岡本武行 前監督が語るVENTUSが戦った2シーズン

発足からWEリーグ2シーズンを戦ったVENTUSは今シーズンのチーム目標どおり、6位で終えました。初年度から指揮を執り、来シーズンからは強化担当部長としてVENTUSを支えることになる岡本武行 前監督に、ここまでの道のりを振り返ってもらいました。

―初めてWEリーグを戦ったときの印象は?
岡本武行元監督(以下、岡本) 最初はテクニックがあること、ボールが外になかなか出ないなっていうのはありました。今もそれは変わりませんが、2シーズンを戦ってより戦術的になったと感じます。女子はフィジカルで解決するよりもタクティクス(戦術)で解決することが多いんです。特にチーム戦術が担うものは大きいと感じます。

―それで行くと、フィジカルが上がるに越したことはないですけど、それを上回る戦術があれば勝負できるとも言えますか?
岡本 そうだと思います。男子も同様ですが、フィジカルだけでもダメ。個人戦術、チーム戦術がしっかりしてないと、より女子では勝ち切れないです。

―今シーズンはチーム目標としていた6位フィニッシュでした。監督という立場において、この結果をどう捉えていますか?
岡本 上の3つは抜けてしまっていましたが、終盤は4位近くにずっといたので、そこで終わりたかった悔しさがあります。一年目よりはよくなってましたし、より上に行かないといけないし、行けたと思ってます。

2巡目に入って相手が対策を練ってきたというのもあると思いますが、キープしきれなかった要因は?
岡本 得点力です。サンフレッチェ広島レジーナ、マイナビ仙台レディースに5点獲って、総合的に22点は獲ってはいますが、複数得点を奪えていれば変わった試合もありました。終盤戦にしてしまった大量失点(20節ジェフユナイテッド市原・千葉レディース戦4失点、21節三菱重工浦和レッズレディース戦4失点)も、立て直す間もなく連続失点してしまいました。前半戦は耐えることが出来ていましたが、やはり2巡目の難しさもありました。

―ゼロからスタートしたチームが2シーズンを戦い終えました。最も成長を感じるのは?
岡本 私自身、女子選手の指導を経験したことがない中で始まって、特にVENTUSはいろいろなチームから選手が集まっていたので、一年目は一人ひとりの特長を把握することで終わってしまった印象でした。最後の方は守備の整理も出来たかなと思いますが・・・。今シーズンは守備の安定と、点を獲りにいくことに重点を置きました。初年度は引き分けが多く、そこへ選手の活かし方への把握が深まったことで、チームへの落とし込みは少し出来たのかなと思います。より個を成長させていかないといけませんが、ある程度守り方のベースは出来たと感じています。

―この2シーズンを経て、これがVENTUSの形! というプレーは築けましたか?
岡本 ボールを動かしながらのサイド攻撃です。特にサイドにはスピードのある選手がいます。サイドバックもそうですけどアップダウンが効いたりするので、VENTUSの特長になったと思います。

―若手も入りましたし、ケガから復帰してくる選手が多いので、来シーズンこそメンバーが揃うと面白いですよね。
岡本 今シーズンも最後の方は、ケガから戻ってきた選手たちによって競争が生まれたことでチーム力が上がりました。特に2月から入った新加入の北川愛莉、大島暖菜も競争に入れてますし、杉澤海星、五嶋京香たちが戻ってきたらより活性化すると思います。初年度はケガ人続出でチームを作ることで精一杯でしたが、特長が違う選手が上がってくることでチームとしてもバリエーションが増えるし、今までは何もしなくてもメンバー入りしていた選手がアピール、成長をしないといけないので。成長度合いが全く違います。

WEリーグは上位3チーム(三菱重工浦和レッズレディース、INAC神戸レオネッサ、日テレ・東京ヴェルディベレーザ)がズバ抜けています。このトップ3に食らいつくためにVENTUSに必要な最大のものとは?
岡本 あらゆる部分が必要ですが・・・90分を通しての強度でしょうか。上位チームに対してはある程度引いて守って耐える時間帯があります。そこから転じたときに、どうゴールを奪うのか。ビルドアップだけでなく、カウンターのバリエーションももっと上げていく必要があると思います。

―実際には4位以下のチームの実力は横並びです。トップ3以外のチームからしっかりと白星を得ないといけない。
岡本 そうですね。まずトップ3に追いつくためには、そこ以外のチームに負けると4位以上は難しいです。そのためにも、VENTUSはサイド攻撃での得点も多いですが、相手が押し込めば裏が空いてくるのでそこを突いていくシンプルな攻撃も効果的だと感じますね。

―重要なのはビルドアップかカウンターかの見極めですね。
岡本 ゲームコントロールにおいては、今は守備をがんばるところ、攻撃に出るところを状況によって判断できるリーダーが必要です。もちろんピッチにいる全員が感じ取ることが重要ですが、それを牽引するリーダーシップを取れる選手が真ん中に欲しいですね。

―そこが締まれば、4位以上も望めますか?
岡本 そう思ってます。最少失点、そして複数得点を獲れるように。我慢して守備した後にどう得点するかのバランスですよね。ウチは先制点が入ると面白くなるので()、そういう展開に持っていけるような試合を増やしていきたいです。

―来シーズンは強化担当部長という立場でVENTUSに携わることになります。どう強化していくのでしょうか?
岡本 ここ2シーズンはベースを築く年でした。より発展させるためには、新たな監督を迎えてバリエーションを増やしたいと思ってます。選手が大きく変わっていないので、マンネリ化させないためにも活性化していきます。来シーズンは新監督のもと、さらにパワーアップしたVENTUSをお見せできるようにしていきたいと思っておりますので応援よろしくお願いします!


早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

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