デジタルバモスでは毎月1回程度、大宮アルディージャVENTUS情報をお届けします。今回は直前に迫った後期開幕に向けて、源間葉月選手が意気込みを語ってくれました。
Vol.012 文・写真=早草 紀子
コツコツと一歩ずつ。
VENTUSとともに歩みを刻む源間葉月
大敗からのスタート
——あっという間に日本初のWEリーグの前期日程が終了しました。開幕戦では随分緊張していたように見えましたが?
「一年前はトップの世界で自分がプレーできるとは思っていなかったので、いざ開幕戦でピッチに立ったときは雰囲気にのまれてしまって……緊張しました(苦笑)。でも、『どの試合よりも早く始まる、WEリーグの第1試合目のピッチに立てるのは自分たちだけだから楽しもう!』とアリさん(有吉佐織)がほぐしてくれたので、『やるしかない!』と気持ちを切り替えられました」
——それでもやはり納得できる開幕戦とはなりませんでした。
「一番悔しい試合になってしまいました。相手がINAC神戸レオネッサということで気合も入っていたんですけど大敗してしまった。システムがかみ合わないということはあったにしても、0-5というスコアは悔しかったですね。守備の部分でWEリーグのレベルに達していないことを痛感しました。そのころに比べれば後半戦は得点も取れるようになったし、失点も少なくなった。止まっているわけではなくて階段を昇っている実感はあります」
——後期にはホームでINAC神戸レオネッサを迎えます。この試合で真の成長の度合いを感じることができるのかもしれませんね。
「そう思います。だから絶対に勝ちたいんです。私だけではなく、みんながあの悔しさを忘れていませんから」
——ボランチとして上辻祐実選手、村上真帆選手、野口彩佳選手といろいろなタイプの選手と組みました。
「祐実さんは本当にうまくて、今だに『え?そこにパス出せるの!?』と驚く日々です。自分に合わせてかなり自由にやらせてくれます。練習中にもアドバイスをもらうなどして、自分も祐実さんの位置を見るようにしているのですが、もっといい関係性を作っていきたいです」
——村上選手とのコンビは、開幕当初はバタバタと後追いになることもありましたが、守備に切り替わったあとのプレスはどんどん改善されていきましたよね。
「そこは本当によく話をしていました。真帆は守備範囲が広いので、『そこも取れるんだ!』と思うことも多くて、お互いに『自分はこっちのコースを切るからそっちお願い』というやり取りを頻繁にしています。もともと2人がボランチを組むときは、並んでしまってスパスパと間を通されていたので、コース切りのところはプレー直後にしっかり話すようにしていました」
先輩たちから日々吸収
——チームが走り出して1年。VENTUSの魅力は?
「全体的に明るいというか……練習とかも気持ちが入っている部分もありつつ、楽しいし盛り上がる。試合後も負けて悔しいんだけど、次への切り替えというのがしっかりしていると思います。そういう雰囲気に先輩たちが持って行ってくれています」
——それは有吉選手、上辻選手、鮫島彩選手、阪口夢穂選手といった“87会”メンバーですか?
「ですです(笑)。そういう雰囲気を経験のある人が作ってくれていて、今は引っ張っていってもらっていますけど、自分でも引っ張っていく覚悟を持たないといけないと思っています。みなさんのすごいところは、普通なら『こうして、ああして』と言うほうがてっとり早いところを、絶対に一方通行ではなく、アドバイスもありつつ、私が言うことも一方的に否定することは絶対ない。『源ちゃんはどう思う?』という感じにディスカッションに持って行ってくれるんです。まだまだ勉強中の身ですが、早く肩を並べられるようになりたいです」
——確か開幕前に「前のプレーと変わったよね、と言ってもらえるようなプレーがしたい」と言っていました。
「あぁ……もう次の質問がわかっちゃいました(笑)。本当にまだまだ途上なのですが、相手をしっかり見るということ、ポジショニングは意識しているので『これからの変化に期待!』ということにしてもらいたいです」
——高校時代にコツコツと体得していったロングキックのように、VENTUSに来てからコツコツ取り組んでいることは何かありますか?
「今までもやってこなかったわけではないのですが、本格的な体作りはやっています。体が大きくてもその使い方がいいかと言われたらそうではない。当たり負けはしないけど、ボールを失わない体作りは必要だと感じたので、腕の使い方や筋トレ、アジリティの部分は高めていこうとしています」
——確かにコツコツと継続することが必要な分野ですね。
「はい(笑)、ぜひ長期的に見ていただきたいです!」
——でも、働きながらではかなりハードなのでは?
「大変ですけど、今はそれが楽しいです。オフのときや仕事帰りにも、もっと取り組んでいきたいです」
——自分の時間もしっかりと確保できていますか?
「ありますよ。でももともとそんなに外に出るタイプではなく、家でのんびり派なんです。今の癒しは犬の散歩! トイプードル3匹目を迎え入れてしまったので、もう可愛くて可愛くて仕方がないです(笑)」
VENTUSの生え抜きとして
——源間選手は十文字高校、FC十文字VENTUS、十文字学園女子大とVENTUSの生え抜きとも言えます。大宮アルディージャVENTUSは新しいチームでもあり、VENTUSを受け継いでいるチームでもあります。源間選手はどういう感覚なのでしょうか?
「新しいチームと捉えていますし、特に何かを継承したいとかはないですが、私が高校生のときになでしこリーグのチャレンジリーグに勝って昇格したチームが、今こうやってアルディージャと一緒にWEリーグに所属できているのは感慨深いです。大学3、4年のときは一度チームを抜けて大学のチームに入ったんですが、そのときになでしこリーグ2部に昇格したんですよね。どこか“戻ってきた”という感じもありますし、VENTUSという名前が残ってくれたのはうれしいですし、そこに自分が入れているのでしっかり結果を残したいです」
——ファン・サポーターのなかでもVENTUSという名前が浸透してきているように感じます。
「ですよね! 私も感じます。サポーターのみなさんも、普通なら『大宮の女子チーム』と言われるだろうけど、ちゃんとVENTUSってチーム名を言ってくれますよね。あれ実はすごくうれしいんです!」
——まだ声出し応援はできないですけど、全ての制限がなくなったときのNACK5スタジアム大宮はどんな雰囲気になっていると思います?
「めちゃくちゃ楽しみです!チャントとかどうなるんでしょう? 作ってもらえるのかな~とか。作ってもらえるならもうなんでもうれしいです!」
——そんなファン・サポーターのみなさんに、もうすぐ始まる後期はこんなプレーを披露します!という推しプレーはありますか?
「ゴールにつながるようなアシストやパスは見てもらいたいところではありますが、目立たないところでも試合に絡んでいるよね、と思ってもらえるようなプレーを見てもらいたいです」
——ミドルシュートも狙っていますよね。あと少し! すごく惜しいんです(笑)
「狙っています! ホントもうちょっとなんですよね。もっと精度上げます! そんなところもみなさんぜひ見に来てください」
早草 紀子 (はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。