【聞きたい放題】貫真郷「仲間から信頼を勝ち取れる選手になりたい」

選手に気になる質問をしていく本コーナー。今回はアカデミーから今季トップチームへ昇格したルーキーの貫選手に話を聞きました。

聞き手=平野 貴也

仲間から信頼を勝ち取れる選手になりたい


天皇杯2試合に出場

――高校を卒業してからだとまだ3~4カ月しか経っていないですが、トップチームで活動を始めてからは半年が経過しました。開幕から2試合でベンチ入り。天皇杯で2試合にフル出場しました。どのような手応えですか?
「開幕からの2試合は、ほかの選手の事情もあってベンチ入りする形になりましたが、プロの試合の雰囲気を感じることができて、良かったです。自分に足りない部分があって、なかなか試合に出られない時期が続きましたけど、5月末に監督が交代になったときには、出だしが大事だと思って特長をアピールしていったつもりですし、それが天皇杯につながったのかなと思っています。天皇杯で2試合出場できて、やれる部分もあったし、実戦で気付けたことが多かったです。緊張はなかったですし、良い入り方ができたと思います。家族も2試合とも見に来てくれて『良い選手と対戦できて良かったね』と言ってくれました」

――逆に、悔しい思いをしている部分は?
「リーグ戦には出場できていないので、試合に出られないということに対しては、いつも悔しく思っています。U18のときに、スタッフから『プロ1年目は、厳しいぞ』と言われても、すぐに出場してみせると思っていましたが、あれは本当だったな、甘くなかったなというのは、いますごく感じています」

――天皇杯3回戦、鹿島アントラーズ戦は、憧れていたNACK5スタジアム大宮が会場でした。プレーした感触は、どうでしたか?
U18のときにプレミアリーグで何度かプレーしたことはあったのですが、雰囲気が全然違いましたし、楽しかったです。試合に出ないときにメインスタンドの上から見て想像していたものよりも、視野を広く保てないなという難しさも感じました。でも、スタンドにいるファン・サポーターの方の姿が目に入って、勝たなければいけないと思いました」

プロ入りのきっかけ

――アカデミーのころにスタンドから見て「いつか自分が」と思っていたのでは?
「ゴール裏から見たこともあります。34年前にJ2で上位を争っていたときですね。ただ『あのピッチに立ちたい』という思いはありましたけど、プロになれるような選手ではなかったので、イメージはできなかったです」

――では、高卒プロという進路は、いつから意識したのですか?
「高校2年の終わりころに、センターバックからサイドバックになって試合に出られるようになりました。次の年の始めにトップチームで負傷者が多いからという理由から、キャンプに呼ばれて、それから練習にも呼んでもらえるようになり、『もしかしたら……』と思うようになりました」

――サイドバック転向が大きな転機になったのですね。コンバートの経緯は?
「その年、夏に予定されていた日本クラブユース選手権がコロナ禍の影響で冬に開催されたのですが、右サイドバックの先輩が何人もケガをしてしまって、人がいなくなったのがきっかけでした。丹野(友輔)さんは、僕がU12のときも監督で、そのときに右サイドバックで起用してもらったことがあって、そのイメージが残っていたからじゃないかと思います。やってみたら楽しくて、自分でも『ありなんじゃないか』と思いました。ロングスローも、そのときからですね。(スローインを投げる機会が多い)サイドバックになったから投げてみようと思ったらけっこう飛んだので、使えるかなと思ってやるようになりました」

――てっきり、適正ポジションとして説明を受けてコンバートされたのかと……。
「全然、そういう感じではなかったです()

――U12とU18で丹野さんが監督、U15で監督だった岡本隆吾さんは現在、トップチームでフィジカルコーチをしています。よく知るスタッフがクラブに多いと思います。
「チームにはスムーズに入っていきやすいです。言葉を交わすときも、ずっと見てきてくれているから納得できることも多いし、こちらも理解しやすいので、自分の特長を知ってくれている人が身近にいる環境は、自分にとってプラス材料だと思っています」

基礎を学んだジュニア時代

――貫選手はジュニアからの生え抜きですが、アカデミー時代の思い出は?
「小学4年でジュニア(U12)に入ったときは、周りがみんなうまくて、一番下手だったので、練習が終わる度に落ち込んでいたのを覚えています。当時コーチだった平岡靖成さんに基礎、基本を教わって、そこから自信がつくようになって成長できたという感触があるので、あれはすごく大事な時期だったと思っています」

――ジュニア時代のプレーを見たことがあるのですが、特別に速いとかドリブルで抜いていくという分かりやすい武器を持った選手ではなく、中盤でパス回しがうまく、いろいろなことをこなせる選手という印象でした。
「個人ではあまり特長がないタイプだったのではないかと思います。メンタルも弱かったですね。中学生のころは特に不安定で、ちょっと試合に出られないと落ち込んでしまって、それが次の日の練習に影響してしまうこともあったのですが、U18で寮に入ってからは、少し落ち着けるようになったと思います」

