盛り上がったW杯を語る!

2022年を締めくくるにふさわしい盛り上がりを見せたW杯。4年に一度のサッカーの祭典は世界中を熱くさせました。もちろんVENTUSにもその波は訪れていました。今回は普段はサッカーを見ないことで有名? な鮫島彩 選手と、永遠のサッカー小僧・大野忍 コーチがW杯を語ってくれました。2011年のワールドカップ優勝時の記憶も蘇ったようで、二人ならではの視点で語られるW杯をお楽しみください。

—W杯は盛り上がりましたね。見てました?
大野 観てましたよ! 練習が早いから運転での移動もあって、命がけでした(笑)
鮫島 私も珍しく、いままでで一番ちゃんと見ました(笑)

—日本戦は国内でのW杯熱をヒートアップさせましたよね。
大野 ドイツ戦に勝ったときはビビった! しかも浅野(拓磨)くんのニアにぶち込んだゴールは「そんなことできるの!」って驚きました。
鮫島 しかもマヌエル・ノイアーを相手に。

—一番印象に残ってる試合は?
大野 それだとやっぱり決勝かな。
鮫島 私も。なんか・・・すっごい疲れた(笑)
大野 アルゼンチンもフランスも個の選手は好きだけど、チームとしてちゃんと初めて見たから、本当に楽しかったし、衝撃だった。オリヴィエ・ジルーでさえ、前半で代わるんだ! とか・・・
鮫島 どうするんだ? って思ったよね。
大野 確かにフランスのシュートゼロはきついし、何かしないといけないっていう一種の賭けだったのかもしれないけど、実際にフランスのディディエ・デシャン監督のあの采配はビックリした。前半残り5分で交代させたでしょ? ハマるかハマらないかをその5分でどういう現象が起きるのか見極めて判断するんだって。そこで行けそうなら後半そのまま、ダメなら中で配置を変える。
鮫島 そういうことか! それデシャン監督に聞いたの?
大野 そんな訳ない(笑) 岡田武史さんが言ってた。そのカードの切り方をW杯決勝でできるか、それが決断なんだろうね。でもアントワーヌ・グリーズマンはもっと見たかったな~
鮫島 確かに。でもグリーズマンは髪長い方が好き!
大野 え、あれは短い方がいいんだよ。
鮫島 絶対長くて結んでる方がいい~
大野 あれは断然短いのが正解だって!

—それは好みの問題! まあ・・・リオネル・メッシの髭はない方がいいと思いますけど。
大野・鮫島 絶対そう思う!!

—大野コーチは北京五輪でメッシと一緒の空間にいることに大興奮していたほどのメッシファンですが、今大会のメッシはどうでした?
大野 そりゃ35歳ですから衰えはありましたよ? フランスとかを相手にしてるんだからもちろん簡単ではないけど、キレッキレのメッシだったらもっと入れ替えるだろうなと思う場面もあった。欲しい欲しい感はあんまりなかったよね。W杯を獲るために徹してた感じがあったし、メッシにカップを掲げてほしかったからアルゼンチンの優勝で終わってよかった・・・でもさ、サメちゃん! この決勝は2011年の自分たちのときと重なった部分なかった?
鮫島 あった! 特にPKに入るときとか。延長戦でアメリカが勝ち越したとき、絶対アメリカは勝ったと思っただろうし。そういうのいろいろ蘇ってきた。
大野 ウチはもうPK前に交代してたから完全に応援体制で、「お前たち次第だぞ~」って気が楽だったな(笑) ってかメダル見た? ウチらのときより大きくなってたでしょ?
鮫島 そうなの?気づかなかった。でも確かに小さかったよね。「『W杯』だから、メダルはオマケなんだな」って思いながらメダルもらった記憶がある(笑)
大野 スペインが優勝したときのメダルはウチらと同じ感じだったから、子どもたちに見せるときも「アンドレス・イニエスタと同じメダルだよ」って言ってたの。その方が子どもたちには伝わるから。これじゃ「メッシと一緒だよ」って自慢できない・・・実は“カップ”の印象はあまり残ってないし。
鮫島 あんなに触ってたのに? うそでしょー?

—メッシの他に印象に残った選手は?
鮫島 個の選手っていうよりは同じポジションのサイドバックはやっぱり気になった。それで言うと、キリアン・エムバぺ(フランス)が独走してて、カイル・ウォーカー(イングランド)とマッチアップしたときとか。サイドバックってだいたいハメられるポジションだから、どう打開するんだろう? とか。こんな高いレベルでもハマるんだなって思って・・・だから最初のポジショニングとか、そうさせる流れってすごく大事なんだなって改めて思った。戦術的なことで言ったらそれぞれたくさんあるけど・・・純粋にアルゼンチンのメッシ以外の選手のハードワークを見てたら、もっとウチらもやらなきゃなって思わされた。全然レベルは違うけど、ああいうハードワークをやれるチームになりたいな。

