選手やスタッフにピッチ内外にかかわらず様々な質問をしていく本コーナー。今回は、ボランチのスペシャリスト・小島幹敏 選手と、今夏7年ぶりに復帰しボランチでコンビを組んだ和田拓也 選手が登場!2015年、2016年にもチームメートとしてプレーしていて、ひさしぶりの共闘となる二人に、当時の話やボランチのプレーについて聞きました。
聞き手=粕川 哲男
9年前の互いの印象
──お二人に来ていただいた理由の一つが、2015年のJ2優勝を知る数少ないメンバー(富山貴光、泉澤仁の4人のみ)というところです。
小島「(エル・ゴラッソのJ2優勝記念号をめくりながら)懐かしい!」
和田「9年前? 懐かしいねぇ」
小島「えっ!?ここに写ってるの(磯﨑)麻玖じゃない。違うか?」
和田「いや、あり得るよ。麻玖呼ぼうよ」
小島「ちょうど小学生のころじゃない?」
和田「麻~玖~!(隣の食堂に呼びかける)」
小島「この写真、最終節の大分戦でしょ」
和田「いや、一個前でしょ」
小島「そっか。最後はアウェイの金沢戦か」
和田「これはホーム最終戦だね。あのとき福岡がえぐい連勝しててね、ドキドキしてた」
小島「そうだった。猛追してた」
和田「(当時はプロ)1年目?」
小島「(静かに頷く)」
プロ1年目はJ22選抜でJ3リーグ戦に1試合出場
──あの当時、お二人が絡む機会はあったんですか?
和田「別に……いればしゃべるけど、くらい」
小島「1年目だから、そんなにッスよ」
和田「(高山)和真のほうが、グイグイ系だよね」
小島「アイツはそう」
和田「幹敏は、静かなヤツってイメージがあったな」
小島「でも、タクとはけっこうしゃべるよね」
和田「ゲームになればしゃべるね」
小島「普段は、あんまりしゃべらなそうって思われてるのかな?」
和田「別にしゃべるの嫌いじゃないけどね」
小島「俺も」
和田「考えなしにベラベラってタイプじゃないよね。あと、盛り上がったりしない(笑)。このトーンでずっとしゃべってるのが好き。抑揚がないから、何考えてんのかわからないとか言われる」
小島「俺も」
和田「『感情はあるの?』みたいに。でも、こっちからしたら言葉選びとかそういうので会話したいって感じ。ノリとテンションじゃなくてね」
小島「わかる。でも、俺もテンション上がるときは上がりますけどね(ニヤリ)」
ボランチとして同じ感覚を持つ二人
──これまで対談されたことは?
和田「ないッスね。そもそも同じポジションになってないもんね」
小島「うん」
和田「当時、俺はサイドだったからね。だからこの前(第24節の)金沢戦で組んだのが公式戦初じゃない」
小島「やりやすかった。タクがどういう感じか知ってますからね」
和田「それはある。お互い、たぶん自分が自分がってタイプじゃないし、自分一人で試合を変えられるタイプでもないから」
小島「そうそう」
和田「二人とも、味方のことを見て、隣の人を見てやろうかなってタイプだから、まぁ、言わなくてもわかるし。だいたいこのあたりにいるんだろうっていう、そのへんの感覚は近いなとは思いますね」
小島「うん」
和田「どうせサポートにいるんだろうなって顔を上げたらいるみたいな。ボランチとして持ってる『普通ここだよね』って感覚を、共有できている感じはありますね」
──2015年当時は小島選手がルーキーイヤーで、和田選手は大宮加入3年目でした。
小島「タク、いくつくらい?」
和田「俺ね、25歳」
小島「おぉ~若いね」
和田「歳が近かったのは誰だ? (泉澤)仁が24歳で、大ちゃん(渡部大輔)が26歳か。シゲちゃん(横谷繁)が28歳、アキくんが29歳だね。みんな20代かぁ……」
左からカルリーニョス、ムルジャ、和田、泉澤、家長、横谷、片岡
小島「そうだね」
和田「あのときの(今の自分の歳と同じ)34歳いるかな。バンさん(播戸竜二・実際は36歳)とか?」
小島「え~~!!」
和田「違うか。バンさんより少し下だから、シオさん(塩田仁史)だ!」
小島「えっ、いまシオさんなんだ。若手からしたら、だいぶ上に感じるね」
和田「そうだよね」
小島「俺は1年目だったから、上の人は相当お兄さんとか、オジサンに見えたからね」
和田「俺もそう思ってた」
2015年と2024年の共通点
──和田選手からは何度か、「今シーズンのチームの雰囲気は2015年に似ている」という話を聞きました。
和田「チームの雰囲気って面白くて、そもそもは、いる人間の人間性なんですよ。でも、いい人がいるからチームがうまい方向に転がるかって言うと難しくて……。でもやっぱり、あれかな。引っ張っていける人の存在かな」
小島「うんうん」
和田「当時だったらアキくんがいた。引っ張っていく人がいて、周りがそれに乗っかって結果が出るっていうサイクル。今年は、それが(長澤)徹さんなのかなって」
小島「なるほど」
和田「リーダーがいて、いい選手がそろったら結果が出る」
(ここで居残り練習を終えた磯﨑麻玖が登場!)
