オフィシャルライターが選ぶマンスリーMIP【2022年7月】

その月で最も印象的な活躍をした選手をオフィシャルライターが選ぶマンスリーMIP。7月のマンスリーMIPでは、最終ラインで奮闘を続ける新里亮選手にフォーカスしました。


あえて言うなら結果がすべての答えになる

文=戸塚 啓

勝利でしか変えられないこと

加入1年目の今季、新里亮はほぼすべての試合に絡んでいる。リーグ戦27試合出場はチーム4位タイで、プレータイムは5番目に多い。相馬直樹監督就任後は、6月12日のブラウブリッツ秋田戦から8月7日の横浜FC戦まで、10試合連続でフルタイム出場している。

「今季の自分のパフォーマンスは納得いくものでなく、まずは自分のパフォーマンスを上げていかなければと思いながらやってきました。試合に勝てていないと、みんなメンタルが難しくなるし、やろうとしていること、やっていることに、なかなか自信を持ちにくくなって、エネルギッシュなプレーを出しにくくなってしまう。そういうなかで失点をすると、僕らが悲観的になっていなくて、精神的に落ちてもいないけれど、相手にはそう見える、そう感じられるというところがあると思うんです。それってたぶん、僕たちの心の持ち方も大事ですけれど、やっぱり勝っていくことでしか変えていけない部分でもあると思うので、この難しい状況のなかでどう勝つか、しかない」

プロキャリアをスタートさせた水戸ホーリーホックで、J2残留を争った。ジュビロ磐田とヴァンフォーレ甲府ではJ1残留を懸けて戦い、J2降格の憂き目に遭った。

昨季のV・ファーレン長崎では、勝てない時期と快進撃の時期を過ごした。32歳となったCBは、様々な経験に照らし合わせながらチームを見つめている。

「いまのチーム状況を考えると、自分のパフォーマンスはともかくとして、チームについて言及していかなきゃいけない立場だと思っています。僕は感情が表に出るタイプではないので、普段からいろいろな選手といろいろな話をするように意識しています」

ピッチ上で納得できるパフォーマンスを発揮し、チームの勝利に貢献したうえで、チームメートにアドバイスや意見をしたいというのが、新里の本心なのだろう。しかし、一刻も早くチームを浮上させなければ、取り返しのつかないことになりかねない。自身の思いを脇に置きつつ、新里はチームのために格闘している。

「何か一つを変えれば改善されることではないと思うし、いろいろな要素があって、いろいろな感情があってというところで、なるべくいろいろな選手と話しながら、スタッフともコミュニケーションを取りながら、どうやっていい方向へ持っていこうか考えています。答えは正直ないと思いますし、出ないと思っていて。あえて言うなら結果がすべての答えになると」

刻々と迫る終盤戦

リーグ戦はすでに「ラスト3分の1」に突入している。いつもなら中盤戦の印象を与える8月が、今季は終盤戦の入り口なのだ。

「ここから一つひとつの試合の重みが増していって、各チームがホントに勝点を計算する時期になると、より一層プレッシャーがかかってくる。その時期を迎える前に自分たちが修正できるのか。前向きな要素があって、自信を持てるなかで終盤戦を迎えたいし、そこまでに勝点を稼ぎたい」

横浜FC戦に続き、8月は上位対決が続く。ベガルタ仙台はJ1の自動昇格を争っており、FC町田ゼルビアとモンテディオ山形はJ1参入プレーオフ圏をうかがっている。

「そういう相手から勝点をつかめれば、ポジティブな要素は強くなると思います。ただ、いま僕たちがやろうとしているのは、相手によって自分たちが何か変化させることではない。もちろん相手の対策は打ちますけれど、やることが大きく変わるわけではないので、そこはあまり気にしていないというか。上位相手だから、下位相手だからということは、個人的には考えていません」

7月30日の水戸戦から、袴田裕太郎とCBのコンビを組んでいる。翌節の横浜FC戦では、岡庭愁人が右SBで先発した。シーズン途中加入の選手を迎え、新里には最終ラインを束ねていくことが求められる。

「袴田とは水戸戦で初めてコンビを組みました。まだ練習でもたくさんコミュニケーションが取れていたわけではなかったので、難しい部分はありましたけれど、お互いにいろいろな選手とやっていますし、違和感なくできました。SBに岡庭も入ってきていますし、最終ラインで初めて組む選手が多くなるので、そこは試合中の声掛けや普段のコミュニケーションを大事にしつつ、自分のプレーでメッセージを表現できたらなと思います。最終ラインだけではなく、チームとしてのオーガナイズを後ろから発信していかなきゃいけないし、そういう意味でも自分のプレーがしっかりあって、そこに影響力みたいなものが乗っかってくると思うので、自分のやるべきことに集中することも大事だと思っています」

みんなの力をチームのために

アウェイの水戸戦は、声出し応援の段階的導入運営検証試合だった。検証試合は随時追加されており、NACK5スタジアム大宮にもファン・サポーターの声援が響く日も近いかもしれない。

「水戸戦の声出し応援は感慨深かったというか、『サッカーってこういう雰囲気がいいんだよな』とあらためて思いましたし、そのなかで勝つことが僕たちの仕事です。なかなか勝てていないなかでもネガティブに考え込んでいるわけではなく、この状況を楽しむぐらいの気持ちでやっていこうと思っているし、それを周りに広げていきたいですね」

8月最初の一戦となった横浜FC戦は、3-2で勝利した。首位を走る相手から、価値ある勝点3をつかんだ。

「みんなそれぞれに気持ちを持ってやっているし、試合でも自分のいいところを出そうとしているし、自分のいいところを消してでもチームのやり方に徹しようとしている選手もいる。そういうみんなの力とかエネルギーが、ホントにチームの力になるように、みんなが自分のプレーに、チームを勝たせることに、責任を持たないといけないと思うんです」

8月は週に1試合のペースでリーグ戦を消化していくが、ナイトゲームでも暑さはしぶとく居座る。体力的な消耗が激しいなかでは、90分をどうマネジメントするのかが大切になってくる。後方からのコントロールが大事になる。

背番号17の存在が、クローズアップされていくはずだ。


戸塚 啓(とつか けい)
1991年から1998年までサッカー専門誌の編集部に所属し、同年途中よりフリーライターとして活動。2002年から大宮アルディージャのオフィシャルライターを務める。取材規制のあった2011年の北朝鮮戦などを除き、1990年4月から日本代表の国際Aマッチの取材を続けている。

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