MF10 黒川淳史【マンスリープレーヤーインタビュー】


松本戦の快勝劇

 9月のマンスリープレーヤーとして紹介する前に、インパクトのある活躍を見せてくれた。8月29日の松本山雅FC戦で、今シーズン初の1試合2得点をマークしたのだ。

 1-0で迎えた後半開始直後、河面旺成のパスをゴール前で受けると、ワントラップから左足ボレーでゴール右隅に蹴り込んだ。

 「チームとして良い形でボールを奪ってから、良いところにパスが来てコントロールが決まったので、思いっきり振り抜きました」

 75分の2点目はヘディングシュートだった。カウンターから複数の選手が勢いを持ってゴール前へ飛び込み、2次攻撃から黒川が仕留めた。ズドンと音がしそうなヘッドが、GKの手を弾いてネットを揺らした。

 「2点目は良い流れで崩せて、こぼれ球にもう一度入り直した形でした。クロスの練習もたくさんしていましたし、良い得点だったと思います」

 この日はチームの全得点に絡んでいる。河田篤秀が先制点をあげた場面では、小島幹敏の縦パスに反応して最終ラインの背後を取り、優しいラストパスを通した。中野誠也が決めたダメ押し点を巻き戻すと、アシストをした三門雄大は黒川とのワンツーで右サイドを破っている。

 試合前には「サポーターの皆さんに、アグレッシブな気持ちが伝わるような試合をしたいです」と話していた。それだけに、ホームでつかんだおよそ5カ月ぶりの勝利に笑みを浮かべた。

 「チームとしてやっていることは変わっていませんが、全員が勝利に対する強い気持ちを持って戦えていましたし、サポーターの皆さんの後押しが力になりました」

 松本戦で勝利する以前から、チームの変化は感じていた。

 「監督が代わってから、ポジティブな空気が流れています。自分たちができていることをさらに磨いて、できていないことを改善していければ、と思います。なかなか勝利をつかめていないことに対しては、つねに危機感を持ってやらなければいけないと、チーム全体で話していました」

 シーズン初得点は第20節のレノファ山口FC戦で挙げた。その後は第22節のV・ファーレン長崎戦、第23節のFC琉球戦でゴールし、松本戦の2ゴールへつなげた。

 「霜田監督になってからは、ポジション的にもよりゴールに近くなっているので、シュート数が増えてきている。そのなかでゴールが生まれているのかなと思います」

 数字に対してはつねに意欲的だ。攻撃的なプレーヤーとして、得点やアシストを残すことにどん欲である。

 「結局はそこになってくるというか、数字が残せるかどうかでサッカー選手としてのキャリアは変わってきますので。そこには、こだわってやっていきたいです」


シーズンの分水嶺

 第27節の松本戦まで、全試合に出場している。主力選手のひとりとして、結果に対する責任を強く感じている。

 「自分が出ている試合はつねに勝ちたいと思っていますし、これからもそれは変わらないのですが、変に背負い込み過ぎずに、と周りから言われることがあって。自分ではそういうつもりはないのですが、そんなふうに見えることがあるのかもしれません。責任を重く受け止め過ぎない、というのは難しいところで、責任のあるプレーを意識しながら、消極的にならないように心がけています」

 責任感のあるプレーを心掛けつつ、チームメートとも連係していく。新加入の河田とも、スムーズな連係が取れている印象だ。

 「上から目線に聞こえたら困るんですが、対戦相手だったときからいい選手だと感じていました。ゴールの嗅覚がある選手だというのは分かっていて、カワくんだけじゃなく(南)雄太さんもそうですけれど、チーム力を上げてくれる存在だと思います」

 今夏は国際大会が数多く行なわれた。欧州選手権と南米選手権があり、国内では東京五輪が開催された。世界のトップ・オブ・トップの戦いに刺激を受けた。

 「一つひとつのプレーの質が高いですし、五輪はリーグ戦とトーナメントでまたスイッチが変わっていたと感じました。優勝したブラジルの選手は戦術どうこうというより野生の力というか、見えないところの感覚が鋭いな、と感じました」

 東京五輪には同世代の選手が出場していた。9月のW杯アジア最終予選を戦う日本代表にも、年齢の近い選手が招集されている。

 「プロ1年目とか2年目は、日本代表を狙えるのは何年後かなあというイメージでしたが、いまはもう同年代や年齢が下の選手が選ばれています。年代別の代表で一緒にやっていた選手もいますし、僕も負けられない。どんどん成長していかなければ」

 成長スピードを上げていきたいとの思いのそばには、チームの勝利に貢献するとの決意がある。J3降格圏から抜け出すためにも、9月の4試合は「すごく重要です」と言う。

 「ここからチームがどういう方向へ向かっていくのかが決まってくるというか、順位を上げていけるのか、シーズンの最後まで厳しい戦いになるのか。その分かれ目になる大事な1カ月だと思います。対戦相手を見ても、現時点で勝点差の少ないチームとの直接対決がある。そこでしっかり勝ち切って勢いをつかめば、上位をたたくこともできるはず。一つひとつ勝利をつかんでいかなければいけないと思います」

 9月最初のゲームは、ホームの東京ヴェルディ戦だ。

 「ホーム2連戦のひとつ目の松本戦に勝ったことで、次も良い雰囲気で戦うことができます。ホームの勝利は特別で、勝てば勢いに乗る。NACK5スタジアム大宮で勝ってサポーターの皆さんと喜びを分かち合って、そのあとの9月の試合でも勝ちを積み重ねていきたいです」

 背番号10がアタッキングサードで輝きを放てば、得点やアシストを記録すれば、その必然として勝利が近づく。9月からの反攻を、黒川が牽引する。

 

 

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