小島「おっ、来た来た」
和田「これちょっと見て」
小島「これ麻玖?(右から4人目)」
磯﨑「……あっ、これ、兄です!」
二人「アニ~~!!」
和田「そういうことか」
小島「お兄ちゃん何個上?」
磯﨑「3個上です」
和田「麻玖このときいくつ?2015年って」
磯﨑「2006年生まれなんで、9歳ですね」
和田「……(2006年は)俺、高1だわ」
小島「なんだ、麻玖じゃなくてお兄ちゃんなんだ(笑)」
和田「いや、面白いから麻玖ってことにしておこう」
磯﨑「お兄ちゃんは、勇玖(アイザック)っていいます」
和田「同じチームにいたの?」
磯﨑「そうですね。少年団は同じでした」
和田「じゃ、こういうエスコートキッズもやったことあるの?」
磯﨑「1回やりました」
和田「じゃ、探せばどっかにいるんだ」
磯﨑「あると思います。誰と手をつないだかは覚えてないですけど、自分は当時から身長が高かったから……」
和田「俺か!いや、さっき話してたのよ。エスコートキッズが俺より背が高かったことがあるって」
磯﨑「……ちょっと覚えてないですね」
小島「でも、あり得るよね」
和田「なんだ、麻玖じゃなかったか。ありがとう」
小島「ありがとう」
磯﨑「はい」
──何の話してましたっけ?
和田「2015年と今年で似たところがあるって」
小島「雰囲気とか。ただ俺は、なんもしてないッスからね。試合にも絡んでないし。ただただ、『強ぇー』って思って見てただけだから。でも、やっぱり雰囲気は良かったですよね」
和田「いやホント」
小島「うん。でも今年は、練習の空気感みたいなのは違うかも」
和田「あぁ~、それは違うね!」
小島「今のほうが、やってやろう感がすごいですよね?」
和田「うん。そこはもう、徹さんの力」
小島「ぬるくならないような雰囲気作り」
和田「あとは、単純な強度の問題?」
小島「手を抜かせない雰囲気はありますね」
優勝するために必要なこと
──あの優勝から9年が経って、初めて公式戦で並んでプレーしたわけですが、お互いのプレーについて感じたことは?
小島「俺はだって、1年目から見てるから。知ってるんですよ。当時はサイドバックで、うまくて相手を外せて、対人も強い。その感じを知ってたから、組んだときも、やっぱりそうだったなって」
和田「考えてか感覚か微妙なんですけど、自分の頭で理解しないと動けないタイプなんで。そこにいればいいと思ったら行く感じ。マリノスでやってた偽サイドバックも、以前からやってたんですよ。あそこにいたらフリーになるって昔から思ってたし。それを肯定してもらえたのがマリノスだったってだけで」
──当然、目指しているところは一つだと思いますが、優勝してJ2昇格を果たすためには、この先どのあたりが大事になると思いますか?
