【VENTUS PRESS】髙橋美夕紀 後編

4ゴール——昨シーズンのこの数字に満足はしていないと語る髙橋美夕紀 選手。今シーズンは自他ともにコンディションが良く、ゴールの予感は高まる一方です。後編では髙橋選手のサッカー感に触れるお話をお届けします。


Vol.25 文・写真=早草 紀子

「満足してしまうので数字は定めません」(髙橋美夕紀)

—プロリーグ(WEリーグ)ができるということを、当時はどう捉えていましたか?
「いままでは仕事しながらサッカーをするのが当たり前だったのがサッカーでお金もらえるのってすごいなって思いました。いままでそういうクラブはINAC神戸レオネッサくらいだったじゃないですか。でも正直、自分には縁のない話だとも感じてました。私はニッパツ横浜FCシーガルスでプレーしてましたし、なでしこリーグから上がるのは狭き門です。やっぱりWEリーグは遠い存在でした」

—ではオファーが届いたときは?
「ビックリしましたよ! 本当に私ですか? って。どこが評価されたのか・・・ゴールはそれほど決めてなかったんですけど、前でおさめるところ、タメを作るところを求められてたような()。他のチームから先にオファーをいただいていたのですが、その後VENTUSが興味を持ってくれてるという話を聞いて・・・けっこう迷いました。でもここでWEリーグに行かなかったら後悔するだろうなと。VENTUSには元チームメイトの洸 (長嶋)やモチ(望月ありさ)がいたことはすでにシーズンが始まっていた時期での移籍を考えると大きかった。あとはテレビで見てたサメさん(鮫島彩)やアリさん(有吉佐織)といった選手がいるそのなかでプレーしてみたいっていうのもありました」

—2月にチームが始動していて、7月の入団でしたもんね。そんなことを感じさせず、記念すべきチーム初ゴールをあげました。ホッとした部分もありました?
「そうですね。しかも相手に当たって入ったので(苦笑)、あまりパッとしない感じではあったんですが、1点は1点なのでゴールは素直に嬉しかったです」

—昨シーズンは4ゴール。井上綾香 選手に次ぐ数字でした。
「納得できる数字ではありませんよね。もっと獲らないといけないし、シュート打つ場面はあったし、それが惜しいで終わらせてしまってはいけない。前半戦で1点止まりだったっていうのも少なすぎる。コンスタントにゴールを決められてれば、勝てる試合もあったと思うし、引き分けの試合が多かったからなおさらそう感じます。決めるべきところで決めないとこうなるんだっていうのを痛感したシーズンでした」

—なでしこリーグとの違いを感じるところは?
「個々が強いのでシュートまで持ち込ませてもらえない。シュートを一本も打てない試合もありましたから。それってFWとしては致命的なこと。自分は足元の技術がある訳ではないし、スピードがある訳でもないので、本当にシュートは人が来る前に打っちゃえ! って感じなのでガッツリ1対1っていうよりはそうなる前に打ちたいんです。」

—そういう意識があるから、中距離シュートを打てるんですね。
「それもあるかもしれません。自分でドリブルしていくよりは、距離があってもGKの位置見て打った方が入るって思います」

—ミドルの印象は強いですが、昔からですか?
「もともとキック力があったのと、両足蹴れてたから・・・でも左足の練習をしたのは高校生くらいからなんです。左サイドハーフをすることになったとき、クロスが全然蹴れなかったんです。当時の先輩がすごく怖くて()・・・必死に練習したら、右足を上回るくらい蹴れるようになりました。あのとき、がんばってよかったです()

—今シーズンはコンディションが良さそうですね。
「はい、いまのところ、ですけど。特に筋力トレーニングを増やしたとかではなくて、しいて言えば摂取するものを変えたことがよかったんだと思ってます。これまでも食事は気にしてたんですけど、どうしてもそれだけじゃ補えないものが増えてきて、29歳という年齢的にも。プラスアルファしないといけないと感じて、いろいろ調べてマグネシウムとかゲルマニウムとかモリンガとか・・・マッチしたものを摂るようにしてます」

—でもそれを摂取し始めて、変化を感じるということですよね?
「コンディションが良くなったことでいままで90分走り切れなくて交代が多かったんですけど、今シーズンは足がつらずに走れるようになったのは感じます。走れる分、プレスにも行けるし、やりたくてもできなかった局面を作れるようになった。昨シーズンやりたかったこと、頭のなかでイメージしてたものがやっと出せてきてる感じです」

—今シーズンは攻撃のバリエーションも増えて、いろんな人がゴールに絡むようにもなってきています。だからこそFWとして思うところもありますか?
「とにかく決めるべきところで決める!それと、シュートだけじゃなくて周りを使いながらアシストができるようになりたいです。昨シーズンは1アシストしかしてないんですよ。今シーズンはイノの2ゴールをアシストできてるんですけど、自分が決めるだけじゃなくて、周りに決めさせるようなプレーができればもっと点も入るし、勝てる試合も増えていくと思うので、そこは磨きたいところです。まあ、これは最初から決めて入った訳ではなくて、今シーズン2アシストしたことで『こういう形もアリだよな』って思ったんですけど() 特にアルビレックス新潟レディース戦でのアシストが良い例で。イノがドリブルで持ち上がってきたときに、自分が斜めに走ってラストパスを受ける動きをいままではしてたんですけど、それをせずにイノから自分が足元でもらってもう一回走ってもらってそこに出すっていう『これもあるな』っていう“気づき”があった。やっぱりイノにはスピードがあるのでそれを生かしたいですよね。そういう感じで周りをもっと生かしていきたいです」

—同じようなことを井上選手も言ってました。自分がボールを持ったときにゴールが遠いと、確実にミドルシュートを打つ技術のある髙橋選手に預けると。
2年目に入って、試合のなかでしか感じ取れない随所随所での“クセ”みたいなものがわかってきたっていうのもあると思います。長所はすぐに見えても、そういうところは意外と時間を必要とするものだったりするので、ようやく、という感じです」

—8節を終えて3勝。数字上では昨シーズンの勝利数とすでに並びました。
「戦い方も変わったし・・・まだ変化を確実に感じ取れてはいないので、ここから実感できるようにしたいです。個人的にも明確な目標の数字を設定はしていないんです。その数字に達すると満足しちゃうでしょでもシーズン前にあと5ゴールで通算50ゴールだというのを聞いて、最低でも5ゴール! と思ったんですが、それだと昨シーズンと1つしか違わないので、5ゴール以上! とは思ってます」

—ホームでのゴールを期待してしまいます!
「ですよね() 誰が出ても、誰もが点を取れる、迫力のある攻撃を見せたい。やっぱり点が入らないと面白くないので、点が取れるサッカーをしたいです。個人的には去年の数字を超すために周りも使いながら、どうすれば点が取れるかを常に考えながらダイナミックなサッカーをしたいと思ってます。ゴールにこだわって試合をするので、ぜひ応援に来てください!」


早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

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