—メッシも最後守備してて震えましたけど、トップオブトップの選手たちが全力で守備してる姿って泣きそうになります。
大野 ホントにそう! だからイノ(井上綾香)はいまの数百倍走らないと(笑)。世界にはプレミアとかラ・リーガとかいろいろあって、W杯はその魅力の全部が詰まってる。ポゼッションサッカー好きな人多いけど、でもそういうチームって意外と早く負けて残ってなかったりするし。
鮫島 確かにそれ思った。
大野 絶対“個”は大事で、それが組織につながってくる。そういうのがこのW杯で見えた。女子は特に丁寧につなごうとするでしょ。まあ2択なんだけど、前に蹴ることも全然OK。アルゼンチンだってそうだったじゃないですか。だから選手にも伝えやすいし、こっち(指導者)としては今後やりやすいかな(笑)
鮫島 完全に指導者目線!
大野 もちろんメッシとかネイマールとかのプレーは「うっわ、マネしたい!」ってリプレーするよ? 若い選手でもいたでしょ、4年後どうなってるんだろ? っていう選手。そういう選手のプレーはガチでリプレーしまくる。だって教えたいもん。うますぎて、あのゴール後のドヤ顔とかあまり好きじゃないエムバぺとか(笑)、あれはVENTUSのサイドに取り入れたい!
鮫島 エムバぺのプレー、VENTUSでできるの!?
大野 だってあれ、駆け引きだから。クマ(大熊良奈)、行けるでしょ。スプリント系で一歩のグッと入る感じは教え方次第であの路線行けるんじゃないかな。

—ぜひお願いします! ・・・2年ぐらい待てばいいですかね?
大野 2年・・・やりましょう!
鮫島 見た~い!

—左サイドはエムバぺを目標にするとして・・・右サイドでは気になる選手いました?
大野 ・・・(資料を探る)いたいた! モロッコのジ・・・ジエ・・・? 絶対読み方違うけど(笑)、仕掛けるタイプじゃなくてスルーパス出す感じで効いてた。
鮫島 (資料見て)なにこれ! めっちゃカタカナ難しい(苦笑)

—読み方はそれぞれ国によって異なるみたいですが、チェルシーでの最新情報は「ハキム・ジエシュ」らしいです。
大野 それ! でも個人的に気に入ってるのはニコラス・オタメンディ(アルゼンチン)!!
鮫島 ただ言いたいだけでしょ(笑)
大野 それもあるけど、あれだけ守って守ってってできるのはすごいよ、やっぱり。
鮫島 私はブラジルの得点シーンが印象に残ってるな~。ゴール前で3人目とか、複数人が関わる形っていうのがウチはあまりないから。いまの時点で自分たちが獲ってるシーンもいいんだけど、もっともっと工夫できたらなって思ってるんです。いま、チョンってボールを出したら3人目であの人使えるのにっていうジレンマもあったりするから。
大野 そういうところでの遊び心がないからなー、ウチは。
鮫島 ああいう攻撃の仕方、超楽しそう! 守備側は視点を変えられまくりで気づいたら入れられてるっていう・・・でも思ったけど、日本の最初守り固めて、後半ガラッと変わるっていう形は、自分たちよりも実力のあるチームと戦うときはアレだよね。2011年のときの私たちはダークホースとして一気に駆け上がったけど、翌年のロンドンオリンピックで銀メダル獲ったときは、フランスやブラジルにずっとボール回しみたいにされてて・・・
大野 しかもずっと鬼! っていうツラさね(笑)
鮫島 取れない取れない。でも、終わってみればワンチャンスをモノにして勝ってた。

—そういう戦い方が市民権を得ましたよね。
大野 だから今回、日本が認められたっていうのもあるよね。ポゼッションしてるからいい訳じゃなくて、“勝つ”ってことが評価されてる。だから日本の評価が高い。いや~ここまで話しててやっぱりワールドカップのすごさはサメちゃんがW杯を語れるほど引きがあるってことだよ! でも普段見てないから選手の名前とかうろ覚えでちょっと違ってたり(笑)。キング(有吉佐織)と(上辻)佑実は優しいからその都度訂正してあげてるっていうその状況が面白い。

—難しい名前多いから8割合ってるなら上出来です(笑)
鮫島 でしょ? こんなに人を巻き込めるW杯ってホントすごいと思った!
大野 でもアルゼンチンの優勝見て・・・メッシが肩車されてたでしょ?

—36年前にディエゴ・マラドーナが導いた優勝時、同じシーンがあったんですよね。
大野 そういうことか! ウチらもああやって喜べばよかったな~って思った。

—澤(穂希)さんを担ぎたかったってこと?
大野 いや、自分自分! ホマレちゃん担いだら危ないでしょ(笑)
鮫島 絶対落とせない(笑)

—ではVENTUSが初優勝した暁には、ぜひ選手のみんなに担いでもらってください!

文・写真=早草 紀子


早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

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