Vol.040 田口 和生「行動力」【ライターコラム「春夏秋橙」】

ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”するオフィシャルライター陣の視点で、毎月1回程度お届けします。今回は1次キャンプに帯同した広報が担当します。

Vol.040 田口 和生
行動力

サッカー経験者は多くても、GK経験者となると、一気に貴重な存在になるのではないでしょうか。単純計算でも10分の1に減りますよね。この春夏秋橙では、笠原昂史選手や昨年まで在籍した藤原寿徳GKコーチのエピソードを紹介してきました。未知の世界である彼らの話は、興味深いものです。

3~4人くらいの選手、GKコーチ、数人のスタッフだけで行うGKのみの練習は、コーチによってトレーニング方法や雰囲気が大きく変わります。そこで今回は、今シーズンよりチームに加わった松本拓也GKコーチを紹介したいと思います。

最初に驚きの事実を――。何と彼、中学生までは野球少年だったそうです。いやぁ、どうりでバットを振る姿が様になっていると思いました。本格的にサッカーを始めたのは、中学3年生になってからと言うではありませんか。15歳で種目を変えて、プロ選手を教えるプロのコーチになれるとは。

野球部時代は左利きのエースピッチャー。本人いわく、なかなかの実力者でした。しかし、野球肘を発症してしまったところで、大きな転機が訪れます。

「ピッチャーの出来次第で、チームの勝敗が、その他の選手の運命が決まってしまうことに疑問を感じたんです。これは、どうなのかなと。でも、サッカーはみんなで一緒に頑張れるし、サッカーの勝敗はチーム全員で頑張った結果なんじゃないかなと」

そこからの行動力が素晴らしい。サッカーを始めて約2年後には、高校の部活から柏レイソルユースへ転籍。顧問の先生の勧めで、最初は練習生として参加したそうです。現在ほど敷居が高くなかった時代とはいえ、能動的に動かなければステップアップのチャンスはつかめません。運動神経も抜群だったのでしょう。

高校卒業後はドイツへ留学。両親を説得し、当時では珍しい海外でのチャレンジに挑みました。ウンターハッヒング ユースから同アマチュアへと進んだ後、00年に現役を引退して指導者の道に進みます。指導歴などについては、先日更新したトップチーム選手・スタッフのプロフィールをご覧ください。

プロと呼ばれる人たちは、一様に勉強熱心です。本人は純粋に楽しんでいるのかもしれませんが、非常に努力家です。常に成長しよう、最新の情報を取り入れようとする姿勢には、感心するばかり。きっと、松本コーチも自分自身の引き出しを増やしながら、選手たちの成長やチームの勝利に貢献してくれるはずです。

ただ、オフタイムは子煩悩なお父さん。テレ玉『Ole!アルディージャ』のインタビューで答えていましたが、1年弱の1.FCカイザースラウテルン(ドイツ)での研修中は、家族に会えなくて「ホームシックになった」とか。沖縄キャンプ中も、テレビ電話をしては頬を緩めていました。

田口 和生 (たぐち かずお)
週刊サッカーマガジン編集部に勤めた後、スポーツクラブ勤務などを経て、2014年10月より大宮アルディージャ広報グループに。高校選手権の県予選で一度だけ、改修前の大宮サッカー場でプレーしたのが良い思い出。

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