小野、嶋田、山田。前半3得点も連続失点でドロー
12月に入り、今シーズンも残り5試合と終わりが近付いている。目標だったJ1昇格には届かなかったが、来年につなげるためにも最後まで戦い切らなければならない。
明治安田J2第38節は、愛媛とのホームゲーム。冬のナイトゲームで雨が降り、手がかじかむほどに寒いが、それでも勝利を願うファン・サポーターはこの日もスタジアムに足を運んだ。残り少ないホームゲームで、一つでも多く喜びを分かち合う勝利を挙げたい。
同じ3-4-2-1の布陣を採用する愛媛との試合は、最終ラインの山越が高い位置へ出ていくなど、序盤から積極的に仕掛ける守備が効いた。高い位置に築いた守備網で次々にボールを奪い、速攻を展開した。
前半6分、最終ラインからドリブルで持ち上がる相手を小島が中盤で捕まえ、ショートカウンター。黒川へパスを渡すと、その間に中央から前へ抜け出した小野へとつなぎ、小野がノートラップで合わせた左足のシュートが、ゴール右隅に決まって先制に成功した。
さらに2分後、驚くほど見事なカウンターがさく裂した。GK笠原から近い距離でボールを受けた山越がロングフィードを送ると、前線で菊地が空中で競ったこぼれ球を嶋田がペナルティエリアの少し外から左足のミドルシュートで豪快にたたき込み、追加点を奪った。
その後は少し落ち着いた展開になったが、前半23分には高山の縦パスで左サイドを押し込んだ後、スローインから小野、黒川、小島の連係で相手を翻ろうし、最後は翁長が左から右足でクロス。マークを振り切って前に飛び出した山田が、加入後初得点となるヘディングシュートで3点目を奪った。
後半開始から菊地に代えて富山を投入し、リードを生かして守りながらカウンターを狙った。攻め込んだ後は果敢にプレスをかけて相手陣内でボールを回収。54分、56分と黒川のラストパスでシュートチャンスを作るなど、巧みな試合運びの中で追加点を狙っていった。
しかし、後半開始からの相手のシステム変更と選手交代によって、少しずつ守備が機能しない場面は増えていた。高木監督が「相手が形を変えてきたことはすぐに選手に伝えたが、ボールを取りに行けない時間が続いていた」と危惧していた部分だ。高木監督は給水タイム直後の70分に川田をピッチに送り、このタイミングでも守備に関する指示を送ったがリズムを好転できなかった。
74分、中盤の攻防からショートカウンターを受けると、クロスをワンタッチで合わされて失点。直後の1分後、中盤で斜め後ろにつないだボールを奪われて再びショートカウンターを受け、クロスのこぼれ球を押し込まれて連続失点を喫した。さらに78分、クロスをはね返したボールを縦パスでつながれ、3失点目を喫して同点とされてしまう。
先制点を奪った小野は「相手の交代やシステム変更の影響もあると思いますけど、そんなに崩される場面はなく、失点してから崩れてしまった。キャプテンの三門さんや、いつも鼓舞してくれる畑尾さんがいない中、選手間の伝達をやり切れなかった」と、苦しい時間帯をしのげなかったことを悔しがった。
88分、高木監督は嶋田と投入したばかりの川田を下げ、2種登録の柴山とマクシメンコを投入。マクシメンコが3バックの左に入り、高山を左、翁長を右のアウトサイドに配置した。右シャドーに入った柴山は、いきなり得意のドリブルでカットインを仕掛けてチャンスを作った。
最後は柴山が相手陣内の深い位置で右から中央にパスを入れ、小野がシュートを放ったが枠をとらえずタイムアップ。前半3点リードからのドローは誰にとっても納得しがたい結果だ。素晴らしいゴールを決めた嶋田でさえ「引分けでしたけど、今は負けた気分」と表情を曇らせた。
次戦は、中3日で磐田とのアウェイゲーム。3得点のイメージを残しつつ、守備と意思統一の課題を改善して勝利を目指す。
(総評:平野貴也/写真:早草紀子)
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マッチハイライト映像
高木琢也監督 会見コメント
選手コメント

MF39 嶋田 慎太郎 (#39嶋田)
「前半は良い守備から攻撃につなげることができましたし、チームの狙い通りに点が取れました。後半は相手がシステムを変えてきて、プレッシャーを掛ける部分など、チーム全体としてハマる状況が作れませんでした。ピッチの中の選手同士でもっと話し合うべきでした。ここ2試合の自分のプレーは良くなかったですし、今日がラストチャンスだと思っていました。点が取れてホッとしていますが、それよりも悔しい気持ちが強いです。連戦なのでしっかり切り替えて、モチベーションを下げずにやっていきたいです」

MF41 小野 雅史 (#41小野)
「自分たちで落としてしまった、もったいないゲームでした。短時間での3失点はどこかにスキがあったからだと思います。自分たちに一番足りないのは失点した後、どういったメンタルで戦うか、どういった決断をしてプレーをするか、個人個人の意見を周囲に伝えることなど、戦術ではなく一人ひとりの責任の部分だと思います。得点シーンは淳史が素晴らしいボールを出してくれました。得点シーン以外でもシャドーやアンカーの幹敏とつながってゴールに向かうシーンが増えてきていること、3点取れたことはポジティブな要素だと思います」

MF48 柴山 昌也 (#48柴山)
「同点での出場だったので自分には得点が求められていたと思いますが、結果を出せなかったことが悔しいです。右サイドで起点になったシーンがありましたが、チャンスメイクは自分の武器なので、短い時間の出場であっても、1回だけでなく、2回、3回とチャンスを作れるようにしたいです。プロの世界に年齢は関係ないですし、18歳の僕でも結果を残せば試合に出続けられると思うので、ここからもっと成長していきたいです。これからも応援をお願いします」
「残念なゲームをしてしまいました。前半は内容も良くリードできたのですが、後半は相手がシステムを変えてきた中でボールを取りに行けない時間が長く続きました。飲水タイムなどを使ってコミュニケーションを取りましたが、流れを切ることはできませんでした。そこでしっかり整理して、相手の変化に対応できれば良かったと思います。もっと点を取れるシーンもありましたが、サッカーは4点取らないと勝てないわけではありません。すべてが悪かったわけではないので、細かい部分のプレーをチェックしながらこの結果を次につなげられるようにしたいです」