DF42 山越康平【マンスリープレーヤーインタビュー】


元ストライカーからの助言

 「守る」ということの理解を、山越康平は深めている。

 「こういう状況のときはこういう対応をしたほうがいいとか、ここはこういうステップとか体の向きがいいとか、ここにポジションを取らないとダメだなといったところが、自分のなかでだんだんと分かってきました。それに照らして試合を振り返ると、ここはステップが違う、ポジションが違う、やられてはいないけれどこの対応ではいつかやられる、といったことが分かります。そこを一つひとつ潰していって、次の試合でしっかりと対応できるように心がけています」

 2016年から積み重ねてきたキャリアのなかで、気づいてきたことがある。さらに加えて、北嶋秀朗コーチとの自主練習に向上心を刺激された。

 「北嶋さんは現役時代にFWだったので、『オレだったらこう狙うよ』とか、『こういう対応をされたらFWはイヤだよ』といったことを教えてもらっています。クロス対応のときのステップのしかたとか、視野の確保というか眼のどこに相手を置くとか、自分はそういう守り方を知らなかったので、それを教えていただいてからはプレーの幅が広がったというか、新しい世界が見えたなという感じがしました」

 新しい世界という表現は、少しばかり大げさなのかもしれない。山越はすぐに照れたような笑みを浮かべ、「こういう守り方もあるんだ、と気づかされました」と言い直した。

 「それまでは自分の能力を高めることに集中していた印象があって、自分は全然サッカーを知らなかったんだと。いまもまだまだですけど、ホントに知らなかったなと。J1の試合を観ていても、北嶋コーチが言っていることをしっかりできているCBは、いい対応ができているんです」

 ディフェンスについての理解を進めていくと、ベテラン選手のクオリティを再確認することもできた。プロ18年目を過ごすセンターバック、35歳の河本裕之の存在の大きさを知った。

 「河本さんのプレーを見ていて、さすがだなと思うところが具体的に分かってきたというか、『こういう場面ではこう動くといいんだ』というのが理解できるようになってきました。それまでは『どうやったら河本さんみたいになれるんだろう』という感じだったのですが、『河本さんみたいになるには、こういうところを身に付けるべきだ』ということが整理されてきたんです」


 
ノルマ達成まであと3試合
 2016年のプロ入りから、J1、J2で通算85試合に出場してきた。今シーズン中の100試合出場達成を、自らに課している。

 「開幕前からあと15試合で100試合出場になるのは分かっていました。一つの目標としては意識しています。まずはそこを達成できるように、チーム内の熾烈な争いがあるので、日々の練習からアピールをしていかなければいけない」

 6月27日の第20節終了時点で、12試合に出場している。最短で7月18日のホームゲームがメモリアルマッチとなるが、山越が最優先するのはチームの勝利だ。

 「現状では一つ勝っただけでは、必ずしも順位を入れ替えられない立場です。5連勝とか10戦負けなしとかを達成しないと、上がっていけない。そのためにも、まずは目の前の試合に勝って、勝点を積み上げていかなければいけない」

 霜田正浩監督の就任後は、栃木SCと松本山雅FCに0-0で引分け、レノファ山口FCには1-0で勝利した。山越は全ての試合でピッチに立ち、3試合連続のクリーンシートに貢献している。

 「霜田監督になって、こうやって点を取るというのがはっきりしている。そこはみんな、やりやすいのかなと感じます。あとは、チーム全体で点を取るための質を上げていかなければ。僕自身、攻撃面ではフィードの質を高くすること、つねに前へ入れることを意識しています。自分で持ち出すプレーはストロングの一つだと思っているので、そこも継続してやっていきたい」

 得点力を高めていくためには、セットプレーもポイントになるだろう。今シーズンは第20節終了現在で、CKから得点が生まれていないのだ。山越自身も第15節のギラヴァンツ北九州戦で、左CKからのヘディングシュートがバーに嫌われてしまった。

 「押し込まれていてもセットプレーから取れれば、試合展開に余裕が生まれてくる。CKからでも取らなきゃいけないと思いますし、自分も狙っていかないといけない」

 CBのポジションでは、山口戦で西村慧祐が8試合ぶりに先発に復帰した。河本、櫛引一紀らを含めてライバルは多いが、山越は競争を通してお互いを高め合い、チーム力アップを実現したいと考える。

 「シーズン序盤の勝てなかった時期は、練習から厳しさが足りていなかったと思いますし、僕自身が大事にしている球際、運動量、攻守の切り替えといった基本的な部分も、十分ではなかったのかなと思います。いまは一人ひとりが球際で戦ったりするところは、明らかに良くなっています。霜田監督は戦術面を整理してくれていることはもちろん、自分たちを奮い立たせてくれる。みんなで円陣を組んだり、モチベーションの上がる言葉をかけたりしてくれるので、すごく気持ちが入ります」

 7月は3日にモンテディオ山形、11日にV・ファーレン長崎、18日にFC琉球と対戦する。第20節終了現在で7位、8位、4位と、上位との3連戦だ。山形戦と琉球戦はホームゲームでもある。東京五輪開催による中断前の3試合で、後半戦の巻き返しにつながる結果を残したい。

 「まだまだ苦しい状況ですが、そこから抜け出すために日々の練習からしっかり取り組んでいます。勝点3を皆さんに届けられるように頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします」

 進化を遂げているディフェンスの個人戦術を、ファン・サポーターへの思いを、山越はピッチ上で表現していく。


 

 

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