選手に気になる質問をどんどん聞いていく本コーナー。今回は湘南ベルマーレから加入した三幸秀稔選手に、湘南の番記者・隈元大吾さんが移籍に至る思いや大宮アルディージャの印象を聞きました。
Vol.22 隈元 大吾
今まで強度を求められ食らいついてきた。
その経験を生かしたい
合流できた日は本当にうれしかった。
――前所属の湘南では2年間プレーしました。試合に出られないことも少なくありませんでしたが、どのように受け止めていますか?
「自分のサッカー観や信念を持ち、J1にチャレンジすると心に決めて、湘南の地へ行きました。たしかに自分の持っているスタイルを出し切れず、2年間を通してうまくいかない部分は多かった。最後までJ1残留を目指して戦わなければいけなかったように、なかなかチームを結果に導くこともできませんでした。一人でもチームを変えられるような、たとえば1年半でチームをJ1に上げたヤットさん(遠藤保仁/ジュビロ磐田)のような仕事はできなかった。その意味ではまだまだだなと思っています。
ただ、自分の信念やサッカー観、スタイル、なにが大事でなにが楽しくてサッカーをやっているのかをいま一度考え、チャレンジし続けたことで、少なからず幅や深さが生まれたと思います。いい経験をさせてもらったし、選手としても、人としても成長できたかなと思うので、それを大宮で生かせればと思っています」
――出場の有無にかかわらず、日頃から前向きに練習に取り組み、チームメイトとのコミュニケーションも積極的に図る姿が印象的でした。
「現監督の霜田(正浩)さんに山口で2年間指導していただいた際に、チームの勝利が一番大事だと常に言われていました。チームの一員である以上、個人の感情で輪を乱してはいけないし、プレーしていて気付くことがあれば話をする必要もある。僕は足が速いわけでもないし、体が強いわけでもない。でも、90分を通してどのように戦うか、相手のフォーメーションをどう攻略すればいいか、といったことをつねに考えてプレーしてきました。そうした自分なりに積み重ねてきた経験をチームに返さなければならないと思っていたので、試合に出ても出なくても仲間に働きかけるよう心がけていました。
そうしていると、『うまくいかないのはなぜだと思いますか?』『こうしたほうがいいと思うんですけど、どう思いますか?』とチームメイトのほうから逆に聞いてくれることもよくありました。そのやり取りが僕も楽しかったですし、そういうコミュニケーションが生かされたゲームも多かった。たとえ試合に出られなくても、自分の経験してきたことや感じたことはしっかり言葉で伝えて、プレー以外でもチームの力になれればと思っていました」
――ボランチとして数多くボールにかかわり、攻撃のリズムやチャンスをもたらす三幸選手ですが、プレーしているときは、どこを見て、なにを考えていますか?
「まずチームとしてボールを握れているのか、握れていないのか。握れていないのならどこがうまくいってないのか、全体を見て考えます。
たとえば相手陣地でサッカーをしようとしているときに、センターバックが相手のプレッシャーを受けてロングボールを出せていないのなら、僕がポジションを下がり目に取り、マークを一人引き受けてセンターバックをフリーにしたり、もしくは僕自身がセンターバックからパスを受けて深いところにボールを入れたり、自分としてはボールに触りながら、相手を引き受けながらプレーしたい。一気にゴールまでは見えないので、グラウンドをいくつかに分けて、どうやって崩していこう、個々のストロングをいかに生かそうかと、そうやってチームがうまくいくようにサッカーを一つひとつ考えています」
ボールに対する執着心
――大宮アルディージャの印象を聞かせてください。
「みんな仲がよくて、うまい選手が多いですね。僕が思う大宮アルディージャは、J1にいなければいけない、強いクラブです。J2で戦うのなら、相手が目の色を変えて臨んでくるようなチームでなければならない。仲がよく、いい選手がたくさんいるなかで、厳しさがより備わればもっといいチームになると思います」
――一緒にプレーしていて、選手個々にさまざまな特長を感じますか?
「みんなかなり個性があると思います。サイドには1対1で優位に立てるであろう選手が多いですし、中盤にはボールの扱いがうまく、いいパスを出せる選手が集まっている。なおかつみんな明るいし、優しい。
一方で、これは湘南にいたからこそ感じるところかもしれないですけど、一つのボールに対する執着心をもっとみんなで持てたらと思います。オン・ザ・ボールならピカイチの選手が間違いなく多いので、それをより生かすためにも、オフ・ザ・ボールのときにマイボールにするかしないかの局面で、どれだけこだわることができるかは大事だと思う。湘南は練習から切り替えが速いし、強度も高い。自分も2年間強度を求められ、食らいついていたので、大宮がより強いチームになるために、湘南で得た経験も生かせればと思います」
周りを生かせる存在に
――霜田監督の下、山口でプレーした2019年に、三幸選手は1得点9アシストを記録しています。数字について今年目標としているところはありますか?
「ゴールはもっと取りたいと思いますし、アシストは二ケタに絡んでいかなければダメだと思っています。さらに言えば、僕はアシストの前にもこだわっている。アシストの前の崩しの部分で、次の選手にアシストをしっかり付けさせてあげるだけのフリーな状況を作れたか、たとえば横に流すだけの状態にしてあげられたか。そういうシチュエーションを増やしていきたいし、アシストだけでなくチャンスメイクのところで、どれだけ相手の嫌な場所にボールを入れられるかにもチャレンジしたいなと思います」
――それはファン・サポーターに見てもらいたいポイントでもある。
「そうですね。僕がいつボールを放し、いつロングボールを蹴るのか。誰に時間を渡し、いつ自分が時間を使うのか。90分を通して効率よく時間を使いたいと思っているので、『三幸がいるとうまくボールが回ってうまく崩せるんだよな』と言われるような、そういう選手になりたいなと思います」
――先ほど話に出た遠藤選手のような存在になれたらということでしょうか。
「はい。なおかつヤットさんは得点やアシストも付けるので、自分もそこを目指しながら、より長短のボールを蹴りたい。両足で深いところに入れられるので、長いボールでチャンスを作れたらと思います」
――霜田監督は新しい大宮を作りたいと話しています。三幸選手自身、今季どんな戦いを見せたいですか?
「まずは相手陣地に押し込むようなサッカーをやりたいと思っています。また、『ひたむき』という今季のスローガンを踏まえ、やらなければいけない時間にやらなければいけないことを的確にやれるチームになり、みんなでひたむきに勝利を取りに行きたい。それを1試合1試合積み重ねた結果が42試合を終えたときの順位になると思うので、1試合1試合をひたむきに戦えるか、しっかり勝点を積めるかどうか。90分を通して勝つことが大事なので、一つの勝点、一つのゴールをひたむきに奪い、守らなければいけないときにはひたむきにみんなで守る、そういうサッカーができればと思います」
――なにより結果を強く求めている。
「はい。ただそのなかで、監督には常に、選手が成長しなければいけないと言ってもらっています。成長するためには、やみくもにボールを蹴っていてはダメだと思いますし、楽をしてはいけない。シーズンを通してうまくならなければいけないし、賢くプレーできるようにならなければいけません。
チームが強くなるために、みんなで成長を求めながらチャレンジし、42試合を戦って、最終的に結果が付いてくるのが一番いい状態。そのために始動からみんなでやるべきことを共有しながら取り組んでいる。いい準備ができていると思うので、これをしっかり結果につなげなければいけないと思っています」