【ライターコラム「春夏秋橙」】自信を感じさせてくれた金沢戦の“締め方”

大宮アルディージャを“定点観測”する記者が、それぞれの視点でコラムを執筆する本コーナー。今回は、戸塚啓記者が今季2勝目を挙げたチームの変化について書いてくれました。

【ライターコラム「春夏秋橙」】戸塚 啓
自信を感じさせてくれた金沢戦の“締め方”


2-0というスコアは不安定だ、と言われる。2-1になったら、追いかけるチームが勢いに乗る。試合の行方は分からない、と言われる。

確かにそのとおりではある。しかし、2-0のまま終わる試合はあるし、さらに点差が広がる試合もある。今季の開幕節のように、2-2に追いついたチームが最後に失点する、というパターンもある。勝利から遠ざかっているチームの場合、「0-1から1点取れば流れが変わる」というポジティブなマインドではなく、「今日もまた勝てないのか」といったネガティブな思考が先立ってしまいがちだ。

それだけに、4月27日のザスパクサツ群馬戦はチームの転機となった。

前半を0-2で折り返した時点で、厳しい結末を予想した人は多かったはずである。ところが、後半だけで3ゴールをたたき込み、大逆転勝利をつかんだのだった。

シーズン初勝利を挙げた第10節のジェフユナイテッド市原・千葉戦は、2-0から失点した。87分に1点差に詰め寄られ、そこからはハラハラドキドキの時間を過ごした。

群馬戦は68分に3-2とした。残り時間は20分以上もあり、後半終了間際には11対10になったものの、危険な場面を作られた。試合終了のホイッスルは、歓喜ではなく安堵を運んできた。

ツエーゲン金沢戦は違った。

前半終了間際に河田篤秀がゴールを決め、良い時間帯にリードを奪った。しかし、後半開始後すぐに追いつかれてしまう。それも、シュートブロックに入った選手に当たってボールの軌道が変わり、GK南雄太の逆を突くというアンラッキーな失点だった。

運やツキに恵まれない形での失点は、今季何度も見てきた。それによって勝利に見放されてきたのだが、群馬戦の勝利がチームに精神的な落ち着きをもたらしたのだろう。試合運びに慌てるところはなく、安全第一になるところもなく、落ち着いて2点目を狙っていく。

81分の決勝点は、選手交代が的中した結果だ。アシストを記録した小島幹敏と、ヘディンシュートを決めた中野誠也は、後半途中からピッチに立っている。

ここから先の戦いぶりは、千葉戦と群馬戦と明らかに違った。「何としても逃げ切らなければ」といった気持ちに縛られることはなく、冷静に時計の針を進めていった。金沢にビッグチャンスを与えずに、試合終了の笛を聞いたのだった。

4月23日の第11節から、中2日または中3日で5連戦が組まれている。ゴールデンウィークが後半に差し掛かっていくなかで、4日にアウェイで大分トリニータと、8日にはホームでいわてグルージャ盛岡と対戦する。

開幕戦から勝利に恵まれないことで、チームは徐々に自信を失っていった。プレーの選択が消極的になり、相手に脅威を与えられず、一つのミスで試合が崩れていった。

だが、流れは変わった。トレーニングで積み上げたものを実戦で表現し、それが結果につながっていく成功体験を得たチームは、確かな自信を手にしている。

今季のJ2は各チームの実力が拮抗しており、中位から下位は1試合で順位が入れ替わる。5連戦を終えたチームがどこまで順位を上げているのか。次の試合が待ち遠しい。


戸塚 啓(とつか けい)
1991年から1998年までサッカー専門誌の編集部に所属し、同年途中よりフリーライターとして活動。2002年から大宮アルディージャのオフィシャルライターを務める。取材規制のあった2011年の北朝鮮戦などを除き、1990年4月から日本代表の国際Aマッチの取材を続けている。

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