【ライターコラム】新生VENTUS、2024-25シーズン始動

77日(日)、VENTUSの新シーズンがスタートしました。朝9時半を過ぎた頃、ピッチに次々と選手たちが姿を現します。すでに気温は30度を越えた厳しい暑さのなか、多くのファン・サポーターに見守られながら、約1時間汗を流しました。

 【ライターコラム】早草 紀子
新生VENTUS2024-25シーズン始動


VENTUSはチーム編成が大きく変わり、5人の新加入選手とともに、迎えたシーズン初日。

まだお互いに様子を伺いながらの初々しさと、ここから新たなチーム作りが始まる緊張感が入り混じったピッチでしたが、徐々に声が出始めます。

ウォーミングアップ時、ひと際大きな声で選手たちを鼓舞するのは今季からスタッフに加わった山守杏奈 フィジカルコーチです。メニューの説明から、暑さで落ちかけるメンタルをグッと引き上げるため手を打ちながら選手を後押しします。

その後、2グループに分かれると一方はダッシュを組み込んだランニングメニューへ、もう一方はボールを用いてのトレーニングに入ります。ボール組には新加入を含めたVENTUS歴の浅い選手たちが多く振り分けられました。

ここはコーチとアナリストを兼任する平川雅之 コーチが鳥かごメニューの選手たちをリードしていきます。初めて顔を合わせる選手も多いからか、やや大人しめ。その中で盛り上げ役に徹していたのは船木里奈 選手でした。「いけいけ! 」「っしゃー! 」「マジかー! 」——1プレーごとに声をかけながら、緊張する選手たちの心をほぐしていました。

対してキツい表情を見せるのはランニングメニューのグループ。時間を計りながらジョグからダッシュを繰り返す。体温よりも気温が勝るピッチ上で、選手たちの汗が止まりません。その後、メニューを交換して、初日のトレーニングは終了しました。

そこからはお待ちかねのファンサービス。集まっていただいたファン・サポーターの皆さまと、一緒に写真を撮ったり、サインをしたり、言葉を交わしたり。選手たちが大切にしている時間の始まりです。新加入選手は少しはにかみながら、VENTUS歴の長い選手は時に爆笑しながら、楽しいひとときを過ごせたようでした。

「まだ人見知りをしている選手もいて…、ちょっと静かでしたね(苦笑)」と初日を振り返るのは乗松瑠華 選手。オフには体の回復具合を見ながら上半身を鍛えたといいます。その言葉どおり、体の状態は上々のようです。「初日ということでキレがなかったので、そこをここから上げていきます!」(乗松)と張り切っていました。

今シーズンは改めてスタートを切ることになるチーム作りについては自分自身の役割として思うことがある模様。「みんなとコミュニケーションを取りながらそれぞれが素を出していける雰囲気作りをしたいです」と、上から4番目の年齢となったことで、昨シーズンにキャプテンになったときとはまた異なる自覚が芽生えたそうです。

まずはカップ戦までの約1カ月半、戦う集団へステップアップしていかなければなりません。特に乗松選手の主戦場である最終ラインは大きくメンバーが変わります。

「カップ戦でだんだん良くしていくというよりは、毎試合限りなく失点ゼロにして、そこからより攻撃的に、奪うためにみんなの良さを出していきたいです。ラインコントロール、コーチング、プレッシャーやカバーというやらなきゃいけないことはちゃんと求め続けるけど、本当に誰が出るかわからないし、今までのやり方にハメるのではなく、みんなの良さが生きる関係性は作っていきたいです」(乗松)と昨シーズンの悔しさをチーム作りにしっかりと落とし込む覚悟です。

柳井里奈 監督も熱い決意を語ってくれました。「クラブとして育成循環型というのを掲げて勢いを持って戦うために今シーズンはこういう年齢層になりました。抜けたベテランはベテランの良さを出してくれていましたし、そこを中心にチームがまとまっていました。今シーズンはチーム一丸となって戦うことは変わらないですが、世代ではなく、本人たちが一人ひとりが持つ責任は大きくなると思います」とは柳井監督。そのために選手たちに求めて行くものとして挙げた要素がありました。

「インテンシティ(強度)のところは、昨シーズンのWEリーグにおいて私たちの立ち位置はすごく低かった。そこは高みを目指して、個人としてもチームとしてもやっていかないといけないと思っています」(柳井監督)。

世界を見渡してみても、パスサッカーと目されるチームの走力の数値は高いもの。攻守に走り切ることは大前提であり、流れを決めるポイントにインテンシティが大きく関係してきます。

「いちサッカー選手として今の時代、求められていること。個人をしっかり伸ばしながらそこにチームを乗せていくというところは大事にしないといけないと思っています」(柳井監督)。

指揮官が掲げる今シーズンの目標は——?「今シーズンはフィジカルコーチ、アナリストも加わったので、個人個人にフォーカスしてチームとして戦うべき姿を明確に出していきたいです。そして上位のチームに対してしっかり戦い切る、勝点を取る! 年内、リーグ戦11試合とカップ戦のグループステージだけで終わらないように、(カップ戦を)勝ち上がりたいっていうのがあるので、ノックアウトステージも含めた試合数を戦うことをチームの軸にしたいです」(柳井監督)。

今オフ、国内・海外含めてホットリーグは大きな動きを見せました。WEリーグの勢力図が変わっていくことも予想されます。だからこそVENTUSとしては上位に食い込んでいきたいところです。なにより「ホームで勝利を! 」——これはチーム全員が思うこと。新生・VENTUSの挑戦はここから始まります。


早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

FOLLOW US