再浮上のきっかけをつかむための重要な一戦だ。相手は3連勝中のＦ東京。順位も6位まで上げており、今もっとも勢いに乗る相手と言えるだろう。守備陣には権田や森重といった代表選手をそろえており、苦しい試合に競り勝つ勝負強さを持っている。
　
アルディージャの先発には、前節の仙台戦と同じメンバーが並んだ。ＧＫには江角が入り、最終ラインは下平、菊地、ニール、今井が砦を築く。ボランチの高橋と和田は、前節の仙台戦で連係を高めつつある。アウトサイドのチョヨンチョルと渡邉は、バリエーション豊富な攻撃を構築。ツートップはノヴァコヴィッチとズラタンのスロベニア代表コンビだ。

トンネルの出口は見えている。必要なのは、何よりも勝点3だ。19時4分。熱戦の幕開けを告げる村上主審のホイッスルが、ＮＡＣＫ５スタジアム大宮の上空に響き渡った。
　
ボールを動かしてリズムをつかむＦ東京に対して、アルディージャは前線からアプローチを仕掛けてボールを奪いに行く。試合の入り方は悪くなかった。７分にはＦ東京のルーカスに決められて早くも先制点を献上したが、アルディージャもすぐに反撃に出た。
　
10分には渡邉のクロスに跳び込んだチョヨンチョルがヘディングシュート。惜しくもバーに弾かれたが、攻撃の流れはつかんだ。そして13分、下平のクロスが逆サイドに流れると、走り込んだ渡邉がダイレクトで蹴り込み、アルディージャが同点に追いついた。
　
その後もアルディージャは多彩な攻撃を展開した。長短織り交ぜたパス回しで、2人目、3人目が有機的に絡み合う。守備では一人一人が球際でファイトし、勝利への執念を見せた。31分には後方でボールを奪われてピンチを招いたが、Ｆ東京の渡邉のシュートはゴール前で体を張ったニールがブロックした。
　
攻撃の破壊力を増したアルディージャが待望の逆転ゴールを奪ったのは37分だ。左サイドを崩したチョヨンチョルのクロスをノヴァコヴィッチがヘディングシュート。鮮やかにゴールネットを揺らし、２－１と逆転に成功した。しかし、前半終了間際にセットプレーから失点。追いつかれる形で、ハーフタイムを迎えることになった。

後半も立ち上がりから激しい展開になった。アルディージャは、ノヴァコヴィッチとの連係から渡邉がシュート。その直後には、Ｆ東京のルーカスに至近距離からシュートを打たれたが、ＧＫ江角が抜群の反応でボールを外にかき出した。さらにドリブル突破を図ったチョヨンチョルがペナルティエリア内で倒されるが、ホイッスルは鳴らない。
　
一進一退の展開。しかし66分、Ｆ東京のルーカスにハットトリックとなる３点目を決められると、ここからアルディージャは防戦を強いられる。上田、富山と攻撃的なカードを切ったが、流れを変えることはできなかった。リスクを負った攻撃もゴールにはつながらず、終盤の2失点で万事休す。2－5の敗戦を喫した。

第25節の新潟戦から続く連敗は3に伸びた。ノヴァコヴィッチは「いつも支えてくれるサポーターに申し訳ない」と悔しさをにじませた。しかし、1週間後には、アウェイでのさいたまダービーが待ち構えている。「今日の敗戦を受け止め、気持ちを切り替えて次の試合に臨みたい。さいたまダービーにかける思いを、試合の中でしっかりと表現したい」と渡邉は再起を誓った。今日の敗戦の悔しさは、さいたまダービーで晴らすしかない。

(総評:岩本勝暁/写真:早草紀子)