【VENTUS PRESS】鮫島彩
ついに開幕したWEリーグ。デジタルバモスでは毎月1回程度、大宮アルディージャVENTUSの情報をお届けします。



Vol.007 文・写真=早草 紀子

悔しさの残る開幕戦を経ても、
鮫島彩の変わらぬ思い

 
 開幕戦のピッチでのこと——早い段階での連続失点に鮫島彩が坂井優紀に声をかける。すぐさまその周りに選手たちが集まった。「声で引っ張るタイプではない」と鮫島本人は語るが、周りからの信頼は絶大だ。古巣であるINAC神戸レオネッサとの開幕戦(0-5)の悔しさは察するに余りある。それでも下を向く必要はないと、まっすぐに前を見据える彼女の声をお届けする。

意気消沈する必要はない

——2月に大宮アルディージャVENTUSの活動がスタートし、一つの指標となったのが4月から5月にかけて行われたプレシーズンマッチ(2勝2敗)でした。初めてWEリーグを戦うチームと試合をしましたが、感触はどうでした?
「やはり厳しいという思いが大きかったですね。他のチームもまだ仕上がってはいなかったけれど、VENTUSもいろいろな課題が出てきました。開幕前の段階だったので、とらえようによっては良くも取れるけれど、自分たちのやることがまだ定まってないなとも感じました」

——そこから開幕まで約4カ月。最も成長を感じる部分は?
「今まさに『成長した!』と言えるように頑張っているところです(苦笑)。もともと、初顔合わせの頃は違うカテゴリーでプレーしていた選手や、出場機会を求めてVENTUSに勝負をかけて移籍してきた選手……いろいろな強い想いを持った選手がいました。自分たちはベレーザ(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)や浦和(三菱重工浦和レッズレディース)、INAC(INAC神戸レオネッサ)といった上位チームのレベルにはまだ到底達していない認識はあります。これは事実で、トップレベルのチームと当たるときは、判断のスピード、球際の強さ、切り替えの速さ、それら全てを上げていかないといけない。個やグループ戦術の質は少しでも上げていきたいという思いでやってきました。少しずつですが、成長はしてきていると思います」

——開幕戦では古巣相手に大量失点を喫しました。
「大量失点はしてしまいましたが、今の自分たちにできることは精一杯やった結果でもあります。試合前にロッカールームで緊張している選手もいたのですが、最初にシュートを打ったのはVENTUSですし、試合の入り方は悪くなかったのですが、失点が早過ぎましたね」




——ホーム開幕戦はすぐにやってきます。自信を失い過ぎてもダメですよね。
「本当にそう思います。プロのリーグなので当然結果を求められますが、これで意気消沈する必要はないと、みんな気持ちを奮い立たせています。オフ明けの練習でも切り替えていて、よく声が出ていました」

——開幕戦でのダメージはなんとか抑え込めている印象ですか?
「そうであればいいのですが。打たれ慣れていないことへの怖さというよりも、失点に免疫が付いてしまうのが怖いです。実は開幕前の練習試合でベレーザに大敗をしていて、一つひとつ失点の場面を見返して修正点も見出したのですが、開幕戦でも続いてしまっているので、連続失点のところは大きな課題です」

——守備を担う側としてはより責任を感じてしまいますか?
「はい。失点って重いんですよ。本当にずっと頭の中で回るんです。しかし、これだけ失点が続くとそれに慣れてしまうのが怖い。1点を取るのがどれだけ大変かを分かっているからこそ、簡単に失点してはいけないことも身に染みているのですが……。ここからもう一度チームとしての守備を見直して行きます。まだ1試合終わっただけ。受け止める必要はあるけれど、落ち込む必要はないと思っています」


チームの強みである推進力を生かしたい

——ホーム開幕戦はすぐです。ホームのNACK5スタジアム大宮の雰囲気は、プレシーズンマッチでも体感したと思いますが、いかがでしたか?
「本当にすごくたくさんの人が来てくれましたよね。大宮アルディージャのファン・サポーターの方たちが相当数来てくれたということですよね。それが本当に心強いし、プレシーズンマッチなのにすでに横断幕ができていて、それも自分たちにはありがたいことでした。加えて、NACK5スタジアム大宮はピッチとスタンドの距離が近いので、みんなの表情もよく見えるし、雰囲気がすごく伝わってくるスタジアムだと思います」

——先日はJリーグのホームゲームで挨拶をした後、ピッチイベントにも参加していましたね。
「短い時間でしたけど、子どもたちや親御さんと一緒にサッカーができて、本当に楽しかったです。WEリーグにはWE ACTION DAY(※)が設定されているのですが、選手からも子どもたちへのアプローチは積極的にしたいという意見が出ていて、WE ACTION DAYをきっかけに小学校訪問など、いろいろな活動を始めたいと話しています。あと最近、清掃活動をする機会があったのですが、大宮の街がきれいだということに気づきました。あれだけの人が行きかうのに、意識付けがしっかりと根付いている街なんだなと感じました」
(※「WE ACTIONDAY」は、WEリーグの理念「女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する」を体現するために設けられた。各節ごとに試合のない1チームが担当し、アクションを起こす)

——コロナ禍が収まったらいろいろなイベントが行われそうですね。さて、いよいよホーム開幕戦です。どのようなプレーを見せたいですか?
「このチームの強みとして感じるのは、推進力のある選手が多いことです。器用ではないのですが、とにかく前に行く。マル(山崎円美)のように、かき回す元気なタイプ、歩夢(仲田)のように“ゴリゴリ”行ってパワフルなシュート打つタイプ、(髙橋)みゆきちゃんも早いタイミングでパンチ力のあるシュートを打てたり、イノ(井上綾香)はスピードがあります。そうした前への推進力を惜しみなく生かしたい。どのような戦い方が提示されようとも、この意識は失いたくないです」

——鮫島選手が考える、アルビレックス新潟レディース戦のポイントになるのは、ズバリどこでしょう?
「それはもう……守備! 自分たちの目下の課題は守備の改善、向上です。極論で言えば、失点しなければ負けません。しかし、それは1週間でどうにかなることでもないので、シーズンを通して成長させていきたいです。VENTUSの選手は本当に全力でハードワークをする選手たちばかりなんです。まだまだ足りないところばかりですが、私たちのハードワークを貫くプレーをぜひ見に来てください」


早草 紀子 (はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

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