【ライターコラム「春夏秋橙」】大宮アカデミーに多様性をもたらす“さいたまシティノースFC”の存在

ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回は、アカデミーの定点観測を続けている土地記者が、さいたまシティノースFC(SCN)の取り組みについてレポートしてくれました。


【ライターコラム「春夏秋橙」】土地 将靖
大宮アカデミーに多様性をもたらす“さいたまシティノースFC”の存在

9月17日(土)から19日(月祝)まで新潟で行なわれた第24回国際ユースサッカーin新潟に出場するU-17日本代表に、大宮アルディージャU18から市原吏音と種田陽が選ばれた。1学年下で以前からU-16日本代表で活動している磯﨑麻玖を含め、3年後のFIFA U-20ワールドカップ、そして2028年ロサンゼルスオリンピックを目指す年代として、さらなる成長を求められる。

3年生の高橋輝も、8月に行なわれたSBSカップ国際ユースサッカーで自身初めてのU-18日本代表入りを果たし、全3試合に出場した。今年は高円宮杯U-18プレミアリーグでも得点を量産しており、納得の代表入り。今後の飛躍を期待したい。

市原、種田は大宮ジュニア(U12)からのいわば純粋培養の選手だが、一方の磯﨑や高橋は、小学生年代をさいたまシティノースFC(SCN)で過ごし、そこから大宮U15へ移り、現在へと至っている。昨年まで大宮U18で主力として活躍していた相澤亮太(東洋大)や大井勇人(順天堂大)も輩出したSCNとはどんなチームなのか。

大宮ジュニアは2008年、さいたま市北部の31少年団が所属する、さいたま市北部少年サッカー指導者協議会の尽力で、さいたま市北部選抜的なチームとして発足。その後、大宮ジュニアの選手セレクション対象エリアが拡大したため、当初の想いを残す形で2015年に誕生したのがSCNだ。

大宮の育成組織ではなく、東洋大学やFC深谷と同様、提携チームとなる。もちろんエンブレムやユニフォームも異なる。原則として、さいたま市北部の少年団から選手を集め、チームを作り活動している。

一番の違いは、「大宮で育つ選手とは異なるタイプ、異なる特長を持つタイプの選手を育成したい」(西村陽毅SCN監督)というところだろう。大宮U12に比べれば、どうしてもアルディージャというブランド力は薄れる。そのなかで、「大宮から外れ過ぎないようなメソッドを取り入れつつ、特長を生かし、個性を伸ばすことを心がけている」(西村監督)。目的は大宮U12U15へ選手を供給することとして、実際にチーム発足以降、毎年大宮U15へ選手を送り出している。

これまでも選手単独での大宮U12への練習参加は何度かあったが、今後は大宮U12との混成チームでの大会参加や試合を積極的にやっていくことをクラブとしても視野に入れている。「もっと大宮と身近になって、選手の行き来が流動的になるような、セカンドチーム的な役割」(西村監督)が短期的な目標と言っていいだろう。

2018年には埼玉県4種リーグ選手権大会で優勝もしており、もちろんSCNとしての全国大会出場やそこでの結果も大きな目標ではある。だが、そこよりも先には、「さいたま市北部を代表して、次のカテゴリーや将来活躍する選手を育成、発掘していきたい。地元の選手、大宮が好きな選手が入りたくなるようなチームにしていきたい」と西村監督は将来を見る。前出の磯﨑だけでなく、同じ1年生で、JFAアカデミー福島U-18戦で高円宮杯プレミアリーグ初出場を果たした山中大智もSCN出身。彼らの出身母体を見ながら、プレースタイルの違いを見ていくのも、また違った楽しみになるかもしれない。

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