高円宮妃杯 JFA第27回 全日本U-15女子サッカー選手権大会 レポート

大宮アルディージャVENTUS U15が初出場となる、高円宮妃杯 JFA第27回 全日本U-15女子サッカー選手権大会で快進撃を見せています。

12月10日(土)の一回戦の相手は富山レディースサッカークラブ。VENTUS U15は、緊張のためか、動きが硬く立ち上がりから狙う展開に持ち込むことができません。それでも18分に、練習を重ねてきたセットプレーからキャプテンの茂木未宙 選手が押し込んで先制するとようやくゲームを支配する余裕が出てきました。ボールホルダーにしっかりとプレスをかけ、奪取すれば素早い切り替えで前線へボールを運びます。その中で生まれた追加点はまたしてもセットプレーから。渡辺夕那 選手の絶妙なCKを再び茂木選手が決めました。「どちらの得点もいいボールを蹴ってくれると信じて飛び込みました」とは2得点を挙げた茂木選手。

全員で奪った前半のCKは実に11本。左右すべてのキックを担った渡辺選手のキックの精度は高く、相手にとって脅威となっていました。53分には、飯田かれん 選手がGKの位置をしっかりと見極めた上での強烈なミドルシュートを決めその差を3点に広げます。その3分後に1点を返されますが、67分に福島花菜 選手がさらにゴールを加え、4-1の快勝で初戦を突破しました。

翌日に行われた2回戦では、常葉大学附属橘中学校女子サッカー部を相手に茂木の2ゴールで完封勝利を収め、準々決勝へコマを進めました。

準々決勝は彼女たちにとって大きな意味を持ちます。大会前に彼女たちが掲げた目標はベスト4。ベスト4以降は開催地が東京に移ります。日頃の感謝を恩返しするプレーを関東で披露するためにも突破しなければならない壁です。相手はセレッソ大阪堺ガールズU-15。育成年代の取り組みに高い評価を得ている強豪です。しかし劣勢を跳ね返し、3戦連続となる茂木のゴールを守り抜き、1-0で撃破。目標のベスト4進出を決めました。

VENTUS U15が立ち上がったのは昨年のこと。VENTUSの下部組織として活動をスタートさせました。今年4月から就任した小林凜 監督は女子サッカーの指導は初めての経験で戸惑うことも多かったと振り返ります。「身体的にも女子は浮き沈みが激しい面もあり、メンタル面でもサッカー以外のことが影響したりすることもあって、どう向き合っていこうかと探る日々でした。僕自身、選手のいいところを伸ばすような声掛けをしていくスタイルなので、合っているのかもしれません」(小林監督)。

試合中には緊張する選手たちのプレー一つひとつにポジティブな声を送り続け、落ち着かせる小林監督の姿を何度も目にします。「男子ではやる気を出させるためにパフォーマンス的に怒ることもあったんです。女子で一度やってみたんですが・・・ちょっと違いました(苦笑)」。そんな小林監督が選手に求めるのは主体性。「自分判断して行動する。そしてその行動に責任を持つ——とても大事なことです」(小林監督)。就任当初は小林監督の指示待ちの状況もあったといいますが、今では最終ライン、中盤といろんな場所から指示や鼓舞の声が飛び交っています。

VENTUSトップチームの試合もよく観るというキャプテンの茂木選手はトップチームの“ボール回し”に注目しているのだとか。「あんな風に私たちもできたらいいなって思います。強度の高い相手になるとどうしてもそれが難しくなってしまうので・・・」(茂木)。はにかみながら丁寧に言葉を選んでくれる茂木選手もひとたびピッチに立つと、纏う空気が一変します。これも魅力の一つでしょう。

VENTUS U15の特長は茂木選手の得点力だけではありません。先に挙げたように渡辺選手の精度の高いCK、そして選手個々のキック力も頼もしい限りです。最終ラインからの大きな展開に、遠い位置から誰もが枠を狙えるフィニッシュに、あらゆる場面で小林監督が鍛えてきた“キック力”が光ります。

ベスト4進出という目標を達成したVENTUS U15はここからその先に広がる新たな一歩への挑戦が始まります。準決勝の相手は日テレ・東京ヴェルディメニーナを6-0で下したJFAアカデミー福島。前回大会決勝でメニーナに競り負けた悔しさを晴らした形になったJFAアカデミーは間違いなく優勝候補筆頭と言えるでしょう。どこまで走り抜けることができるか、VENTUS U15の挑戦をぜひ応援してください。準決勝は12月25日(日)、AGFフィールドで13時30分にキックオフを迎えます。


文・写真=早草 紀子


早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

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