ピッチで戦う選手たちの素顔や魅力を伝えたい。これまで書き切れなかった情感を伝えたい。『Vamos』やマッチデープログラムなどの取材から映る景色を、クラブオフィシャルライターの視点で、たまに広報・プロモーション担当の視点で、お届けします。
Vol.016 岩本 勝暁
期待
カウエがアルビレックス新潟へ期限付き移籍することを知ったのは8月16日、アジア大会の取材でインドネシアに出発する2日前のことだった。
彼のプレーを初めて見たときのインパクトが強烈に残っている。NACK5スタジアム大宮で行われたFC東京戦だっただろうか。188cmの長身で鋼のような肉体。それでいて、身のこなしは軽やかで、しなやかにボールを操る。この試合で決めた豪快なボレーシュートは、今も脳裏に刻まれている。
ただ、今シーズンは負傷に苦しみ、出場機会は天皇杯の2試合のみ。AC長野パルセイロ戦にいたっては、アクシデントがあり前半途中でベンチに下がっている。個人的には、彼が加入して約1年、ほとんど話す機会がなかったことが心残りだ。必ず復帰してチームのJ2優勝、J1復帰に貢献してくれると信じていた。
クラブ創立20周年を迎え、会報誌「VAMOS」やマッチデープログラムで昔を振り返る機会が増えた。過去に在籍した外国籍選手についても、インターネットを駆使しながら当時を遡って随分と調べている。
思い出深いのが、初めてJ1昇格を果たしたときに在籍していたトニーニョ 、トゥット、バレーのブラジリアントリオだ。三人三様で、全員がチームの大黒柱として活躍。その素晴らしい人柄から、ピッチ外でも多くのファン・サポーターに愛された。
そのトゥットの前に在籍した、ダニエルというブラジル人選手を覚えているだろうか。とても愛着のある選手だった。2004シーズンの開幕前にインタビューする機会に恵まれた。午後にインタビューとなり、NTT東日本志木総合グラウンドでの午前練習を見に行った。
ファーストタッチを見て驚いた。ボールタッチが柔らかく、まるでボールが足元に吸い付いているようだった。二十歳そこそこだったと思う。いやが応にも期待は膨らんだ。だが、無得点のまま、わずか5試合で大宮を去った。
最強の外国籍選手を一人だけ挙げるとするなら、僕は迷いなくラファエルを選ぶ。得点能力が高く、ダービー男として知られた。浦和レッズ戦に6試合出場して7ゴール。身長190cmは、隣に並ぶと見上げるほど大きかった。ニカッと白い歯を見せる笑顔が今も忘れられない。
インドネシアでは残念ながらDAZNが見られない。激しい打ち合いを見せた第30節のレノファ山口FC戦は、祈るような思いでテキスト速報の文字を追い、ドキドキしながらハイライト映像を見た。果たして、新加入のマケドニア代表MFは、どんな輝きを見せてくれるのだろうか。J2優勝、J1復帰に向けたラストピースとして期待は高まる。
岩本 勝暁 (いわもと かつあき)
2002年にフリーのスポーツライターとなり、サッカー、バレーボール、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ大会から2016年リオ大会まで4大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。2003年から大宮アルディージャのオフィシャルライター。