【ライターコラム「春夏秋橙」】新加入選手紹介 第2回

ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回から3回にわたり、2024シーズンからアルディージャに加わった新加入選手を紹介します。

【ライターコラム「春夏秋橙」】戸塚 啓、粕川 哲男、平野 貴也
新加入選手紹介 第2回


DF20 下口 稚葉

最終ラインならどこでもプレー可能

自身初となる完全移籍で、大宮アルディージャに加入した。家族と一緒に引っ越しを済ませ、埼玉で新生活を始めている。「生まれは福井。中学高校は静岡。岡山に行って、長野に行って、愛媛に行ってなので関東は初めて。人は多いし建物は高いしで……家族もなかなか慣れないようですけど、一緒に戦ってくれています」と、表情を和らげる。そして「どこに行ってもサッカーはサッカーですし、1年は1年、1日は1日ですから。大宮のため自分に何ができるのか。強い覚悟を持ってきたことは、間違いありません」と、熱い一面ものぞかせる。

右SBが主戦場だが、最終ラインならどこでもこなせるユーティリティ性も魅力だ。過去2シーズンはJ3のFC今治でレギュラーをつかみ、多くの試合で経験を積んだ。J3の特徴や厳しさを、その身で実感している。

「よりタフさが求められるリーグだと思いますが、大宮にはそんな土俵に立っても負けない力があると思います。僕自身は、球際の強さ、最後まで走り切る、粘り強く戦う、声を出して明るくプレーするといった自分の特長を遠慮することなく出して、チームに良い影響を与えていければと思っています」

Profile
1998年5月2日生まれ、福井県出身。178cm/73kg。福井市中央FC→JFAアカデミー福島→ファジアーノ岡山→AC長野パルセイロ→ファジアーノ岡山→FC今治を経て今季、大宮に加入。

MF14 泉 柊椰

ブレイクを期す期待のドリブラー

三笘薫を目標とするアタッカーだ。7年前、中野誠也たちとJリーグ勢を連破した筑波大学の天皇杯の試合を見て、衝撃を受けた。「あれから、ずっと参考にしています。ドリブルのすごさは誰が見てもわかると思いますが、常に相手の背後を狙っているところ、相手を後手に回らせるプレーは本当に世界トップレベルだと思います」

武器であるドリブルを磨くために、びわこ成蹊スポーツ大学時代には高橋佳三先生に呼吸法を学び、古武術も取り入れた。授業の合間に2人きりで練習するなどして、お臍の下にある“丹田”の使い方を習得した。

「それまで脱力していて、一気に加速したいときとか相手をはがすときに丹田にグッと力を込める。そうすると体感スピードが上がるというか、キレが増すんですよ。ただ、相手をはがすのは前提であって、そのあといかにゴールを決められるか、アシストにつなげられるか。その質に、もっとこだわっていきたいと思っています」

課題のフィジカルを改善するため、筋力トレーニングも欠かさない。プロ2年目。長澤徹監督から掛けられた言葉「大宮に来て本当に良かったと言える1年にしよう」も支えに、自身の成長と大宮の復活を期す。

Profile
2000年12月2日生まれ、大阪府出身。174cm/62kg。八尾太陽リンクスSC→柏田SC→ヴィッセル神戸U-18→びわこ成蹊スポーツ大→ヴィッセル神戸→モンテディオ山形を経て今季、大宮に加入。

MF35 清水 祐輔

タフで玄人好み。東洋大学出身のボランチ

小学生のころ、週1回は大宮アルディージャのサッカースクール上尾校に通い、セレクションも受けた。中学進学と同時に柏レイソルのアカデミーに進み、東洋大学を経て地元のクラブに帰ってきた。獲得に尽力した橋本早十強化担当は、「忘れられないのは去年の関東大学リーグです。めちゃくちゃ暑かった試合で、最後まで誰よりも走り続けていました。当たりに強く、ボールが奪えて、フィードも良い。前線までランニングする力もある。玄人好みの選手かもしれませんが、楽しみな選手です」と、期待を寄せる。本職は大学の1学年上である高柳郁也と同じボランチ。プロ1年目から試合に絡み、圧巻のプレーを見せた先輩の後を追うつもりだ。