和田「結果に関してはわからないですけど、内容に関して、この先ずっとうまくいくってことは絶対にないですよ。そんなにスムーズにはいかない」
小島「そうですよね」
和田「今後ますます追われる立場になる。ただ、そこで勝点を拾うかどうかは別の話で、内容が悪くても勝点3を取ればいい。そこをうまいこと拾っていければいい。2015年はアキくんって大きな存在がいて、今年はそれが徹さんだと思うので、こっちは乗っかっていくだけかなって」
小島「絶対に苦しい試合はあると思いますけど、そこをチーム全体で気を緩めずに戦えば。シュートブロックとか、球際とか。そこはみんな言うと思いますけど、そこをサボらず、しっかりみんなで意識してやっていければ、勝点を拾えるんじゃないかなって。このままいけるだろうって感覚を持たずに引き締め合っていけば、いけると思います」
──あのシュートブロックは本当にすごいですね。
和田「そうなんですよ。あれはもう、練習の成果なんでしょうけど……」
小島「だいたい当たるからね」
和田「あれはすごい。本当に当たる!」
小島「ああいうところを、残りの試合でもサボらずに」
和田「だから、あんまりないんですよね。こうしなきゃいけない、ああしなきゃいけないっていうことが。別にいつもどおりやって、たぶんうまくいかないこともいくらでも起きて、それでもやり続けましょうねって感じでここまで来てるので、そこがブレない限り……」
小島「これまでどおりやっていけば大丈夫だと思う」
和田「そう思うし、それでダメならそこまでって感じなんですよ。それぐらいやってる」
小島「そうだね」
──そんな状況の中、第26節のY.S.C.C.横浜戦は残り20分を切って一気に選手を代えて、最終的に3点差をつけるという展開でした。
和田「あそこでの4枚代え……反則だよね(笑)」
小島「それはある(笑)」
和田「ラッソ(ファビアン ゴンザレス)、(藤井)一志、(大澤)朋也、(茂木)力也か」
小島「ふふふ……」
和田「インパクト強いよね」
小島「だいぶね」
和田「あそこまでの戦力を持ったクラブが他にあるかって言ったらないから、そこで勝負あったなって。たぶん、あの4人がスタメンで出ても同じようなゲームができると思うし。そこはまぁ戦力的な充実度もあるけど、高いレベルで競争できてることが大きい」
首を振らなくてもわかる感覚
──最後に、お互いに聞いてみたいことはありますか?
小島「……俺が唯一聞きたいのは、横浜FCのときのオウンゴールかな(※2023年J1第2節・湘南戦)」
和田「あぁ~」
小島「あのワダタクが、あんなことするんだって衝撃だった」
和田「まぁ理由はあるんだけど、結局単なるキックミスなの。ただ、あれは映像的にインパクトが強いけど、誰も気づかないけど完全に自分のせいって失点もあるわけじゃん。だから割と冷静で、あまり気にしてなかった。もちろん、味方に申し訳ないって気持ちはあったよ。みんなが、すごい優しいから」
小島「逆にね」
和田「だから、俺はいいチームにいるわと思って、泣きそうになった」
小島「そうだったんだね」
和田「幹敏に聞きたいことあるかな……」
小島「あります?」
和田「俺と幹敏の違いは……幹敏は、生粋の真ん中でボールを扱ってきた人なのよ。俺はタッチラインを背にしてきたほうが長いから」
小島「そうなんだ」
和田「初めてボランチやったのプロ3年目とかだから」
小島「知らなかった」
和田「だから、どちらかと言うと俺は、感覚的に真ん中でボールを受けられないタイプ。気を抜くと背中を忘れるタイプ」
小島「(真ん中の選手は)首振るのが習慣化してるからね」
和田「そういう人は、首を振らなくても見えてるんですよ。その感覚ってどういう感じか、ずっと知りたいと思ってるんだけど、聞く相手が幹敏かどうかはわからない(笑)」
小島「答えづらいな。もう本当に染みついたものだから。ずっとやってると、なんとなく360度がわかるようになってくるんですよ」
和田「俺は、首を振り忘れたときに背中の感覚がない」
小島「……経験かな」
──納得のいく答えは得られましたか?
和田「いや(笑)。感覚なんだろうなと思っていたので、思ったとおりの答えでした」
小島「感覚なんですよ、結局(笑)」
和田「うん。答えが見つかるとも思ってなかった(笑)」
粕川哲男(かすかわ てつお)
1995年に週刊サッカーダイジェスト編集部でアルバイトを始め、2002年まで日本代表などを担当。2002年秋にフリーランスとなり、スポーツ中心のライター兼エディターをしつつ書籍の構成なども務める。2005年から大宮アルディージャのオフィシャルライター。