【ライターコラム「春夏秋橙」】台頭する新入生。激化する世代間競争

ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回はアカデミーの定点観測も続けている土地記者が、プレミアリーグを戦うU18のある変化についてお伝えします。


【ライターコラム「春夏秋橙」】土地 将靖
台頭する新入生。激化する世代間競争

ちょっとした異変、と言ってもいいかもしれない。高円宮杯U-18プレミアリーグが開幕してまだ2カ月。にも関わらず、すでに1年生が何人も試合に絡んでいるのだ。

開幕戦の川崎フロンターレU-18戦では、大西海瑠が左サイドバックで先発出場。磯﨑麻玖は開幕戦から途中出場を続け、第4節・前橋育英高校戦で初先発し、初ゴールを挙げた。第6節・桐生第一高校戦では斉藤秀輝が右サイドバックで先発フル出場を果たし、菊浪涼生はボランチで途中出場し勝利に貢献した。第2節・JFAアカデミー福島U-18戦でベンチ入りにとどまった登丸楓吾を含めれば、実に5人もの新入生が早くも戦力になっている。大西は「プレミアで、1年生でベンチに入るだけでもすごい」と先輩たちに言われたそうで、より意気に感じている様子だった。

大西海瑠 選手

斉藤秀輝 選手

菊浪涼生 選手


過去にまったくいなかったわけではない。現在トップチームでプレーする奥抜侃志や吉永昇偉も、U18に昇格したばかりの春先からプレミアに出場していた。逆に言えば、それほどの素材であれば、ということである。

U15U18では、やはりフィジカル面での違いが大きい。個人差はあるものの、体格差、スピードの違いに当初は面食らう。まずは日々の練習で慣れ、練習試合や全国大会の予選などで場数を踏んで、夏ぐらいから徐々に頭角を現していくのが例年の過程である。

今年は逸材が多いのか。U18の森田浩史監督は「チーム事情ですよ」と笑った。開幕直後は特に3年生に離脱者が多く、なかなか戦力が整わないという側面はあったが、だとしても、実力が伴わなければ公式戦での起用はできないはずだ。

彼ら新1年生を中学1年生のときから指導し続けてきたU15の島田裕介監督は、現状について「技術的なところや考えるスピードは、たぶんやれるだろうと個人的には思っていました」と話す。

「中学3年生のときも、磯﨑以外は相手が自分たちよりも大きいというのが多々あって、大きな選手とやることに慣れている。みんなボールを受けることを怖がらない選手たちなので、そこもやれている要因かなと思いますね」(U15島田監督)

今後は強さが要求されてくる。体の大きい磯﨑ですら「フルで出られていないのでもっと体力を付けたいし、もっと筋トレして当たり負けないようにしたい」と課題を掲げる。皆、技術力や判断力は持ち合わせているだけに、強度を身に付ければ成長曲線は急上昇していく可能性を秘めている。

磯﨑麻玖 選手



もちろん上級生も手をこまねいているわけではない。3年生の離脱者は徐々に戦列復帰を果たし、作本優真、勇内山遥海はそれぞれ自身のプレミア初ゴールでチームの勝利に貢献。2年生では、すでにレギュラーの市原吏音、種田陽に加え真壁拓海がポジションを確保し、浅井一彦、依田功太、安部直斗、石川颯らが次の機会をうかがっている。

1年生の躍進が、世代間競争を一気に激化させた。こうした争いが選手個々の能力を上げ、選手層の厚みが増すことでチーム力の向上へとつながっていく。一足飛びに成長していく若い力の戦いぶりから、今後も目が離せない。

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