【聞きたい放題】茂木力也「背後を取るタイミングやクロスを見てほしい」

選手に気になる質問をどんどん聞いていく本コーナー。今回はオフィシャルライターの岩本勝暁記者が、開幕から右サイドバックのレギュラーとして奮闘する茂木力也に話しを聞きました。

【聞きたい放題】 岩本 勝暁
僕のよさは走れるところ。 背後を取るタイミングやクロスを見てほしい

まずは失点を減らす

――3月になり暖かくなってきました(インタビューは3月1日の練習後にオンラインで実施)。練習の雰囲気はいかがですか?
「いい雰囲気で練習ができています。今日も厳しいトレーニングができました。キャンプから取り組んできたことがどんどん積み上がっている実感があり、新型コロナウイルスに感染した選手も帰ってきました。個人的にもためになる練習ばかりで、毎日がとても楽しいです」

――第1節は横浜FCに2-3、第2節はホームでアルビレックス新潟に2-2と引き分けました。2試合を終えた段階での手応えはいかがでしょうか。
「どちらの試合も失点が多く、DFとしては納得がいかない試合になりました。連続で失点することがないよう、時間をもっとうまく使えるようになれば、チームとして必ず上向いてくると思っています。ゴールはしっかり取れているので、個人としては失点しないようにもう少しいろいろなスペースを守れるようになりたいですね」

――センターバックやボランチなど守備では複数のポジションをこなせるのが茂木選手の強みです。今の大宮の守備をどのように見ていますか?
「今シーズンは前からプレッシャーをかけていて、後ろもそれについて行って前のスペースを埋める形になります。そこで(マークを)剥がされて相手にスピードに乗られたり、ボールを奪ったあとにすぐに奪い返されたりするなど、僕自身のちょっとしたミスのところから失点につながっている。サイドの守り方としては、背後を取られない守備をもう少し意識しつつ、相手のカットインにも対応しなければいけません。もちろんマッチアップする選手によって対応の仕方が違うので試合ごとの調整が必要ですけど、試合の中でもっと積み上げていくことが重要だと思っています。あとは、1対1になった時の(相手のボールホルダーに)詰めるスピードや距離感を練習の中でもっと追求していきたいですね。サイドバックが相手の攻撃をしっかり止められたらピンチももっと少なくなるので、そこは僕自身の課題です」

矢島慎也とのコンビ

――攻撃に関しては、横浜FCとの開幕戦から前に出る機会が多かったように見えました。
「チームとして相手陣内に入ることができていたので、僕自身も高い位置でボールを受けたり、フィニッシャーになれたりすることができていたと思います」

――相手の背後を取る機会も多かったですね。
「そうですね。前にいたトミくん(富山)がFWっぽい動きをしてくれて、僕は高い位置で相手の背後を取ったり、相手のサイドバックが他に行けないようにピン止めしたりする役目がありました。(ボールを奪われても)戻る走力はあると思っているので、自信を持って高い位置を取っています」

――横浜FC戦の茂木選手のゴールも、高い位置からゴール前に入ったことで生まれたものでした。
「あの位置でヤジくん(矢島慎也)がボールを持ったら、あのポイントに入るイメージは持っていました。僕もヘディングで競り合うのは得意なので、相手の前に入ることだけを考えて飛び込みました。うれしかったけど、(0-2から)1点を返したところだったので、『ここからだ』という気持ちが強かったです」

――矢島慎也選手の同点ゴールもアシストしました。
「ボールがボコボコと弾まないように、丁寧に出そうと思っていました。『あとは決めてください』と心の中でお願いしていました(笑)」

――矢島慎也選手のセンスを感じさせるようなゴールでしたね。
「僕が浦和レッズのユースでプレーしていた頃、ヤジくんはすでにトップチームにいました。練習を見てもうまいなと感じることは何度もあったし、紅白戦でもあのような形のゴールは何度も決めていましたよ」


移籍の決め手は?

