緊急開催! 番記者座談会 前編

3回目となる番記者座談会を緊急開催! シーズン折り返しを迎えた6月某日、クラブOBの渡邉大剛さん、MCタツさん、エルゴラッソの須賀大輔記者に、いろいろあった前半戦の戦いを振り返っていただきました。
※3名の意見は、クラブの公式見解ではありません。


開幕前の不安が的中?

須賀:これまでの2回はシーズンオフと開幕前に開催してきましたが、今回は緊急招集を受けまして、シーズン中に初めて開催することになりました。よろしくお願いします。昨季に引き続き、まさかの監督交代となってしまいましたが、お二人は今季の前半戦をどのように振り返りますか?

大剛:開幕前の座談会で霜田監督の戦い方やシステム、誰が何点を取れれば、みたいな話をしたと思いますけど、イメージしていたものと実際現場で起きていたことがうまくいかなかったからこそ、この結果になってしまったのかなと感じています。「(クラブが目標として掲げた)6位に入れる可能性はあると思うけど、10位前後が現実的な順位で、昨季に残留争いをしたことを踏まえれば、段階を踏んでいくことがよいと思う」とそのときにお話させてもらったと思います。フタを開けてみれば、この結果は想定外ではなく、悪いほうの想定が当たってしまったなという感想です。

須賀:開幕前の座談会ではホワイトボードを使いながらあれこれといろいろなことを話しましたけど、「GKの3人体制は不安」と言っていたら長期離脱者が二人も出てしまうとか、「守備面で見ればDFの層は薄い」と指摘したら失点が止まらなかったとか、「ウイングの守備力がカギを握る」と心配していたら前線からのハイプレスが思うように機能しなかったとか、不安要素として挙げていた部分が全部と言っていいくらい悪い意味で現実になってしまっていましたね。

タツ:開幕前に「常時6位以内」との目標を聞いたときに高望みじゃないかなと正直思いました。現実を見ると、2020年は15位で2021年は16位、2年連続でその成績ということは決して運が悪かったでは片づけられず、真摯に受け止めないといけないクラブの実力だと思います。本来は着実にステップアップしていかないといけないのに高望みをしてしまうと、目の前の課題が見えなくなってしまう。改めて今季はその怖さを思い知らされました。

前半戦低迷の要因とは

須賀:開幕から9試合勝てなかったですが、サッカーの内容はどう見ていましたか?

タツ:霜田監督のやりたいことと選手ができることにギャップがあったと感じています。昨季の岩瀬監督のときも言ったと思いますけど、いまのチームでどういうサッカーをやるべきで、そのためにどういう監督を連れて来るか。そこがうまくハマっていないのが現実だと思います。いまのトップチームはアカデミー出身選手を軸にしているから、ある程度高い技術がベースにあって、それを生かすために霜田監督がつなぐことを意識するサッカーをやっていたけど、やはり技術だけではボールをつなぐことは難しいと証明されてしまった前半戦だったと思っています。

大剛:霜田監督の掲げるサッカーを体現しようとスタートして、最初は勝てないなかでも目指すやり方で結果を出そうとする姿勢でいたと思います。とは言え勝てないと「このままで大丈夫?」と思ってしまう。システムで見ても、攻撃的な[4-3-3]だったのが、失点を減らさないといけないと[4-4-2]に変えた。そこでチーム全体に少しずつでも迷いが生じてしまっていると感じました。ただ、勝てないときにそうなってしまうことは仕方ないことではあります。「やり方を変えないとまずいよね」となることは理解できますね。でも、そうなってしまった原因を考えると、取るべき勝点を取れていなかったからで、横浜FCとの開幕戦も引き分けで勝点1を取れていればまったく違った結果になって可能性もあるのかなと。あそこで勝点を逃してしまったことが、その後も勝点を積み上げられなかったことに響いてしまったと感じています。あとは、かなり失点がかさんでいた。守備陣の問題もあるけど、全部が守備陣だけの問題ではなく、前からプレッシャーに行くスタイルを目指していたのに、そのプレッシャーのかけ方や追い込み方のところで連動性が足りていなかった。結局それで自陣までボールを運ばれて全体が戻らないといけなくなって、自分たちがやりたいサッカーを相手にやられている。そういう流れを抜け出せていなかったように見えていました。

須賀:悪い流れの歯止めがきかなかった感じですよね。ここがダメだから直そうとすれば、今度はあそこがダメになってしまうみたいな。どこから何を直そうと探っている間に試合数を消化してしまって、ハッキリと立ち戻る場所もなく、最後は自信を失くしてしまっているように映りました。

ターニングポイントとなった敗戦

須賀:苦しい戦いが続いた前半戦でしたが、ターニングポイントを挙げるとすればどの時期になりますかね?