――トップチームにアカデミーOBが多いですが、どんな雰囲気ですか
「年の離れた先輩とも話しますね。みんなが優しいですし、上下関係の壁をなくしてくれていると感じます。(大山)啓輔君とか(小野)雅史君は、よく後輩とコミュニケーションを取ってくれます。(トップチームに同時に昇格した山﨑)倫とは、U18のときから仲が良いので、一緒にいる時間も多いですけど、サッカーの話はあまりしないですね」

U18とプロの違い

――U18からトップチームに昇格して、正式にトップチームの一員となって、驚いたことはありましたか?
「プロになってからはトップの選手とも競争ですし、生活もかかっているので、責任と覚悟を持って臨んでいます。最初は、そういうのをプレッシャーに感じる部分はありました。サッカーの面では、トップチームはプレー強度も高いし、選手同士の要求も多いので、U18とはいろいろな部分で基準が違うので、最初は違いを感じましたし、スタッフから求められることも増えました。でも、選手同士のところでは、U18のときに練習生で参加していたときから厳しく言ってくれる選手もいたので、あまり違った雰囲気というのは感じていないです」

――練習生のときは、誰が厳しく指摘してくれたのですか
「ヤマ君(山田将之)ですね。ヤマ君がセンターバックで、僕が右サイドバックだったんですけど、ポジショニング、特に攻撃面で指示を出されていたというか、怒られていたというか。練習試合でも厳しく接してくれて、ありがたかったです。でも、怒られたままで、その後、話す機会がなかったので、トップチームに入ったときはヤマ君が怖かったです()。でも、実際には、全然違って優しい人でした。積極的にいろいろな選手とコミュニケーションを取ってくれる明るいタイプだったので、話しやすかったし良かったです。いまは、プレー中も互いの意見を言い合える関係性になっています」

――山田選手に「怖い人だと思っていた」と伝えたのですか?
「言えないです()

バスケ選手の道もあった?

――クラブ公式サイトのプロフィールにあるQ&Aでは、仲が良いのは武田選手と書いてありました。
「車で買い物に連れて行ってもらったことがあります。プライベートでも仲良くしてくれていますし、天皇杯のときも右サイドで組んで、すごくやりやすかったです」

――引き続きQ&Aについて聞きたいのですが、「サッカー選手になっていなかったら?」の項目にバスケットボールと回答していました。サッカー以外にも習っていた競技があったのでしょうか。
「いや、サッカーだけですね。大宮アルディージャのジュニアに入るまではピアノを習っていましたけど、いまは弾けません()。バスケットは、父が大学までやっていたので、小さいころに遊んでもらうときによくやっていました。父の影響で僕もアニメの『SLAM DUNK』を見て好きになったので、サッカーじゃなければバスケットに挑戦してみたいです」

――もう一つQ&Aから。「子どものころの憧れの選手」はメッシ。「最も影響を受けた人」は酒井宏樹。「好きな海外のサッカー選手」はプジョルということなのですが……。
「バラバラですね……()。酒井選手は、自分がサイドバックになってからお手本にしている選手です。日本代表で活躍している姿も見てきたので。身長も同じくらい。プレースタイルは少し違うと思いますけど、見ていると、自分に足りないところがよく分かりますし、真似できたらと思う部分が多く、影響を受けた人として名前を書かせてもらいました。プジョルはキャプテンシーや気持ちの部分で、ディフェンスの選手にすごく大事な部分を持っている選手だと感じています」

今後の目標

――では、話をサッカーに戻しますが、ホームでのプレーは1試合。ファンやサポーターの方々は、まだ貫選手のプレースタイルを把握し切れていない部分もあると思います。どんな特長を知ってほしいと思っていますか。また、どんな選手になりたいと考えていますか?
「攻撃参加が好きですし、クロスはすごく自信があるので、そういう場面を作っていきたいです。ビルドアップ、パスのつなぎも見てほしいプレーですね。これから、誰が監督でも使いやすい、仲間から信頼を勝ち取れる選手になりたいです」

――U-18、U-19の年代別代表も経験していますが、代表チームでの目標は?
9月からU-20アジアカップの予選が始まるので、メンバーに入りたいです。そのためにも、リーグ戦で試合に絡めるようにならないといけないので、いまは目の前の試合に出て結果を出すことが目標ですけど、年代別代表でも活躍して、いろいろな人の目に留まるプレーヤーになりたいです」

――声援が解禁になれば、自分を応援してくれるチャント(応援歌)を聞ける日も来るのではないかと思います。ファン、サポーターへのメッセージをお願いします。
「アカデミーのころから応援してくださっている人たちに恩返しをしたいですし、観てくださる人に、自分のプレーを楽しんでもらえるようになりたいです。やっぱり、応援をされると結果で応えたいという気持ちは強くなりますし、応援される選手になりたいと思っています。まだあまり出場機会がなくて、プレースタイルを知ってもらえる機会も少ないですけど、苦しんでいるチームを自分が良い方向に持っていくという気持ちを持ってプレーするので、応援よろしくお願いします」



平野 貴也 (ひらの たかや)

大学卒業後、スポーツナビで編集者として勤務した後、2008年よりフリーで活動。育成年代のサッカーを中心に、さまざまな競技の取材を精力的に行う。大宮アルディージャのオフィシャルライターは、2009年より務めている。

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