MF26 小島幹敏【マンスリープレーヤーインタビュー】

勝つために必要なこととは

シーズン初出場は、3月21日のSC相模原戦だった。開幕から3試合は試合に絡むことができなかっただけに、「チームの勝利に貢献する働きをしたい」との思いを胸にピッチに立った。

強い雨と風に苦しめられる悪コンディションのなかで、小島はフル出場した。中2日で行なわれた京都サンガF.C.戦にも途中出場すると、続くV・ファーレン長崎戦でスタメンに名を連ねる。

背番号26を着けるボランチは、ここで鮮明なる解答を示す。17分、ペナルティエリア右奥へ侵入し、ネルミン・ハスキッチの先制点のきっかけを作った。相手守備陣の目線を揺さぶる飛び出しだった。

32分にはシーズン初ゴールをマークする。ハスキッチから小野雅史へボールが収まった瞬間に、ペナルティエリア左へ走り込む。小野からのスルーパスを、得意の左足で蹴り込んだ。チームは4-0の勝利を収め、ホーム初勝利を飾った。


「長崎戦は試合に勝つことはもちろん、結果につながるプレーをすることが重要だと考えていました。3試合勝てていなかったので、結果が出たのは良かったです」

ここから2試合連続で先発する。第7節のブラウブリッツ秋田戦は途中出場だったが、第8節から再びスタメンで出場している。

それだけに、勝点が伸びないことへの責任を痛感するのだ。

「長崎戦のあとのFC琉球戦と秋田戦はアウェイで引分けましたけど、そこで連勝できていればまた違ったでしょうし、そのあとの愛媛FC、ジュビロ磐田、FC町田ゼルビアと連敗しちゃったので……厳しいですね」

勝利を逃した試合も、内容は悪くないのだ。小島は自らに問いかけるように「悪くないけど勝てない……ううん、何でだろう」と呟き、しばらく考えてから「ホントにちょっとしたところですよね」と話す。

「たとえば愛媛戦だと、自分たちがゴール前で決められるシーンを確実に決めるとか。そういうところが勝敗を分けますよね。磐田戦は2-1になっていけるぞと思って、そこから2失点したのですごく悔しかったです。去年もすごく長い間勝てないこともあったので、ずっと考えています。どうなったら勝てるんだろうって」

3位でフィニッシュした19年と、J2で過去最低の15位に止まった20年の違いはどこにあるのか。思い浮かぶ理由がある。

「去年も今年もそうですけど、セットプレーがあまり入らないのはあるなと。それが勝ち切れない原因だとは言えないですけど、19年はセットプレーから入ってましたからね。アウェイで引分けるかなと思ったら、FKが1本入って勝つとか。セットプレーで入ることがあったので。上位のチームはそういう試合をしますよね」

第10節終了時で首位を走るアルビレックス新潟、新潟を勝点1差で追う琉球は、セットプレーからの得点で勝点をもぎ取っている。3位の京都も同様だ。

「上位のチームだと京都、磐田、琉球と対戦しましたけど、上にいるチームはちゃんと理由がありますよね。強さがあります。新潟はまだ対戦してないですけど、映像を観ているとセットプレーで取って引分けに持ち込んだりしている。負けを引分けに、引分けを勝ちに、持っていく力を持ってますよね。それもまた、ちょっとしたところなんだと思いますけど」

北嶋コーチの言葉を胸に

必要なのは「ちょっとしたところ」で、つまりは「きっかけ」である。ひとつの勝利をスイッチとして、チームが好転していく可能性は高い。

「岩瀬監督のサッカーをみんなが理解して、浸透してきていると思います。ボランチとしての役割はこれまでと変わることはなく、攻撃面で自分の良さを出して、守備もこれまでと変わりなくハードワークしようと。守備は意識するようになったし、頑張ろうと思っています」

『VAMOS』123号に掲載されたインタビューで、小島は「攻守の中心になって頑張ろうという気持ちは出てきました」と話していた。北嶋秀朗コーチに言われた「頑張ることを頑張れ」という言葉が、「心に響いている」とも語った。アカデミーから昇格したプロ7年目の24歳は、メンタリティの芯を強く太く、なおかつ揺るぎのないものにしている。

「キタジさんの顔を見るたびに、『頑張ることを頑張れ』の言葉を思い出します。いまでも心に響いているので。自分に足りないところがあるのは分かっているので、そこはホントに意識してやっていけば、もっともっと良くなると思っています。守備ならセカンドボールと球際、攻撃ならミドルシュートとかキックの質とか、そういう自分の足りないところを練習でも試合でも意識していけば。キックは周りの選手に比べると全然なので、もっともっと良くしていきたい」

アカデミー出身選手の台頭は、今シーズンも著しい。いまやクラブの特長との理解が広がっている。

「アカデミーの選手が試合に絡むのはうれしい。その人数が多いほどいいし、そのなかで試合に勝てたらもっといいですね」


だからこそ、勝ち切れない現状を打ち破りたいのだ。勝敗の責任を背負って戦い、チームを勝利へ導きたいと考えるのだ。

「アカデミーの選手が多く出ているなかで勝つことが、ホントに重要だと思うので。出ていて結果が出なかったら、ホントに良くないですからね」

シーズン前には「5得点」を目標に掲げた。18年の水戸ホーリーホックで記録した4点がキャリアハイとなっているからで、「とりあえずは5点、そこから1点でも多く取っていきたい」と、静かに闘志を燃やす。

5月は6試合が組まれており、3試合がNACK5スタジアム大宮でのホームゲームだ。依然として入場者数や応援スタイルに制限があるものの、ファン・サポーターの存在は心強い。

「声を出しての応援がなくても、ファン・サポーターの皆さんは僕らの背中を押してくれます。いいプレーに拍手が起こると後押しされるので、それはホントにありがたいですね。5月からいい流れに持っていけるように頑張りますので、応援よろしくお願いします」

5月からの反攻を誓って、小島は牙を研ぐ。


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