【聞きたい放題】南雄太引退試合開催記念 第2回 横浜FC・大宮編

選手やスタッフにピッチ内外に関わらず様々な質問をしていく本コーナー。今回は12月21日(土)に行われる「南雄太引退試合」の開催を記念した「特別編」(計4回)として、出場が決まっているメンバーとの思い出やウラ話を、南氏本人に語り尽くしてもらいました。第2回は「横浜FC、大宮アルディージャ編」です。

聞き手=戸塚 啓


※選手名のあとの()内はともにプレーした期間(引退試合の出場メンバーのみ)


横浜FCのGKチームが若くて…

――引退試合の出場選手とのエピソードを語っていただく第2回は、横浜FCと大宮アルディージャでともにプレーした選手たちです。
「横浜FCの藤井悠太(2016~2019年)、野村直輝(2014~2018年)、大﨑玲央(2016年)は友だち枠です(笑)。彼ら3人は同い年で、僕と干支が同じ。つまり12歳違い。だからではないですけれど、めちゃくちゃ仲良くしていた選手たちで、ぜひ出場してほしかったんです」

――横浜FCでプレーした選手では、GKの渋谷飛翔選手(2014~2016年)、高丘陽平選手(2014~2018年途中)も出場します。
「僕は35歳のタイミングで熊本から横浜FCへ移籍したのですが、陽平がプロ1年目、飛翔がプロ2年目でした。GKは3人体制で、GKコーチの田北雄気さんの練習メニューは彼らに合わせたものだったと思います。35歳の僕からすると……」

――それはキツいですね(苦笑)。
「キツくないはずがありません(苦笑)。この年齢でこんなに練習するのかと思いましたけど(苦笑)、結果的に長く続けられる一因になったのだろうな、と。彼らとは一緒にご飯へ行ったりもして、個人的にすごく思い入れのある選手です。陽平は横浜FMでJ1優勝を経験して、いまやMLS(アメリカ)の選手ですからね。飛翔も甲府で頑張っているし」


横浜FCでチームメートだった渋谷(左)と高丘

――GKは一つのポジションを争うので、ライバル心から関係がギクシャクすることもある、と聞きます。
「僕自身はそういうことはなくて。同じポジションを争っているからこそ、試合に出る大変さとか辛さが理解できました。30歳を過ぎたあたりからは、お互いを思いやりながらやっていましたよ」

――南さんはレギュラーもサブも経験している。どちらの立場も分かるから、誰にでもフラットに接することができたのでしょうね。
「試合に出る選手も、出られない選手も、それぞれに大変さや辛さがある。そこは十二分に分かっているつもりなので、GK同士にはまたちょっと違う絆があります。だからこそ、ほかのチームへ行って活躍してくれるとうれしいですし」

ヨンハさんには「衝撃を受けた」

――横浜FCと大宮に在籍した選手では、さきほどお名前の出た藤井選手に加えて、安英学(アン・ヨンハ)さん(2014~2016年)、内田智也さん(2014~2016年)、田代真一さん(2018年途中~2021年途中、2022年)らがいます。
「ヨンハさんには衝撃を受けました。サッカー選手とかは関係なく、こんなに人間としてできている人が世の中にいるのか、と感じるぐらいの方でした」

――人間的に「いい人」でしたね。
「いやあ、僕からすると『いい人』という言葉では収まらないぐらいに人間ができているというか。年齢的には一つ上なんですが、本当に心からリスペクトしているので、どうしても出てほしかったんです」

――大宮のファン・サポーターにもうれしい人選です。
「(藤本)主税さんとヨンハさんは、どうしても出てもらいたいと思っていたので、僕もすごくうれしいです」

――今シーズン限りで現役引退を発表した、武田英二郎さん(2018~2021年途中)も出場します。
「彼と話をしたら、『雄太さんの引退試合がホントに最後の試合になります』とのことでした。いいコンディションで来てくれるんじゃないかな、と思います」

カズさんはいまもシュートがうまい

――三浦知良選手の出場も発表されました。横浜FCのチームメートですが、BLUE LEGENDSでプレーします。
「いやあ、もう、ありがたいです。それしかないです。カズさん、この時期は大阪で自主トレをしているんですけど、1日早く切り上げて、わざわざ出てくれることになりまして」

――カズさんとは2014年から2021年の途中まで、チームメートとしてプレーしました。
「1日24時間、すべてをサッカーに費やしている印象です。ここまでできる人はなかなかいないだろうな、ここまでできるからこれだけ長く続けられるんだろうな、と。横浜FCでは中村俊輔くんも一緒でしたけど、こういうレベルの人たちはまたちょっと違う。サッカーにこれだけの情熱を注げるのはすごいな、と思わせてくれる存在でした。自分はまだまだ甘いな、と感じていましたし。そもそも自分より年齢が上の選手がいる、ということがすごくありがたくて」

