【VENTUS PRESS】柴山史菜 前編

柴山史菜選手のデビュー戦は第10節のサンフレッチェ広島レジーナ戦。わずか4分という限られた時間ではありましたが、左サイドを駆け上がっていく姿は印象深いものでした。このピッチに立つに至るまでには、彼女のチャンスを掴みに行く行動力が炸裂していたとは・・・ぜひ、柴山選手の奥底に燃えるアグレッシブさに触れてください。

Vol.34 文・写真=早草 紀子

「待ってるだけじゃ道は開かない」柴山史菜

―WEリーグという存在を意識したのはいつですか?
柴山 開幕の前年にプロリーグが出来ることが耳に入ってきましたが、当初はプロリーグが成り立つのか?という不安視する声も選手間ではありました。でも個人的には「夢があるな」と思ってました。

―そこへVENTUSからオファーが届いたんですか?
柴山 WEリーグ1年目は三菱重工浦和レッズレディースでプレーしていたんですが、2年目に入るときに、自分からVENTUSに売り込みにいきました。ちょうど浦和が契約満了で次のチームを探していたのですが、どうしてもWEリーグでプレーしたくて・・・元チームメイトのルカさん(乗松瑠華)やラナさん(大熊良奈)がいたのでVENTUSの情報をもらいつつ、自分のプレー映像を送りました。

―積極的!
柴山 試合に出ていなかったので、自分で動くしかなかったし、待ってるだけじゃ道は開かないというか、選択肢がなかったんです。なんとかたどり着いた面談では「左足のキックが武器だ!」って結構強気にガンガン行ったのを覚えてます。自分的には相当な覚悟を持ってきたんです。だってサメさん(鮫島彩)がライバルになるってことはわかっていましたから。でも、そこを超えてこそ、だなと思って飛び込みました。

―実際、飛び込んでみたら・・・どうでした?
柴山 想像以上に実力の差を痛感しました(苦笑)。サメさんは足が速いので、サメさんならではのポジショニングで駆け引きをしてる。オーバーラップもそうですけど、プレスのスピードも速い。私はそういうタイプではないので・・・でも反対側のアリさん(有吉佐織)がまさに私が目指したいスタイルで、結構見てます(笑)。

―有吉選手は身体の向き一つで相手の動きを封じるところありますよね。
柴山 そうなんです! そこまで足が速い訳ではないのに頭の回転が速いから、一個一個の駆け引きがすごいんです。私もスピードがないんですけど、できることはいくらでもあるんだってアリさん見てると思わされます。そこを極めれば世界とだって戦えるんだってことですもんね。すごく勉強になります。

―VENTUSに来て得られた自分のいいところってありますか?
柴山 新たにというより、背後への動きとか、もともと強みだったところをより出しやすくなりました。一発で相手の背中を取れる、ひっくり返せることが増えて、そのときって左のキックが有効なんですよね。

―その左のキックはどうやって培ったんですか?
柴山 もともとドリブルよりもパスが好きで、特にアシストが好きだったんです。左足は誰にも負けたくなかったので練習はずっとしてました。右も遜色なく蹴れるので、両足使えるのは強みかなって思ってます。

―誰かのプレーを見て学ぶということはありました?
柴山 好きな選手はいっぱいいるんですけど、最も影響を受けたのは浦和の安藤梢選手です。高校を卒業して約3年半一緒にトレーニングをさせてもらって、プレーだけでなく考え方やサッカーとの向き合い方を身近で感じることができて、それが確実に今につながってます。

―安藤塾の塾生だったとは(笑) 彼女の門下生は今どんどん成長してますよね。
柴山 そうなんです。でも、頭でわかっていても難しくてなかなか自分のモノに出来ないんですけど(苦笑)。写真を見て、「これ、姿勢がダメ!」とかよく言われてました(笑)。撮ってもらうプレー写真とかあるじゃないですか。そういうのも写ってる自分の“姿勢”を見ちゃうんです。VENTUSで言うと(上辻)佑実さん、めっちゃ姿勢いいんですよ。どの写真見てもブレてないです。

―まさかの写真の使い方でした(笑)
柴山 活用させてもらってます(笑)

―今一番自信のあるプレーは?
柴山 クロス! キックはやっぱり武器なので、しっかり練習してます。特に佑実さんみたいに蹴り分け、いい球質のキックを蹴れるようになりたい。佑実さんって、トラップしやすいボールを蹴れるじゃないですか。そういう“置く”ボールを蹴れるようになりたいんです。

―得意のポジションが左サイドバック。クロスもですが、ぜひシュートも視野に入れていただきたい!
柴山 実は結構・・・こだわりはあるんです。一番は左からのファーの右上!

―随分高度な位置を狙ってますね(笑)
柴山 難しいんですけど、練習とかで決められることがあって・・・ワンチャンスあれば狙いたい!

―今、楽しそうですね。
柴山 はい! 試合に関われてないことは悔しい部分ではありますけど、目先のことじゃなくて、もっと先のことを見据えたら今はいい時間を過ごせてると思います。

―23歳はスポンジのように吸収していく時期ですから。
柴山 はい。(大島)暖菜や(杉澤)海星ちゃんは自分よりも若い選手で力があるし、高校で一緒にプレーした(北川)愛莉とまた一緒にプレーできる喜びがあったり、いろいろ刺激的です。

―初年度はベテランの選手たちが引っ張っていました。2シーズンを終えて、来シーズンは下の世代からどんどん押し上げていくことが大事になってきます。どんなプレーを見せたいですか?
柴山 シノさん(大野忍コーチ)に口酸っぱく言われてきたことなんですが、“前に急ぎ過ぎないこと”は意識してて、それが自分の中で手応えとして残るようになってきた。アリさんは一旦落ち着かせることができるじゃないですか。前に行けるときでもわざと行かなかったり、チームのリズムを作ったり、タメを作ったり・・・今はまだ5分5分のプレーが多いので、もうちょっと守備重視の上で、絶対に仕掛けられるところで攻撃していくチャンスメイクが出来たらいいなって思います。そのためにもオフシーズンしっかり走れるようにしたい。来シーズンはケガ人も戻ってきて、チーム構成も変わるはずですし、勝負の年になると思ってます!


早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

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