デジタルバモスでは毎月1回程度、大宮アルディージャVENTUS情報をお届けします。今回は大卒ルーキーながら昨季、19試合に出場した村上真帆選手に、新シーズンへの意気込みを聞きました。
Vol.017 文・写真=早草 紀子
濃密だったルーキーイヤー
——村上選手自身、環境がガラリと変わって変化の1年半だったのでは?
「めちゃくちゃ濃かったです! これまでのサッカー人生のなかで一番濃い1年でした。そしていまもどんどん濃くなっています。一番最初に驚いて、いまも勉強になってるのは、ウォーミングアップでやる4対1や4対2の“鳥かご”。全然奪えないのに、すぐ奪われます(笑)。自分のなかでは考えてやってたつもりだったけど、みんなのなかでは無意識のレベルでしかない。鳥かごってちょっとお遊びでやるイメージを持っていたんですよね。もちろんチームメートのうまい人たちはそういう感覚なんでしょうけど、自分はもう必死で。一番自分に足りないものを補う練習になってます。相手を見ること、駆け引き、味方からボールを受ける立ち位置とか、細かいところをちゃんと意識しないとできないので、こんなに大事なんだとあらためて痛感しています。最近、ようやく納得できるプレーが出るようになってきました。ここは継続していきたいところです」
——環境が変わったと言えば、WEリーガーになったと同時に、社会人として働くことにもなりました。
「十文字学園女子大学で働いているのですが、本当に周りの方に助けてもらって感謝の気持ちしかありません。昨年は総務課だったんですけど、今年から広報課に配属になりました。3時間ちょっとの勤務で同僚の方にはご迷惑をおかけしているので、戦力となれるよう日々勉強しています」
——どんなことをしてるんですか?
「例えばホームページの管理をしたり、SNSの更新・チェックをしたり、取材や公開講座の準備や、立ち合いをしています。いいお手本がチームにいますので、いつも広報さんの動きは見てます。選手たちはカメラの前に立って話して終わりですけど、それをするまでにインタビューする質問内容を考えて、カメラをセッティングして、その素材をどう編集して世に出すのかとか……。自分たちがこれだけスムーズに取材ができるのは、その裏でたくさんいろいろなことをしてもらってるおかげだなと、広報をやるようになってわかりましたし、取材への向き合い方も変わりました」
——そう感じてもらえるのはうれしいですね。では、サッカー面で成長を感じたのはどんなところですか?
「相手をしっかりと認識できるようになった。大学時代はなんとなくの感覚でできてたのですが、その認識ではまったく通用しません。相手を見ることも大事だし、相手をどう動かすかが大事。攻撃でも守備でも通用するので、そこはできるようになってきました……まだまだですけど」
2年目の意気込み
——今季、リベンジしたい相手は?
「(日テレ・東京ヴェルディ)ベレーザですね。代表選手がいっぱいいて、本当に個人技術が高い。プレシーズンマッチでは0-4で大敗したというのがすごく頭に残っていて……。練習試合でも何点取られるんだっていうくらい、ボロ負けしていたんですよ。リーグ戦(0-0、0-1)では戦える部分もあったので、今季はベレーザから得点して、失点を防いで勝利したいです」
——そのために必要なことは?
「去年は得点が少なかったので、ゴールに向かう姿勢をみんながちょっとずつ持てばシュートの数も増えるし、それがゴールにつながります。あとは失点をしないという部分で、最後に体を張る、相手よりも走る! 細かいですが、そこはもっとやっていかないといけないと思います」
——VENTUSは攻撃型の選手が多くて、ゴールへの意識が強いものだと思っていました。
「確かにあるのですが、途中の段階でうまくいかないとゴールにはつながらない。だから昨年はビルドアップの練習もしていたのですが、今度は手段が目的になってしまっていた。ゴールのための手段のはずが、無意識にビルドアップが目的になっていた気がします」
——北海道でのキャンプでそのあたりの修正はできてきてますか?
「ある程度、チームで共通認識としてできている部分もあるので、練習や試合をしていて、みんなが一つの方向に向かえてる実感はあります」
——雰囲気はどうですか?
「昨年以上にいいと思います。キャンプでは(柴山)史菜と同部屋でした。最初は、いろいろなことを気にしないで、自分が決めたことは突き進む感じの人なのかなと思っていたんです。でも意外なことに、日焼け止めを塗ったあとに白浮きしていないかめちゃくちゃ気にしたりして、新加入選手のカワイイ面を見つけることもできました(笑)」
——オフのときは何をしているのですか?
「映画をよく見ます。邦画専門で(笑)。最近だったら『そして、バトンは渡された』がめちゃくちゃ良すぎて、小説も買っちゃいました! 家族のことやみんなのことを思って生活する、泣ける映画です。人気の映画は映画館に行きたいですけど、金曜ロードショーでの鑑賞も貴重なんです(笑)。家族と一緒に住んでいるのですが、時間までにテレビの前で準備して、CM中に『いまトイレ行けるかな!?』と、2つあるトイレを家族でバランス取りながら観ています」
――なんだか古き良き昭和の香りがします。
「そうかもしれません(笑)」
——今週末からのカップ戦は、NACK5スタジアム大宮で三菱重工浦和レッズレディースとのさいたまダービーから始まります。
「同じさいたまでこんなに差があるのかと思われたくないですから、負けたくないですね。浦和は映像で見る分には“うまい”印象なんですけど、実際にやってみると『ここでこんなプレーするの? 嫌だな』と思わされる。自分たちも相手に嫌だなと思われるプレーをしないといけないし、嫌だなと思うプレーを防がないと互角には戦えないですよね。浦和戦だけでなく、今季はゴールに絡むプレーをしますので、昨年と変わらずスタジアムに足を運んでくださるとうれしいです。応援よろしくお願いします!」
MF 25 村上 真帆 (むらかみ まほ)
1998年6月15日生まれ、埼玉県出身。163cm/55kg。昭和戸祭SC→栃木SCレディース →私立十文字高→早稲田大を経て、2021年1月に大宮アルディージャVENTUSへ加入。パワフルなプレーが持ち味で、左足から放たれるシュートは強烈だ。
早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。