――ストライカーとしてのカズさんを語ると?
「僕が語るのはおこがましいですが……(自分が)柏でプレーした2006年、カズさんは横浜FCで、点を取られているんです」

――調べますね……4月に三ツ沢で行なわれた試合(J2第8節)で、カズさんが先制点を決めています。試合も2-0で横浜FCが勝利しました。
「そうですよね。横浜FCで一緒に練習をするようになって、やっぱりシュートがうまいと感じました。その印象は、いまも変わりません。ペナルティエリア内のシュートには、ものすごくこだわっていました」


2019年のJ2最終節で13年ぶりにJ1昇格を決めた際の一枚

「吏音を呼びたかった」理由

――カズさんとの関わりをもっとお聞きしたいのですが……大宮の選手の話もお聞きしなければ。
「NACK5スタジアム大宮でやりますからね、できるだけ多く出てもらいたくて」

――どちらかと言えば経験豊富な選手が多い中で、市原吏音選手(2023年)が出場します。
「吏音は呼びたかったんです。日本代表として活躍した選手たちと同じピッチに立つことが、彼の今後にプラスになるんじゃないかなと思ったんです。こういう引退試合の雰囲気って、なかなか味わえるものじゃないので。遅かれ早かれ海外へ移籍するに違いない選手ですから、日本にいるうちにこういう経験をしてもらうのもいいかな、と」

南の現役ラストマッチとなった2023年のJ2最終節に市原もフル出場した

――大宮からJ1のC大阪へ移籍した柴山昌也選手(2021年途中~2023年途中)も。
「(自分が)大宮へ移籍した初日に、シバは『雄太くん』って呼んできたんです。周りが凍りついてました(笑)。それはともかく、個人的に期待していた選手だし、遠からずステップアップするだろうなと思って見ていたら、去年の途中でセレッソへ行きましたしね。これからの彼にも、期待しています。それから、コウモ(河本裕之/2021年7月~12月)が出てくれるのはうれしいですね」

――大宮のファン・サポーターも待っていたと思います。
「僕は2021年の夏に大宮へ移籍してきて、コウモはそのシーズン限りで現役を引退したので、半年しか一緒にできなかった。その期間でも、ファン・サポーターのみなさんから愛されているな、このクラブにとってものすごく大きな存在だな、と感じました。一緒にプレーできて良かったな、と思う選手の一人です」

――河本さんと菊地光将さんのCBコンビは、クラブの歴史に刻まれています。
「そうなんでしょうね。僕は外から見ていましたけれど、J1で戦う大宮を支えていた二人だと思います」

――三門雄大選手(2021年途中~2022年途中)も、ファン・サポーターに愛された選手です。
「コウモと同じようにミカも、このクラブの象徴的な存在だな、と感じました。彼らが出てくれるのは、すごくうれしいですね」


大宮サポーターに愛された河本(左)と三門

カワはゴールを取ることに特化した選手

――河田篤秀選手(2021年途中~2023年途中)は、南さんと同じ2021年夏に大宮へ加入しています。
「カワは友だち枠です。大宮では一番仲良くしていたかなあ。自宅が近かったので、ウチにご飯を食べにきたり、一緒に食事に行ったりしていました。いまでも連絡を取り合っています」

――あの2021年シーズンは、南さんと河田さんの加入が、J2残留の後押しとなりました。
「FWとして好きな選手ですね。ゴールを取ることに特化して、そこからの逆算で考えている。シュートもすごくうまいですよ」

――2024シーズンのチームを引っ張った、石川俊輝キャプテン(2021年7月~12月、2023年)も出場します。
「今シーズンはシャドーで起用されたりもして、個人的にはちょっと意外でしたけれど、ハマっていましたね。相変わらず器用な選手だなあ、と。チームをしっかりと引っ張っていて、頼もしいなあと思いながら見ていました。1年でJ2へ戻さなきゃいけないという気持ちは強かったでしょうし、年齢的も立場的にも自分がやらなきゃいけない、という思いが強かったのでは。J3優勝でのJ2昇格ですから、みんなが頑張ったのは間違いないですけど、個人的にはトシキとマサト(小島幹敏)がチームを支えたんじゃないかな、と思います」

※第3回に続く。


戸塚 啓(とつか けい)
1991年から1998年までサッカー専門誌の編集部に所属し、同年途中よりフリーライターとして活動。2002年から大宮アルディージャのオフィシャルライターを務める。取材規制のあった2011年の北朝鮮戦などを除き、1990年4月から日本代表の国際Aマッチの取材を続けている。

FOLLOW US