――今シーズン、愛媛FCから完全移籍で加入しました。大宮アルディージャを選ぶ際の一番の決め手は何だったのですか?
「霜田さんのサッカーは、レノファ山口FCで監督をされていた頃から『嫌だな』という印象がありました。それに加えて、自分自身も『もっと成長したい』という思いがあったんです。僕のプレースタイルを考えても、硬い守備でカウンターを狙うチームより、自分たちがボールを保持して守備でもアクションを起こしていくチームのほうがやりがいがあると感じていました。そういうサッカーをしていたのが霜田さんのチームで、オファーをいただいた時は即答でした」

――霜田監督とも話をしたのですか?
「はい、ズームで。それ以前は、僕がU-17日本代表に選ばれた時に会っていて、『俺のこと(サッカー)は知っているから』と言ってくれたのが嬉しかったです」

――実際に霜田監督のサッカーを体験してどんなことを感じましたか?
「サイドバックがあれだけ高い位置で攻撃に絡んだり、中に入るなどポジションも自由だし、前線の選手が空けたスペースを僕が埋めたり、そういう頭を使ったサッカーは練習をしていても楽しいです。自分も毎日、まだまだだなと感じながらやっているので、成長するところはたくさんあると思っています」

――チームにはすぐに馴染めましたか?
「キャンプの前から(同じ新加入の)三幸くんと一緒にいることが多かったんです。三幸くんが周りの選手とずっとしゃべっているので、自分はそれについていく感じで、自然にみんなと仲良くなれました。知っている選手がたくさんいたのも大きかったです。僕は江南南サッカー少年団の出身で、(大宮アルディージャジュニアの)マサヒト(小野)やマサト(小島)とは小学生の頃からよく対戦していました。マサヒトやマサトは昔からサッカーがうまくて、なかなかボールが取れなかった。中学生の頃(マガヤサッカースポーツクラブ)もよく試合をしたし、県のトレセンでも一緒になったことがあります」

――埼玉に帰ってきたことを実感することはありますか?
「実家が深谷市で、大宮から近いということくらいですね。困ったことがあったら親も駆けつけてくれるので、すごく助かっています。NACK5スタジアム大宮で行われた新潟戦は、祖母も見に来てくれました。愛媛FCにいた頃は年に数回しか来られなかったので、たくさん見に来てもらえるのはうれしいです」


ケガに強い要因

――昨年は愛媛FCで42試合中41試合に出場、一昨年も40試合に出場しました。長く戦い続けられる要因は何ですか?
「練習後のリカバリーもそうですけど、家では妻が食事の面などですごくサポートしてくれるので、そうしたところが要因だと思います」

――奥様は栄養の勉強もされているのですか?
「資格を持っているわけではないんですけど、いろいろ調べてくれていますね。愛媛FCにいた山瀬功治選手(現:レノファ山口FC)の奥さん(山瀬理恵子さん)がテレビに出るくらい有名な料理研究家で、アスリートを中心にしたレシピ本も出されているんです。当時から、理恵子さんの本を読んで勉強していました。一番好きな料理は生姜焼きで、ホームゲームの時はいつも食べています」

――大きなケガもないですか?
「ケガをしたことがないんです。それはもう、親に感謝ですね」

――一度も?
「捻挫とかはありますけど、練習を離脱しなければいけないような大きなケガはほぼありません。子どもの頃からたくさん走ったりしていたので、体も自然と丈夫になったのかなと思っています」

――2022シーズンも開幕したばかりですが、個人的な目標は何ですか?
「サイドバックですし、10アシストくらいはしたいと思っています。開幕戦でゴールが取れたし、今年はサイドバックでもあれだけ攻撃参加できている。今までは2点が最高だったので、3点以上は……、5点くらい取れたらいいなと思います」

――ファン・サポーターにはどういうところを見てほしいですか?
「僕のよさは走れるところなので、相手の背後を取るタイミングやそこからのクロスを見てほしいですね。また、そこから戻って守備をするところにも注目していただきたいです」

――今年のチームスローガンは“ひたむき”です。茂木選手は、どういうことを“ひたむき”に頑張りたいですか?
「味方がミスをした時にどれだけカバーできるかなど、他の誰かの分も走るというところはやりたいと思っています」

――トップチームの練習はまだ非公開ですが、ファン・サポーターの声は届いていますか?
「開幕戦はアウェイにも関わらず、あれだけたくさんのサポーターの皆さんが会場に来てくださいました。久しぶりにほぼ満員のスタジアムでプレーできて、選手としてはすごくうれしかったです。また、NACK5スタジアム大宮は観客席までの距離が近く、プレーしていてとても興奮します。このスタジアムで勝てたら、相当気持ちがいいですよね。来てくださったファン・サポーターの皆さんのためにも、早く勝点3を届けられるように頑張ります」

岩本勝暁(いわもと かつあき)
2002年にフリーのスポーツライターとなり、サッカー、バレーボール、競泳、セパタクローなどを取材。2004年アテネ大会から2016年リオ大会まで4大会連続で現地取材するなど、オリンピック競技を中心に取材活動を続けている。2003年から大宮アルディージャのオフィシャルライター。

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