タツ:不運もあったけど、岩手戦を本来のスケジュールでできなかったこと。あの時期は霜田監督も幅を広げた戦い方を取り入れ始め、それなりに結果が出始めていた。まだ安定感はなかったけど、霜田監督のなかでも新しいやり方にトライしていて、勢いで勝点は取れていた。その勢いを削がれてしまったことは非常に不運だったと思います。

須賀:確かにゴールデンウイークあたりはチームとして戦い方が少しずつ形になってきていて、1ずつですけど勝点は積み上がっていた。初の連勝もして4試合負けなしでホームでできる岩手戦に勝てば、良い形で連戦を終えられるタイミングでしたからね。

タツ:結局、10日後に延期となった試合で負けてしまう。コロナをきっかけに結束するチームもけっこうあるなかで案の定、難しい試合になってしまったと思います。

大剛:順位の近い相手にホームでは勝たないといけない。そこで勝点を落としてしまったことは相当痛かったですね。あそこで勝てればグッと上に行けるチャンスが広がっていたと思うけど、反対に岩手に勢いを与えてしまう形になりましたからね。

須賀:まさに岩手戦の結果と内容が監督交代の決定打になってしまったことを考えても、大きなターニングポイントであったことは間違いないですね。

監督交代の意図

タツ:いまのJリーグも含めたグローバルスタンダードを見ると、なにか一方向に尖ったサッカーではなく、何でもやれないとダメであり、何でも指導できる監督でないと勝てない流れがあると思っています。その意味で霜田監督は自分の尖ったサッカーを見せたい方向に引っ張られ過ぎてしまったように見えます。そこは現代サッカーとかみ合っていないと感じていました。その間もクラブとの対話のなかで現実路線に振る部分はあったと思うけど、現実路線を取り入れた戦い方をしていたなかで岩手に負けるなら、“ダメ”と判断するのは監督交代の一つの基準として悪くなかったと思うし、筋は通っていると思います。そこで原さんが連れてきた監督が相馬監督であることも非常に筋の通った人選だったなと。これまでの監督交代と比べればチグハグな感じはなかったですね。

大剛:監督交代は監督だけの問題ではなく、プレーしていた選手にも責任は絶対にあって、僕もそうでしたけど、それはいま在籍している選手たちは重々感じているはずです。そこで原さん来てくれて、今まではつぎはぎのように誤魔化していた部分をちゃんと厳しく言える方に来てもらえたので、ようやく体制が整ったとは思います。正直、監督交代のタイミングで言えば、僕はもっと霜田監督でやると思っていました。そこは勇気ある早い決断だったと思っています。もちろん、サッカーの本質だけでは勝てないですけど、いまの大宮に足りないのはまさにそこで、そこをしっかりと落とし込むだけでけっこう変わる部分はあると思います。それに適した人材が相馬監督であったのかなと。ただ、ここからどうやって勝点を積み、順位を上げていけるかは別の話でもあると思っています。

須賀:原さんが来てからの動きは早かったと思います。ただ、クラブとしては昨季から今季にかけて起こったことを見直さないと、また同じようなことを繰り返してしまう危険性はまだ残されていると思います。

タツ:原さんが来てくれて、今回の監督交代は今までの監督交代とは違うと思っています。今までは、過去の実績や評判などの高い監督を選ぶ傾向があって、いまチームに必要なものがなんなのかをちゃんと落とし込めないまま次の監督を選んでいたように感じます。原さんは「ここを改善したいからこの人を呼んでくる」とサッカーの中身を見て選んでいる。そこは決定的な違いかなと。期待を込めて言うならば、「ようやく大宮が始まったな」と思っています。

須賀:やはり、原さんにフットボール本部長として来てもらえたことは大きいですか?

