今週末はWEリーグさいたま市対決——三菱重工浦和レッズレディースとの「さいたまダービー」です。声出し応援も緩和されたなかで迎えるリーグ戦として初のさいたまダービーとなります。盛りあがり必至のダービーを前に、さいたま市にゆかりのある斉藤雅人 ヘッドコーチ、大熊良奈 選手、久保真理子 選手のダービー対談をお届けします。
—選手お二方は“ダービー”にはどんなイメージをお持ちですか?
久保:小さい頃から大宮の街で大宮アルディージャと育ってきたので、やっぱりダービーは男子の試合をいっぱい見に行ったし、特別な思いがあります。何より市でダービーができるのってさいたま市しかないし、それがいま男子でできない分、女子がその熱いもの——大宮と浦和のプライドがぶつかり合うもの——そういうものを女子でも表現していきたいと思ってます。
大熊:私はJリーグを見ていた訳じゃないので、そこまでダービーの凄さを肌で感じてはないんですが、浦和には特に負けられないというか、さいたま市だからこそ負けちゃいけないんだっていう意地のぶつかり合いのイメージはあります。
—では実際に経験した斉藤ヘッドコーチ、当時のダービーの様子を教えてください。
斉藤:僕らの方がJリーグ参戦は浦和よりもあとでしたし、浦和は日本を代表するビッグクラブ。最初は同じ街にあるビッグクラブに対して一矢報いたいと言う気持ちがありましたね。とにかくすごい盛りあがりでした。
—ここまでの戦績は大宮の9勝12敗7分。これすごい数字ですよね。
斉藤:最終の順位で言ったら、その戦績ってあり得ない(苦笑)
久保:私は小学校入る前に大宮に来たので小学生の頃、よくNACK5スタジアム大宮に行ってました。ダービーのときは早くチケット取らないと! (笑)って近所の人たちと話をしていた思い出があります。ほぼ毎回満員でしたよね?
—軒並み満員でしたね。選手お二人は古巣でもありますよね。
大熊:去年も浦和戦の前にケガをして、今年のカップ戦も全然出れなくて、万全の状態で出れることが大宮に来てからまだないんです。個人的には浦和に対して負けたくないっていう気持ちは一番持ってると思います。点を決めて勝ちたい! って気持ちが・・・あまり見た目ではわからないかもしれないんですけど(苦笑)
久保:私はケガでまだピッチに立てないですけど、浦和は中学・高校と6年間育ててもらったチームですし、一緒にやっていた選手もいっぱいいてリスペクトの気持ちがありますが、だからこそ大宮のエンブレムを背負って戦えるって幸せなことだと思うんです。VENTUSができるまで、大宮に女子チームができるなんて考えてもいなかったので・・・
斉藤:僕も女子チームができるなんて想像してなかったし、そこに携わることになるとは思ってもいなかったですね。でも当時見に来てくれてた子たちがサッカーしてくれて、またNACK5スタジアム大宮のピッチに立つって・・・感慨深いですね。
—コーチという立場に立ったいま、どういう気持ちで選手を送り出したいですか?
斉藤:今年はカップ戦で一度対戦したので、そのときに選手みんなには僕が思うダービーは絶対に負けられないものなんだって送り出したんですけど、伝わってたかな(笑)?
大熊・久保:伝わってます!
斉藤:よかった(笑)ウォーミングアップのときから体の動きとかキレとか、気迫みたいなものは感じてました。いまでも入り方はあの試合が一番よかったし、選手の意気込みは違ってましたね。
—また声出し応援が加わるときっと雰囲気も違いますよね。あの試合は悔しい思いがあったと思います。
久保:大宮の方が戦えてたし、みんなの気持ちも伝わってきた。結果も最終的には引分けでしたけど、崩して点を取れてたからシンプルにウチのチームすごいと思った。実際に自分がピッチに立ったときに戦えるかとかそういう風にも見ることができて刺激的な試合でした。
大熊:途中から出場して、流れは浦和の方にあったので流れを変えなきゃいけないと思って入ったんですけど、得点につなげられなくて・・・裏返せなかったですね。
—そんな浦和のケアすべきポイントと、そこに対抗するVENTUSの強みを教えてください。
大熊:浦和は個々が上手くて、ボールをつなぐし、シュート意識も高いですけど、自分たちも蹴るばっかりにならず対抗できるパスをつないで、時にはカウンターで攻撃したい。スキは絶対にありますから。
久保:浦和は一緒にプレーしてる期間が長いから阿吽の呼吸があって、サッカーが共有されてる。でもその一方で緩くなったり波があったりもするから、VENTUSは勢いを持ってビビらず、リスペクトしすぎず、飲み込むくらいのつもりで行けば十分戦えるはずです。
斉藤:選手個々の能力を足し算していったら、劣ってしまうところもあると思いますが、サッカーはチームスポーツ。組織力で上回りたいですね。
—そういう点では男子のときと似通ってますね。
斉藤:そう思います。僕らが対戦したときは浦和がアジアチャンピオンになってる年だったし、FWにブラジル代表がいて、日本人も代表選手ばかりで・・・ウチは一人も代表選手がいないと言う状況でした。それでもさっきの数字が出ているのは、組織力と気持ちのところで引っ張られてた部分も多分にありましたね。
久保:サッカーのことは小さかったのでそこまでわからなかったですけど、当時はとにかくサポーターさんたちもすごいですし、それによって選手のボルテージが上がってるってことは子どもながらにすごく感じてました。私は大宮出身という土地柄の想いもあるし、WEリーグのダービーは自分たちがこれから作り上げないといけない。すぐには無理だとしてもいずれは子どもの頃に感じた会場のボルテージが何度も何度も上がるダービーになるといいなって思います。
大熊:それに、浦和とは1勝1敗1分の五分五分ですよね。最初に大量失点で負けてるから、次は僅差でとか、そういう試合を繰り返してさいたまダービーというものを勝負に対してこだわっていかないといけない戦いにしていきたいですよね。
斉藤:選手にはもちろん負けたくないとか勝ちたいという気持ちを持ってもらいたいですが、男子のような物々しい感じというよりはもう少しゆったりとした気持ちで、この街の人たちが両チームの試合を観て楽しむことがWEリーグの良さでもあるのかなとも思います。
—そんなさいたまダービーにこれを持って臨みたいというものは?
久保:これ言ったもん勝ちですよね(笑)“リスペクト”です! 相手をリスペクトし過ぎないこと。自分たちも同じくらいできるんだっていう自信、自分たちの力をリスペクトする気持ちは持っていたいです。とにかくチーム一丸となって勝つことに集中する姿を見せるので、その熱い気持ちが伝わるように、それを一緒に乗せられる試合にしたいので熱く熱く戦いましょう!
大熊:“目の前の相手に負けない!”。バチバチやり合うからこそ見てる人も面白いとか応援したい気持ちが出てくると思うので、それを結果につなげたいです。自分で点を決めて勝たせられるようにしますので応援よろしくお願いします!
斉藤:ここに足せるものはもうないです(笑)意地=気持ちで戦ってほしい。僕は今回ベンチに入るので、現役時代と同じ目線で選手と戦いますのでぜひ応援に来てください。