【VENTUS PRESS】乗松瑠華

WEリーグ開幕直前!今シーズン、新キャプテンに就いた乗松瑠華 選手の登場です。

Vol.19 文・写真=早草 紀子

「誰よりも熱いプレーで声を出し続けます!」  (乗松瑠華)

 
—なでしこジャパンの国際親善試合、お疲れさまでした。3バックの新システムの手応えは?
「最近だとWEリーグのチームでも3バックを使ってるところもあるし、太さん(池田監督)のなかでもそこまで新しいことにトライする感覚ではなさそうで、トライしてみよう! という感じでした。守備はけっこう細かく、サイドハーフが高いところでプレスをかけに行くタイミングをみんなで話し合ったりして、結果的に2試合を失点ゼロで抑えられたのはよかったです」

—代表活動は乗松選手にとって環境の変化の一つだと思います。
「代表活動では毎回自分ができないことが明確になるんです。それをチームに持って帰ってきて意識してトレーニングをしていく中で、また代表に行ったときに前よりも出来てる感覚があったり、環境が変わることで自分の成長を感じられます」

—特に成長を感じるところは?
「まだまだなんですけど、寄せるところですかね。日本といえばチーム力、組織力・・・いままでそこを大事にしてきました。でも、太さんは個々の部分も求めていて、球際の強さや、フィジカル的に劣っていてもそこで一歩詰めるとか、そういうところはすごく要求されています。最初は無理やり奪いに行ってる分、エラーも出てたんですけど、それがリーグ戦で出ちゃってるところもあったんです。自分の間合いを変えると、どこまで詰めていいのか迷いも出て、前に行けないことも多かった。でも自分の間合いがわかってきて、まだまだ詰め切れるところもありますが、そこは成長した部分です」

—代表のDFラインには熊谷紗季 選手(FCバイエルン・ミュンヘン)をはじめ、海外でプレーする選手も多いですよね。
「特に紗季さんは、FWに大きくて速い選手がいても、メンタル的に余裕がある。自分だと奪いどころで前からプレスをかけたとき、相手が速いから後ろのスペースをケアしておこうって思う。そこに余裕がないと思い切って前に出ていけないんです。普通に当たり合っても負けない球際の強さと予測が優れてるからこそ、前に出て勝てる、紗季さんはそこがすごいんです」

—同じピッチに立っていて、彼女の“余裕”を肌で感じることがあるんですね。
「感じます! 4バックで自分が入って前の段差作って潰しにいくときに、1対1になるじゃないですか。日本は前からプレスをかけて両サイドバックも高い位置にいるときに紗季さんから『行っていいよ!』って声がかかるんです。自分だったら怖さがあるからそのタイミングで声は出せないかもしれません」

—いろんな経験を重ねてきて、いよいよワールドカップまで一年です。やっぱり意識はしますか?
「意識は・・・代表に呼ばれるようになった頃の方があったと思います。意識するところもあるけれど、いまは今日のトレーニングを全力でやる、100%出し切れるかっていうのを大事にしています。リーグ戦が始まったらその一戦に集中するっていう考え方が今の自分には合ってるので、先のことはあまり考えしすぎないようにしてます。といっても、そういうところ今の自分にできてないなって気づいたのは最近なんですけど(苦笑)」

—そういう考えに切り替わって迎えるWEリーグを迎える訳ですね。今シーズンのことに入る前に、昨シーズンをどう振り返りますか?
「失点が多かった・・・INAC神戸レオネッサ戦は特に。前後期の2試合で合計10失点ですから・・・自分たちで崩れてしまいました。それこそ個人的には周りに合わせるばかりで、もっと強みを出せるように出来たんじゃないかという悔いが残ったシーズンでした」

I神戸との最終節。ピッチから降りてきたとき、珍しく号泣していました。
「何もできなかったので・・・昨シーズンは個人としても波がありました。ほとんどの試合で100%出せた実感がなくて、プレシーズンマッチのときの方が自信持ってプレー出来ていました。『前線は好きにやってくれていいよ、後ろは守るから』みたいな思い切りがあったんです。リーグ戦ではその思い切りがなくなっていって、だんだん小さくなっていく自分が悔しかったです」

—ああいう感情を出せるのは貴重な存在だと有吉佐織 選手は言ってました。あのときも「胸張って挨拶に行こう」と声をかけられてましたね。そんな有吉選手からキャプテンを受け継ぎました。
「アリさんから冗談っぽく『来年はキャプテンよろしく~』とは言われていたんです。大変な仕事も多いし、みんなの前に一歩出てしゃべる機会も増えるじゃないですか。そういうのは得意じゃなかったんですけど、それでもいい経験になるとプラスに捉えてたので楽しみでした」

—どんなところを引き継いで、どんなキャプテンになろうと?
「アリさんはいろんな選手と話すし、常に声を出し続けてます。守備の時間が長くて声も出せないくらい苦しくて、自分のことで精一杯! ってときにアリさんはいつも声を出してることが去年は何回もあったんですよ。私はCBだし、自分がそれをやらなきゃいけないなって。そこは引き継いで、そして誰よりも熱く! プレーします!

