オフィシャルライターが選ぶマンスリーMIP【2022年5月】

その月で最も印象的な活躍をした選手をオフィシャルライターが選ぶマンスリーMIP。5月のマンスリーMIPは、チームのアシスト王でもあるプロ2年目の柴山昌也を選出した。アカデミー生え抜きの19歳に戸塚啓記者が話を聞いた。


憧れる存在から、憧れられる存在に
文=戸塚 啓

中心メンバーとしての今季

チーム総得点のおよそ3分の1が、彼のアシストから生まれている。

柴山昌也の左足から、だ。

ここまで6アシストはチーム最多にしてリーグ2位タイだ。

プロ2年目の今季は、第20節まで全試合に出場している。スタメンは16試合を数え、プレータイムはチームで6番目だ。昨季は31試合で1006分だったが、今シーズンはすでに1376分を記録している。当初は、守備を課題に挙げていた。試合終盤まで走り切れるスタミナ作りにも取り組んできた。

「守備の感覚はつかんできていますし、走れるようになってきています。試合でしか学べないことを、学べているなと思います」

本職の右サイドへ

チームは5月末に監督交代へ踏み切った。

「前監督の霜田さんには、たくさん試合に出させてもらいました。その部分では自分も責任を感じていますし、ピッチに立って戦っている自分たち選手が、もっともっとやらなきゃいけないと感じています。でも、相馬さんが監督になって、守備の強度はホントにいままでより確実に高くなると思うので、失点を減らして自分たちの攻撃でしっかり点を取れれば、勝点を積み重ねていけると思います」

霜田正浩前監督のもとでは、左サイドで起用されることが多かった。[4-3-3]でも[4-4-2]でも、スタートポジションは左サイドが多かった。

しかし、相馬直樹監督の就任とともに、右サイドが定位置となっている。馴染み深いサイドへ帰還したのだ。

「左サイドでプレーすることによって、プレーの幅が広がったと思います。いろいろなシステムに対応していかなければいけないので、[4-3-3]のウイングもすごく勉強になっていました。左サイドにも慣れてきたなという感覚はあったんですけれど、でもやっぱり自分はもともと右サイドの選手なので。久々に右サイドからの景色を見て、やっぱり左とはまったく違うなと、ホントに楽しく感じました」

5月にはU-21日本代表候補のトレーニングキャンプに招集された。現在進行中のAFC U-23アジアカップの代表入りはかなわなかったが、23年のパリ五輪は現実的な目標となっている。

5月のキャンプは短いものでしたが、レベルの高い選手たちと練習と試合をして、J1でプレーしている選手から学ぶところも多かったです。誰もがインテンシティもモチベーションも高くやっていたので、ホントに楽しい3日間になりました。自分のストロングポイントをしっかり出せば、このなかでも戦っていけるなと感じましたし、パリ五輪のチームにもしっかり食い込んでいきたいです」

国際舞台でプレーするためにも、大宮アルディージャで結果を残していかなければならない。柴山自身、数字にはこだわっている。

「攻撃の選手なので、得点やアシストでチームに貢献しなければならない。試合で使ってもらっているので、そこに対しての責任は感じています。得点を伸ばしていきたいです」

相馬監督の初陣となった第19節の東京ヴェルディ戦では、32分に右サイドからカットインしてフィニッシュへ持ち込んだ。後半開始とともにピッチに立った第20節の水戸ホーリーホック戦でも、右サイドからのカットインで左足を振り抜いた。

「東京V戦のあの場面は、ファーストタッチで1枚目の相手をうまくはがすことができました。水戸戦も決め切りたいという気持ちが強くあり、自分で狙っていきました」

生え抜きとしての想い

チームの勝利に貢献したいとの思いに、芯を通しているのがアカデミー出身選手としての自覚だ。Jr.ユースからオレンジのユニフォームを着る19歳は、後輩たちの視線を感じている。

「アカデミーの選手たちから、自分を目指していると聞いたりして、そういう存在になったんだなと感じます。大宮アルディージャに憧れている子どもたちや、チームを応援してくれている皆さんのために、J1へ戻らなければいけない。僕がJr.ユースに在籍していたときは、J2で優勝して翌シーズンにはJ1で5位になったりしていました。僕自身はその当時のイメージが強いので、必ずJ1に戻さなければいけないと思っています」

ファン・サポーターへの思いも、胸に刻まれている。コロナ禍でプロデビューした柴山は、声援を受けてプレーしたことがない。それでも、スタンドと一体になって戦う感覚を得ている。

「ファン・サポーターの皆さんの存在は、間違いなく自分たちを後押ししてくれていますし、結果が出ていないなかでも応援してくれていて、ホントに結果で応えたいというのは、自分だけじゃなく選手みんなが思っていることです。どの試合でも勝点3を死に物狂いでつかみにいって、これからどんどん順位を上げていって、ファン・サポーターのみなさんとたくさん喜び合いたいです」

柴山が右サイドから仕掛けると、スタンドが「期待」の色に染められていく。声を出すことはできなくても、スタンドの熱量が上がるのだ。

来月2日には20歳の誕生日を迎える。第24節のいわてグルージャ盛岡戦が行われるその日までに、柴山はシーズン初ゴールを記録できるか。1点目だけでなく、2点目、3点目をマークし、チームに勝利をもたらすことができるか。チームトップのアシストを、さらに伸ばすことができているか。

背番号48を背負うアタッカーは、チーム浮沈のカギを握る。


戸塚 啓(とつか けい)
1991年から1998年までサッカー専門誌の編集部に所属し、同年途中よりフリーライターとして活動。2002年から大宮アルディージャのオフィシャルライターを務める。取材規制のあった2011年の北朝鮮戦などを除き、1990年4月から日本代表の国際Aマッチの取材を続けている。

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