【VENTUS PRESS】田嶋みのり 前編

今回からVENTUS PRESSの選手インタビューがパワーアップします。前編・後編に分けて、前編はじっくりとサッカーの話を、後編はオフの話をたっぷりお届けする予定。パワーアップ初回は田嶋みのり 選手の登場です。

Vol.20 文・写真=早草 紀子

「ゴリゴリのドリブルでワクワクさせます!」(田嶋みのり)


 —昨シーズン、新設チームとなる大宮アルディージャVENTUSへの移籍の決め手は何だったのでしょうか?
「前チーム(ちふれASエルフェン埼玉)で培ったものをこのチームで出してみたいというか、どこまでできるのかやってみたかったんです。もっと言えば移籍をしてみたかった。実際には来てすぐにケガをしてしまったので・・・そこが想定外でした」

—さあ、ここから! という時期でした。
「始動して一ヶ月くらいですね。けっこう凹みました。それでも頑張ってリハビリして復帰できるかなっていうときにまたケガをしてしまって・・・トレーナーのみなさんに支えられて最終節になんとか間に合ったって感じでした」

—外から見たVENTUSはどんな風に映っていたのですか?
「もう傍観者で自分のチームっていう感覚ではなかったです。自分もチームの一員だって思えたのはちゃんと練習に入れた今シーズンからだから、本当に最近のことですね。だからもう新加入の気持ちでやろうと。新しい風を吹かせたろう! って感じです()

—長いリハビリはキツかったと思いますが、体とじっくり向き合う機会にもなったはず。むしろケガ前よりも向上したところはありますか?
「体幹! お腹周りとかは本当にしつこいほどやったので、強くなったと思います。あと体の使い方はリハビリでじっくりやったので、強くなった・・・気がします」

—であれば、1対1の場面ではかなりその変化を実感できているのでは?
「フィジカル面で感じますね。すぐに倒れなくなった。スピードはちょっと落ちた気がするけど体幹は自信が持てます。こういうのは本来、ケガをしていなくてもしっかり取り組まないといけないんですけど、なかなかやれないんですよね・・・」

—無事復帰したのは最終節のINAC神戸レオネッサ戦での途中出場でした。ピッチに戻ってきたときの感情は?
「もう最高! かなり点も取られた展開だったんですけど、アシストもできたし、リハビリのご褒美をもらった気分で嬉しかったです」

—最終節と同様に、今シーズンの開幕戦も相手はI神戸でした。
「最終節は楽しもう! って感じだったけど、今シーズンの開幕戦は全然違う感覚でした。自分が勝たせるという自覚というか、攻撃の起点にならないといけないと思って臨んだので、ちゃんとサッカーに向き合えている感覚がありました」

—相手はチャンピオンチームです。実際に戦ってみてどうでした?
「前半は相手の縦パスがけっこう入っちゃったんですけど、ハーフタイムにみんなで話してちょっと立て直せたんです。伸びしろはある! もっと成長できるって感じました。攻撃は、前半は全くできなかったんですけど、後半は前からプレスに行ってボールを奪うことができたシーンもあったので、もっとアグレッシブに前半から行けていれば結果は少し変わったのかなと思いました」

—個人的には?
「推進力を持って上がる回数を増やしたいんですけど、なかなか下がり気味のポジションになってしまっているので、もっと前に出ていきたいです」

—大学時代は田嶋選手は前線にいるイメージでした。
「そうなんです。今より前め・・・イノさん(井上綾香 選手)みたいな1.5列目みたいなところは好きです! イノさんも動くので、いろいろできそうですよね。だからこそ、もっとスタミナをつけてコンディション上げて前にいけたらいいなって思います」

—スタミナは自身アリ派?がんばらなきゃいけない派?
「完全に頑張らなきゃいけない派です()特にいまはハードワークを求められるポジションなので、より頑張らないと!

—杉澤海星選手が「走り勝てば勝負に勝てる!」って言い切ってました。彼女はそれを世界の舞台で証明してみせましたから。
「本当にそう思います。走れたもん勝ち!