—乗松選手らしくていいですね。
「いいプレーをしたとき『ナイス』っていうその一言だけでモチベーションが上がる。チームの雰囲気作りというのも自分にもっと出来るんじゃないかなって思ってます」

—今シーズンから斉藤雅人 ヘッドコーチが加わり、新しいチャレンジをしています。
「カップ戦のときには、みんなマサさんが目指すサッカーを理解して、やるべきことはハッキリしていました。でもそのなかでもみんなが自分の良さを出せてたかっていうとまだまだ足りない。チームのやり方があるなかで、みんなが自分の良さを思い切ってやっていいと思います」

—カップ戦を終えてリーグ戦ではまた進化したスタイルを見せてくれると思います。ズバリ、今シーズンのVENTUSの見どころは?
「ゴールに迫る回数! 見ていて、より攻撃が楽しいんじゃないかと思います。VENTUSはパワフルな選手が多いじゃないですか。昨シーズンはそこ頼みになっちゃってました。今シーズンはボールを持ってる選手の周りにいい距離感の選手がいて、チームで動かしながらパワフルさが見れる。カップ戦でもそういうところは出せたと思うんですけど、もっともっと増やしていきたいです」

—そのビルドアップのポイントになるのは?
「ポジショニングについてはコーチ陣からもすごく言われてます。その中で相手を見て判断することと優先順位。つなぐことが目的じゃなくて、ゴールするための手段だということは大事にしてます」

—ボールが回るようになると陥りがちな・・・。推進力はVENTUSの強みでもありますからそこは失いたくないですしね。
「そうなんです。推進力があるからこそ、ボールを出せるスペースもあると思うし、相手も背後を警戒してくる分、(手前の)スペースに余裕もあると思うので、そこは上手く使い分けたいです」

—セットプレーも武器にしたいところ。そこの工夫もカップ戦では見られました。昨シーズンもチャンスはありましたが、確か乗松選手は・・・
「ノーゴールです(苦笑)。セットプレーの練習はけっこうしっかりしてます。入る位置、タイミングとか要求されることばかり気にするんじゃなくて、個々での駆け引きや、最後は入るところじゃなくてボールのところに行く強い気持ちがあっていい。もっともっと改善できるはずです」

—乗松選手自身がズドン! と決める瞬間を見たいです。
「今シーズンは本当に決めたいです! ゴールに迫る回数が増えた分CKも多くなると思うので、やっぱりセットプレーで決められるチームって強いですよね」

—そうだ! 伝えたいことがあったのでした。杉澤海星 選手が出場したFIFA U-20女子ワールドカップの中継で仲田歩夢 選手と一緒に解説してましたよね。最初はどうなることかと思いましたが、2試合目はものすごく上達してませんでしたか?
「そうなんですよ! なんか緊張しいだから、最初ほんとにどう入ればいいのか、どこまで言っていいのかがわからなかったんです。しかもライブですし。でも試合見ながら話していくのは楽しかったです。むしろ勉強になりました。言葉にするって難しいじゃないですか。一瞬で伝えないといけない。でも、試合中もやらなきゃいけないことだし、CBはその力が大切なので」

—まさか解説経験がCBに生きるとは(笑)いい気分展開にもなったみたいですね。通常はどんなことで気分転換を図ってるんですか?
「美味しいお店を探して、ご飯を食べに行きます。先日は大宮駅近くの噂のハンバーグ屋さんに行きました!

—さて、いよいよ開幕です。カードは昨シーズン同様INACです。大量失点した相手ではありますが、いい指標になる相手でもあります。
「みんな自信もついてきていて、その自信が持続するかどうかは開幕戦次第だと思ってます。ビルドアップは自分からスタートすることが多いので、そこでいかに余裕を引き出せるか、自信もって回せるというのをプレーで見せて、チームに自信を与えたいです。個人的には失点は10点台に抑えたいと思っているので開幕戦は無失点で! 昨シーズンよりもワクワクするような攻撃の見どころがたくさんあるのでそれを見せられるように頑張ります」

—開幕戦の翌週にはWE ACTION DAY2022大宮アルディージャファンフェスティバルがあります。3年ぶりの開催となるファンフェスティバルは、VENTUSは初めての参加、男子との合同開催です。
VENTUSが加わって、新しい形のいままでにない大宮アルディージャのファンフェスティバルになると思うので、そこでVENTUSの魅力も知っていただけたらと思います。自分たちも存分に楽しみたいと思います。みなさんもお楽しみに!


早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

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