タツ:サッカーって正解がないので、“決める”ことが大事なんですよ。誰かが“これ”と決めないといけないし、決めればいい。今までの大宮は何となく良い選手をそろえていた。いろいろな評価項目があるとすれば、その総合点が高い選手を連れて来ればいいみたいな。そうではなく、いまのチームに足りないところとサッカーの中身を見て監督も選手も選ぼうと、原さんが来てくれたからにはなるかなと思っていますし、それは相馬監督のサッカーを見ていても感じます。

大剛:大宮のこれまでの歴史やフィロソフィーを考えると、一番のベースは堅守速攻だと思っています。結局は守備がベースにあるクラブですから、原さんがそれを体現できると思った監督を連れて来てくれたことは間違っていないと感じています。ただ、結果が出ないと勝負の世界なのでどうなるか分からない。またこれで結果が出ずに原さんと相馬監督がいなくなってしまうなら、イチから作り直さないといけなくなる。もうこれ以上、短期間で監督交代が繰り返されることはクラブとしてもよくないので、長いスパンでチームとクラブが成熟していくためには時間をかける必要があると思います。

須賀:まさにいまの大宮に必要なのは継続や我慢だと思っています。

タツ:その意味では、原さんに長くいてもらわないとまた変わってしまう。原さんに長くいてもらうことがポイントの一つかなとは思っています。

須賀:どこかで誰かが“基準”を設けておかないと元に戻ってしまいますからね……。

タツ:大剛さんが仰っていたように堅守速攻のカルチャーが大宮には間違いなくあって、それは本当に強みだと思います。その一方、何度も言っていますが、いまのサッカーは何でもできないと勝てないから、霜田監督が残してくれたつなぐ部分もしっかりと持っていないといけない。バランスで考えれば6:4くらいで堅守速攻が上回っているくらいが大宮の着地どころかなと。いま相馬監督が来てくれて堅守速攻の部分を「6」くらいまでに引き上げようと着手してくれると思っています。

あぶり出された課題

須賀:開幕前に「常時6位以内」と「2点取って走り勝つサッカー」を掲げながら、それとはかけ離れた結果になってしまった前半戦を総括してもらい、前編を締めくくりたいと思います。

大剛:まず、1試合2点取るための攻撃の量と質の両方が足りなかった。攻めるために自分たちでボールを持って圧倒的に攻めるのか、前からハメてショートカウンターに行くのか、攻撃の回数が少ないうえに失点が安いものばかりで、掲げていたものとは真逆の内容で目標とは程遠い結果になってしまいましたよね。そうなってしまった一つの原因として浮かぶのは、個人名を挙げてしまって申し訳ないですが、小野くんが左SBでずっと起用されていたこと。彼の良さは攻撃にあって、SBというポジションは本当に難しくデリケート。クロス対応でもクリアミスでも一つのプレーが失点に直結してしまう。それが小野くんにとってもかわいそうなくらい如実に出てしまっていた。試合に出ている以上、本人の責任でもあるし、チーム全体の責任でもあるし、起用し続けていた霜田監督の責任でもある。その代償は想像以上に大きかったと思います。チームとしてそれを補うだけの得点力もなかった。率直に言えば、本職の左SBを補強できなかったクラブ、チーム全体の力不足だったと思います。

タツ:そもそもクラブの姿勢として本当にサポーターに対して正直で真摯に向き合っていたのかなとは思いますし、そこは問われるべきだと思います。「大幅に予算は削るのに順位は上げます」って嘘をつかれたような気持ちになるし、サポーターに対してすごく失礼。正直に説明して欲しかったかなと思います。原さんはそういう説明がうまい人だと思うので、いまからでも「すみませんでした」と謝って、「目標を下方修正します」と言うこともありだと思います。昨年の座談会でも言ったけど、「J1に昇格します」と言わないと営業の方たちがスポンサーさんに営業をしにくくなることも分かりますけど、近年の状況を考えれば、3カ年計画でも何でもいいから、何らかの形で時間がかかることをしっかり伝えることが必要だと思っています。あと、ピッチ上のことで言えば、アカデミー出身の選手たちのプレーが物足りなかった。もっと戦うべき。彼らは技術があるけど、サッカーインテリジェンスが足りていないと思います。そこは厳しい評価をせざるを得ない。それを自前で上げられないクラブも問題。だからこそ、相馬さんはそこを上げてくれる監督なのかなとは思っています。そんなに難しいことを要求することなく、サッカーの本質的な部分を合理的にやらせていく。そこは期待したいですね。

須賀:昨季と同じ光景を見ているような前半戦であり、シーズン後に検証しないといけない問題が山積みではあると思いますが、後編では、相馬監督になってどうチームが変わっていき、何を目標に戦っていくべきか、お話しできればと思います。

後編へ続く

FOLLOW US