—きっとI神戸より走ることができれば・・・
「勝てるんですよ! ・・・あ、乗せられた()

—乗せちゃいました(笑)ホーム開幕戦は古巣のEL埼玉戦でした。やはり気合いは入りますよね。
「もちろん! 意識はします。昨シーズンは出られなかったし、今シーズンのカップ戦もちょっとしか出られなかったから。ホーム開幕戦は課題が多く出た試合でもありましたが、まずは勝点3を取れたこと、ホーム開幕戦を勝利で終われたことはとても良かったと思いますし、昨シーズンからずっと出たかった古巣戦にようやく出られたこともうれしかったです。どの試合でもそうですが、負けたくないという気持ちが一層強くなった試合でした。勝利して最後はみんなで笑えて良かったですし、勝つことでファン・サポーターの皆さんが喜んでくれることが私たちもうれしいので、これからも勝点を積み重ねていきたいと思いました」

—大熊良奈選手の涙の復帰ゴールを守り抜きました。今シーズンはホーム開幕戦を白星で飾っているチームが多いので一安心というところでしょうか。今シーズンのVENTUSの強みというのは?
「マサさん(斉藤雅人コーチ)からずっと言われているチームのテーマでもあるんですけど、“攻守に置いてボールを握る!”というのが体現できればいい流れが生まれると思ってます。自分は2列目から飛び出すっていうのは好きなスタイルなので、それをマサさんから求められたときに『これだ!』って感じました」

—そんななか、田嶋選手はどんな風を吹かせますか?
「どうしましょうか()やっぱりドリブルが好きなので、ゴリゴリ行って自らシュート! っていうのはやりたい。そういうプレーでチームを助けたいです」

—そのためにはボールを受けたときにスペースがないと・・・ポジショニング命ですね。
「そうなんです! 本当にポジショニング大事。でもパスも全然好きなんですけどね。パスコースがなかったときにドリブルではがせたらそれだけで打開できるから、自分にとってドリブルは持っておきたい“武器”なんです」

—ドリブルと言えば、憧れの選手に男子トップチームの泉澤仁選手の名前を挙げていましたが・・・忖度ですか(笑)?
「違います違います! ゼロから一気に100に持って行くドリブルがすごいなって思って・・・なんかワクワクする。ボール持つと何かしてくれそうなあの感じに憧れます」

—小柄でアジリティがあるからタイプ的に似てますね。
「そうなんです。同じような感覚があって。一回止まってからの突破。あれはできるかわからないですけど、やってみたいです。フェイントをちょこちょこかましながら・・・あ~もう練習しよ! 泉澤選手が大宮に戻ってきてから試合を見たりして盗めるところ探してます()

—試合を見るってNACK5スタジアム大宮で?
「はい! 時間が合えば見に行ってます。雰囲気が最高ですよね。これまでは女子チームしかないところでプレーしていたので新鮮です。やっぱり応援がすごい! アウェイの東京ヴェルディ対大宮アルディージャの試合を観に行ったんですよ。アウェイなのに応援に一体感があって、鳥肌が立ちました。感動モノですよ、あれは! これは選手としては頑張れるだろうなって思いながら見てました」

—いま、さらりとすごいこと言いました?わざわざアウェイゲームを観に行ったってことですか?
「行きましたよ・・・一人で()

—ガチじゃないですか! それはもうすでにサポーターと言っていいのではないでしょうか。
「あ、言わない方がよかったかな(笑)」

—サッカー観戦が好きなのかと思ってたんですが、これは・・・大宮アルディージャが好きなんですね。
「私もいま、気づきましたけど、どうやらそうみたいです()でもホームゲームはVENTUSの選手もよく見に行ってますよ。(久保)真理子とか地元ですしね」

—そして、同じユニフォームを来てプレーするという・・・
「そう! これは本当に幸せなことだと思います」

—いやー・・・本物じゃないですか。そんな大宮熱溢れる田嶋選手ですが、ここからまだまだコンディションもサッカー勘も上げていけるはず。今シーズンの目標を教えてください。
「攻守で中心になって、チームを勝たすことができる選手になりたいです。VENTUS2年目ですけど、自分は新たな気持ちでシーズンに臨んでいます。新しいサッカーに取り組んでいるVENTUSと、まだ私のプレーを見たことがない人も多いと思うので、見てくれる人をワクワクさせられるようなプレーをしたいと思ってます。ぜひ一緒に戦ってください!


早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

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