FW33 河田篤秀【マンスリープレーヤーインタビュー】


途中加入で結果を出す

  8月9日のデビュー戦から、河田篤秀は瞬く間にチームにフィットした。加入2試合目のブラウブリッツ秋田戦で移籍後初ゴールをマークすると、第27節の松本山雅FC戦、第28節の東京ヴェルディ戦、第29節の愛媛FC戦と3試合連続でゴールネットを揺らした。

 「一番大きいのは、僕が来る前にある程度の形ができていたことです。自分がFWのポジションでやるべきことは、僕でも僕ではなくとも決まっていました。たとえば点を取るべき場所にいるということが、自分が求めていることに近かったというのもあります。霜田監督からも、FWに求めているのはゴール前にいてしっかり点を取ることと言われています。低い位置ではシンプルにはたいて、クロスが上がってくるのを信じて入り込めば点は取れるからと。そういうところがうまく合って、早くフィットできたと思います」

 霜田正浩監督が6月17日の栃木SC戦から采配をふるい、およそ2カ月を経てプレーモデルが固まってきたタイミングで合流した、というのは確かにあるだろう。そのうえで言えば、河田自身の意欲的な姿勢にも理由を求められるはずだ。

 「コミュニケーションは自分でやったところかなと思います。いろいろな選手とできるだけ多く話すようにして、試合中のプレーに関係のないところでもかなり話をしていったので、そういうところも良かったかなと思います。選手たちも受け入れてくれたので、それもありがたかったですね」

 飢えた思いもあった。前所属の徳島ヴォルティスでは出場機会が限られ、得点をあげていなかった。試合に、ゴールに、飢えていたのだ。

 「点を取ることに一番の喜びを感じるなかでプレーしていて、今シーズンはなかなか取れていなかった。大宮への移籍が決まってから、早く取りたいと思っていました」

 重圧はなかったのだろうか。今シーズンの大宮は、J2残留争いを演じている。ストライカーにかかるプレッシャーは大きいはずだが、河田は「さらり」と音がするように話す。

 「プレッシャーとかは、特に感じなかったですね。期待されているのはもちろん感じていましたけど、マイナスのとらえかたはしないタイプなので。点を取ってくれという期待を、ポジティブにとらえていました」

 得点パターンは豊富だ。左右両足をスムーズに使いこなし、空中戦でも強さを発揮する。徳島のJ1昇格に貢献した昨シーズンは、9得点のうち5得点をボレーで決めた。

 「個人的にはいろいろな取りかたができる、と自信を持っています。右足でも左足でも気にしないですね。左足に置いちゃったから蹴るのをやめる、という判断はしません。ボレーもチャンスがあれば、昨シーズンのようにしっかり決められるようにしたい。岡山戦の終盤に一度機会があったんですけど、決められなかったのが悔しくて」

 勝負強さも特徴にあげられる。重要な局面で輝きを増すのだ。

 「プレッシャーを感じないのと同じで、これも性格的なものかもしれないですけど、同じ1点でも決めれば価値あるものになるような状況とかシーンでは、より気持ちが盛り上がって研ぎ澄まされている感じがします。『ここで外したらマズい』とかいう方向にはいかないですね」


勝負の10月

 10月は5試合が予定されている。「すごく重要な時期です」と、河田は切り出す。

 「僕はJ1からJ2への降格、J2の降格圏に長くいたこと、J2からJ1への昇格を経験していますが、最後の3、4試合は計算ができないような、ぐちゃぐちゃな試合になってしまうことがある。そこからの成長はなかなか難しい。そう考えると、最後の3、4試合の前、つまり10月の5試合は一番重要な時期かと思います。このタイミングは成長もできるし、流れを作っていくこともできる。ここで勝点を取るか取らないのかで、最後の最後のところでの心の余裕が全然違ってくる。ホントに大事だと思います」

 10月にいい流れを作り、11月以降の最終盤へつなげていく。ラストスパートを仕掛けられるかどうかは、10月の戦い次第と言ってもいいのだろう。

 「そうですね、ここでホントに頑張らないと。まだ試合数が残っているからという考えではダメだと思います」

 5試合のうち3試合は、現時点で勝点差の近い相手との対戦だ。いわゆる6ポイントマッチである。誰かに何かを言われるまでもなく気持ちは奮い立ち、同時に重圧も忍び寄る一戦だ。

 河田はどんな思いで臨むのだろう。

 「試合までの練習とか試合に入るところは、順位をそこまで気にしないことが大事だと思います。試合終了間際で引分けているとか、1点負けているとかいう状況では、多少無理をしても点を取りにいかないといけないのはあるでしょうが、まずは勝つために自分たちのスタイルを出す。そのための心の準備をするのが大事でしょう。集中するとか球際で強くいくために6ポイントマッチだぞと思うのはいいのですが、6ポイントマッチだから消極的になったり、ボールを失うのが怖いとかいう気持ちになったりするのは良くないですね」

 大宮のファン・サポーターとの直接的な交流は、コロナ禍で実現していない。応援の人数にも制限がかかるなかでも、河田はファン・サポーターとともに戦っている感覚を得ている。

 「移籍してきたばかりの僕に対しても、ファン・サポーターのみなさんの温かさを感じます。NACK5スタジアム大宮はピッチとスタンドと距離が近いですし、試合中に声を出して応援できなくても、みなさんの気持ちの熱さは僕らに届いているし、すごくいい雰囲気を感じます。ファン・サポーターの皆さんに喜んでもらえるように、僕は自分の一番の仕事である点を取ることに集中したい。チームの勝利に貢献できるように頑張ります」

 背番号33のゴールは、勝点獲得に直接的につながっていく。円熟のゴールハンターは、勝負の10月での得点量産を自らに課す。

 

 

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