【ライターコラム「春夏秋橙」】アカデミー育ち大学経由。再びNACKのピッチに立つ日まで

ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回はアカデミーの定点観測も続けている土地記者が、来季の加入が内定している東洋大の高柳郁弥選手に話を聞きました。


【ライターコラム「春夏秋橙」】土地 将靖
アカデミー育ち大学経由。再びNACKのピッチに立つ日まで

郁弥が帰ってきた。

大宮アルディージャは623日、東洋大に所属する高柳郁弥の2023シーズン加入、および今季の特別指定選手認定を発表した。2013年の今井智基(現ウェスタン・ユナイテッドFC/オーストラリア)2019年の小野雅史に続きクラブ史上3人目となる、アカデミーから大学経由での新加入選手となる。

ユースチームではエースナンバーの10番を背負い、チームの日本クラブユース選手権準優勝、そして高円宮杯プレミアリーグ昇格に貢献したセンターハーフだったが、その年のトップチーム昇格を果たすことはできなかった。同期の吉永昇偉がプロになったなか、もちろん悔しさはあった。

「でも、大学でまたより高いレベルに触れていくなかで、正直プロに上がれなかった悔しさよりも、これでは(トップチームには)上がれない、という感覚がありました。それが自分を見つめ直すきっかけになったと思います」

東洋大ではあらゆる面を鍛え上げた。弱点と自覚するフィジカルを強化、そして、新たなサッカー観に触れることもできた。

「アカデミーではJr.ユースからユースとほとんど同じメンバーで、みんなが大宮のサッカー哲学を分かったうえでやっていたのですが、大学ではいろいろな環境からいろいろな考え方を持った選手が集まってくる。そのなかで、自分がやりたいことを伝え、相手を尊重して新しいサッカーを知るという部分で、アカデミーからさらに成長できたと思っています」

プレー面では、主戦場のボランチに加え、サイドハーフを経験したことが大きかったと言う。

「点を取らなければいけないポジションなので、正直言えばそれまで薄かった縦の意識、ゴールへの意識を強く持つようになりました。自分が使われる立場になったので、そちら側の動き方や考え方を理解できたのは大きかったです」

大宮が提携する東洋大在学というメリットも生かし、大宮の練習やトレーニングマッチに参加するたびに、通用する点や課題となる点を洗い出し、見つめ直していった。

そうしてつかんだトップチームへの道。だが、そこからプロデビューの日はわずか2週間足らずで訪れた。

2022明治安田J224節・いわてグルージャ盛岡戦。高柳は試合メンバーとしてチームに帯同。ベンチに入り、後半17分に途中出場を果たす。交代直後は滑りやすいピッチに苦しんだが、それも徐々に順応。右サイドハーフからパスを出し、仕掛け、シュートを放っていった。プロデビュー戦としては及第点を与えられるものとも思えたが、チームの敗戦とも相まって自己評価は少々辛口だ。

「自分の持ち味であるボールコントロールで(相手DF)1枚はがしたり、ゴール前まで持っていくシーンは何回か作れたとは思いますが、その後に相手の背後を狙うパスを出すとか、もう一つ自分でしかけてゴール前まで飛び込むとか、そうしたプレーができたわけではないので、これで満足してはだめだと思います」

大学のスケジュールもあるなか、今年のトップチームでの試合出場の可能性は不透明だが、それでも期待は尽きない。現在着けている背番号32は、ユースで最初に背負い、NACK5スタジアム大宮で1年生ながら高円宮杯プレミアリーグに初めて先発出場したときの、思い入れのある番号でもある。32番のホーム再デビューが待ち遠しい。

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