Vol.66 戸塚 啓「胸の高鳴り」【ライターコラム「春夏秋橙」】

ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。1月15日に行われた新体制発表を見て抱いた期待感を、戸塚啓記者に伝えていただきました。

Vol.66 戸塚 啓

胸の高鳴り

ワクワクという言葉が、これほど当てはまる場面はない。
新体制発表会見である。1月15日午後に、西大宮のクラブハウスで行なわれた。

 普段は取材などで使うスペースに舞台が作られ、新加入選手がズラリと並ぶ。あの選手はどのポジションで使われるのだろう。どんなプレーをしてくれるのだろう──期待が胸のなかで躍り出す。

 頭のなかにピッチを思い描いて、選手を並べてみる。昨シーズンのベースだった4-2-1-3にしたり、4-2-3-1にしたり、4-4-2にしたり、ウイングバックを置いてみたりと、いろいろなシステムに選手を配置していく。主力の抜けたポジションに新加入選手を当てはめる、といったことではなく、新加入選手と既存の選手をミックスしながらチームを作っていく。

 使いたい選手は11人だけではないから、あれこれと悩むことになる。ホントに悩む。それがまた、楽しいのだ。

 たとえば、ダブルボランチを誰にしようかと考える。三門雄大選手、小島幹敏選手、大山啓輔選手、小野雅史選手がいる。新加入の大橋尚志選手と三幸秀稔選手がいる。田代真一選手や矢島慎也選手も、ボランチでプレーできる。選手たちの特徴から判断すれば、ダブルボランチではなくアンカー+インサイドハーフの立ち位置も可能だろう。

 この選手とこの選手が一緒にプレーしたら、いままでにない化学反応が起こるのでは──想像の翼はどこまでも広がっていき、飽くことがないのだ。

 メンバーリストをポジションごとに見ていくと、DFが少ないかなとの印象を抱く。ただ、昨シーズン終了とともに霜田正浩監督の続投が発表され、指揮官と秋元利幸フットボール本部強化部長はいち早く編成を進めてきたのだ。戦力に不足はないだろう。むしろ、DFが少ないなかでどんなサッカーをするのか、昨年とは違うシステムにトライするのでは、といった期待感を抱くことができる。霜田監督も、補強については納得の表情を浮かべていた。

 トップチームのスタッフに、うれしい入閣もある。金澤慎さんがコーチに名を連ねているのだ。

 2002年から17年まで在籍したクラブのレジェンドである。06年と07年は東京ヴェルディへ期限付き移籍したが、それも自身の成長をクラブの発展につなげるためだった。J1、J2合わせてクラブ最多の311試合に出場している「慎さん」は、大宮というクラブのアイデンティティーの継承者と言っていい。

 監督やコーチはクラブ生え抜きの人材のほうがいい、などと言うつもりはない。外部から人材を招へいするメリットは、いくらでもある。そのうえで言えば、「慎さん」のクラブに対する思いは特別なものがあり、チームが苦しい場面や難しい場面に立たされたときに、彼の言葉や振る舞いが大きな助けになるだろう。現役時代がそうだったように、チームを優しく包み込むような存在感を発揮してくれるに違いない。

 各チームの編成から判断すると、今シーズンのJ2にずば抜けたチームはいない。個人的には22チームのうち11チームはJ1昇格の可能性を秘めている、と考える。

 21年はどんなシーズンになるのだろう。

 考えるたびに、ワクワクしてくる。


戸塚 啓(とつか けい)
1991年から1998年までサッカー専門誌の編集部に所属し、同年途中よりフリーライターとして活動。2002年から大宮アルディージャのオフィシャルライターを務める。取材規制のあった2011年の北朝鮮戦などを除き、1990年4月から日本代表の国際Aマッチの取材を続けている。

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