「高柳選手だけじゃなく、すべての選手に見習わないといけない部分があります。人それぞれの良さを積極的に吸収して、いろいろ学びながら自分の良さを出していきたいと思います。守備に関しては、自信があるので」

アカデミー時代の同期で、「お互い厳しい言葉を掛け合っている」関係なのが、日本代表の細谷真大だ。最高の仲間からの刺激も糧に、「いつか追いつき、追い越せるように頑張りたい」と闘志を燃やしている。

Profile
2001年5月13日生まれ、埼玉県出身。白岡南SSS→柏レイソルU-15→柏レイソルU-18→東洋大を経て今季、大宮に加入。

DF37 関口 凱心

昨季SBでデビュー済み。今季は中央で勝負?

新チーム始動の様子を悔しそうに眺めたDF関口凱心は「楽しそうだな、と思います。長期離脱は、初めての経験なので」と苦笑いを浮かべた。昨夏に痛めた右足第五中足骨が折れて23年11月に手術。別メニュー調整が続いた。

復帰の際には、新しい顔を見せるかもしれない。昨季、特別指定選手として加入し、主にSBで起用されたが、スタッフは一新された。今季はどのように評価されるか分からない。大学でプレーしたCB、ボランチといった中央の位置のほうが慣れてもいる。関口は「どこでも準備はできている」と自信を示した。

「大学も前から(プレスに)ガンガン行って走るチーム。走れるので強みを生かしたい」と、アグレッシブにゴールとボールを奪いに行く狙いを示した指揮官のチームに合流するイメージも描いている。個人でも、チームでも相手に負けない気持ちを大事にしたいという。大学を卒業する今季は、いよいよ本格的にプロとしてのキャリアを歩む。「(J3優勝の)シャーレを掲げたい。自分が引っ張る気持ちでやりたい」と気合い十分。復帰が待ち遠しい戦力だ。

Profile
2001年9月24日生まれ、埼玉県出身。柳崎SCJ→大宮アルディージャJr.ユース→西武台高→山梨学院大を経て今季、大宮に加入。

FW42 藤井 一志

目標は二ケタ得点。野心に満ちたストライカー

ボールを持ったら、前を向いてゴールへ。この男は、チームにダイナミズムを与えてくれそうだ。藤井一志は、推進力を武器とするストライカーだ。高校時代にボランチやSBでプレーし、後方から前に出て行くプレーを覚えた。FW転向は、大学3年次の途中だが、その年の関東大学2部得点王に輝いた。ボランチで会得したわずかなスペースでのターン。SBで磨いた力強いドリブル。両方を駆使してゴールへ近づき、パンチの効いたシュートを突き刺す。

「個人の最終目標は、プレミアリーグと日本代表でプレーすること。逆算したら、1年目は慣れるとか甘いことは言っていられない。二ケタ得点、15点以上のゴール関与が個人目標」と目標意識も言葉も明確で頼もしい。

中学(県→関西)・高校(都2部→都1部)・大学(県1部→関東1部)と、チームの中心になって所属するリーグのカテゴリーを昇格させ続けて来た、若き昇格請負人。加入内定前、スタジアムに向かう氷川参道を歩く観客の会話を聞き「この人たちに夢や希望を与える選手になりたい」と思ったという。今季は「今日も藤井が……」とファン、サポーターから期待される、J2復帰の原動力になるつもりだ。

Profile
2001年9月30日生まれ、兵庫県出身。174cm/72kg。西宮少年SC→ヴィッセル神戸伊丹U-15→東海大高輪台高→東海大を経て今季、大宮に加入。

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