わり、組織の成長に貢献した中村順氏が、2021シーズンいっぱいをもってクラブを離れた。今年、佐藤勝彦アカデミーダイレクター(以下AD)と金川幸司ヘッドオブコーチング(以下HOC)による新体制で、次のステップへの再スタートを切った。

クラブはあらためて育成型クラブへの転換を掲げたが、その現状について佐藤ADは、「彼ら(アカデミー出身選手)が活躍してないわけではないが、育成型を目指すのであればもっと活躍してほしい。日本代表についても、育成年代であれだけ代表に入っているので、A代表選手も輩出していかないと…」と現状を語り、「指導の内容の割合も変えていかなくてはいけない」と方針を打ち出しつつある。

その一つが、個の向上。

「グループではできるけど、一人で打開する能力は少し足りない。守備でも切り替えの速さやインテンシティの向上が必要。そういうところはもう少し、育成年代から求めていくのが必要だと思っています。トレーニングでも、人と人との対峙が増えたなかで、自分で打開する、自分で解決していくという場面を増やしてほしいと要求しています」(佐藤AD)

また、仕組みとしては飛び級を積極的に取り入れる。U18の選手がトップチームの練習に、U15の選手がU18の練習や練習試合に参加する。上のレベルを体感することで選手は大きな刺激を受け、成長につながっていく。そうした頻度はこれまでに比べ格段に上がった。

「去年とは比べ物にならないぐらい選手の行き来ができています。U18や提携している東洋大学からトップにトレーニングに行ったり、U15からU18に行ったり。カテゴリー間の壁を取り払って、クラブ全体で選手を育てるというところにフォーカスしています。その選手の行き来を、より流動的にスムーズにしていくのが次の課題です」(金川HOC)

選手のピックアップについても、裾野は広がっている。もともと、小学生年代では大宮U12とは別に、さいたま市北部地区(旧大宮市、与野市、岩槻市)からセレクトされる「さいたまシティノースFC(SCN)」を組織していたが、より連携を強化させ、公式戦以外ではU12チームと一体化させて大会に参加するなど、新しい試みを始めようとしている。中学生年代を対象とした提携先のFC深谷も含め、地盤は固まりつつある。今季、高円宮杯プレミアリーグで活躍している高橋輝や磯﨑麻玖はSCN出身、石渡巧真はFC深谷出身だ。こうした各クラブが連係を密にすることで、アカデミー直系だけではなく全県レベルでの選手育成が可能になってくる。

これらの様々な施策で、冒頭に挙げた次のステップを目指す。もちろんこうした手法は、一朝一夕で結果が出るものではない。微調整したり軌道修正したり、場合によっては中断したりしながらもやり続けていくことで、やっと見えてくるものがある。

「今後クリアしていく課題は明確。次の10年は、アカデミーにとって求められるところだと思っています」(金川HOC)

真の育成型クラブへ。新たな体制でクラブは歩みを進めていく。

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