【聞きたい放題】袴田裕太郎「相当な覚悟を持ってきた。残留は絶対にしないといけない」

選手に気になる質問をしていく本コーナー。今回はシーズン途中で加入した袴田裕太郎選手です。横浜FC時代にも袴田選手を取材していた須賀記者が、古巣・横浜FCとの対戦が終わったあとに、西大宮の練習グラウンドで当人を直撃しました。

聞き手=須賀 大輔

「相当な覚悟を持ってきた。残留は絶対にしないといけない」


好きな色がオレンジという偶然

――大宮に加入して数週間が経ちました。チームの雰囲気や環境には慣れましたか?
「マサ(小野雅史)やマサくん(田代真一)()雄太さんなど知っている選手もいましたし、アルディージャの選手は絡みやすい選手が多いですね。先輩方はすごく優しく接してくれましたし、カワくん(河田篤秀)やクリくん(栗本広輝)など多くの選手がお風呂場などピッチ外でも話しかけてくれて、本当にすんなり溶け込めました」

――もともと、大宮アルディージャというクラブにはどんなイメージがありましたか?
「昔からJ1にいるイメージはずっとありました。自分が大学3年、4年のときはJ2だったと思いますけど、上位にいましたし、横浜FCに入ったプロ1年目は昇格を争って、強いチームのイメージを持っていました。あと、僕自身、色だと昔からオレンジがすごく好きなんですよ。だから、(ホームデビュー戦となった第30節・)横浜FC戦も入場してきてゴール裏を見たときに『オレンジに染まっているな』と思っていました()

――それでは、私物や私服にもオレンジが多いんですか?
「いや、そこは勇気がいるかな()。オレンジの洋服って難しくないですか……。ユニフォームのオレンジの感じはすごく好きな色合いですね。自分のなかでは落ち着く色です」

――オレンジに囲まれ、すでに充実した時間を過ごせているようですね。
「そうですね()。何より試合に出させてもらっていますし、いまは残留争いをしていますけど、毎日が楽しく充実しています」

古巣戦での手ごたえ

――移籍後初出場となった第29節・水戸戦とホームデビュー戦となった第30節・横浜FC戦を振り返ると、どんな感想ですか?
「水戸戦は守備がぜんぜん狙いどおりにできなかったですね。ハイラインで前からボールを奪いに行こうとしたけど、それができなかった。相手がシンプルに蹴って来たにせよ、自分たちのラインをコンパクトに保つことができず、カウンターに出て行けなかったし、シュートも少なかったですよね。反対にその反省を生かせたのが横浜FC戦だと思います。相手があまり蹴ってこないでGKを使いながらポゼッションしてくれたこともありますけど、自分たちからチャレンジできていたと思います。そのなかで前線の選手が3点を取ってくれましたし、チームとしても気持ちのこもった試合ができたと思います。

――水戸戦後に「攻守でもっと統一感を持って戦わないといけない」と話していたことが横浜FC戦ではできていたように感じました。
「守備で自分たちからスイッチを入れてボールを奪えることが多かったと思います。特に後半はそれがよくできていた。2点目は自分が高い位置でインターセプトできて、そこから(奥抜)侃志がドリブルで運んでゴールまでいけたので、あの場面のようなプレーを今後は増やしていきたいですね」

――その横浜FC戦は古巣戦でもありましたね。
「古巣を相手に試合をすることが初めてだったので、もちろん燃えてはいましたけど、大学時代から仲のよい岩武(克弥)(武田)英二郎さんなど知っている選手もスタッフもいて、ワクワクしている感情のほうが大きかったですし、実際に対戦してみてすごく楽しかったです。サウロ・ミネイロとも言葉は分からないけど、楽しくバトルできました()

即決した移籍の打診

――移籍を決断した理由を教えてください。地元のクラブであり、憧れであったジュビロ磐田から半年で移籍したことは少しびっくりでした。
「小さいころからずっとジュビロの選手になって、ヤマハスタジアムでプレーすることは夢でした。それに、地元のクラブで両親が近くにいましたし、個人的に応援してくれている人がいっぱいいたことも分かっていました。だから、そこは本当に覚悟を持って磐田には行きました。ただ、最初のほうこそメンバーに絡めていたけど、その後はコンディション面などでいろいろとあって試合に絡めない時期が続き、それでも居残り練習やメンバー外練習では『いまは我慢の時期』と自分に言い聞かせながら向き合い取り組んではいましたけど、それでもやっぱり、サッカー選手としての時間は決して長くはないですし、正直な気持ちで言えば、試合に出られないのは面白くなかった。そんな状況のなかで大宮に声をかけていただき、ジュビロのことは大好きだけど、すぐに『行く』と返事をしました」

――移籍を決断するにあたり、誰かに相談しましたか?
(黒川)淳史には相談しました。家族ぐるみで仲が良く、ご飯を食べる機会も多かったので大宮のことはよく聞きましたね。淳史は、『大宮は本当に良いチームで馴染みやすいし、優しい選手もいっぱいいて雰囲気はいいよ』と言ってくれました。あとは、マサにもチームの現状や雰囲気を聞いていました」

――横浜FCで一緒だった南選手と田代選手もいますね。
「重鎮ですね()。あの二人がいることはすごく頼もしいですし、また一緒に戦えてうれしいです。まあ、マサくんはツンデレなので本当に喜んでくれているか分からないですけど()、横浜FCのときからすごく可愛がってくれていました」

スタイルの違い。新たな発見

――サッカーの話で言えば、プロ入り後、横浜FCでは下平隆宏監督や早川知伸監督といったボールを大切にするスタイルの監督のもとでプレーし、磐田でも伊藤彰監督は同じようなスタイルを掲げていたと思います。その一方、いまの大宮は違うスタイルでのプレーが求められていると思います。
「監督の求めているサッカーやスタイルに順応していくことがプロとして大事だと思っています。今まで自分がやってきたサッカーの感覚や学んだこととは変わってくる部分も多いですし、実際にプレーしているなかで『こんなにシンプルにプレーしていいんだ』とも感じているので、そこは割り切ってやるようにしています。まだ、多少慣れないことはあるので、そこは早く順応して自分の特長を出していければといいと思っています」

――極端に言うと、今まで正解だと思っていたプレーが不正解だったり、その逆で不正解だと思っていたプレーが正解だったりするような感覚ですか?
「少し大げさかもしれないですけど、今までやってきたことを覆されている感覚はあります。もちろん、監督によってそれぞれ考え方はあって、そこに適応してやっていきたいと思っていますけど、ちょっと体に馴染むまでは時間がかかるかもしれないですね。自分のなかでの軸はブラさずにいろいろなサッカーに順応していくことが大事だと思っています」

――新たな発見もありますか?
「自分のなかでは簡単にボールを失うことがイヤなので、正直、簡単に蹴ることへの抵抗もありますけど、いまのスタイルではボールを持ったときにはまず前線の選手の動きを見ることは意識しています。逆にジュビロのときはボールを失いたくない気持ちが強くて、手前ばかりを見て近くの選手に付けてしまうことが多く、FWの選手が動き出していても、そこにシンプルに出すことができていなかったと思います。その意味では、いまは前線の選手の動きを見逃さずにパスを送る感覚を身に付けられていると思うので、ポジティブに考えています」

――背が高くて強くてただ蹴るだけのCBが欲しかったならオファーは来ていないとも思います。
「そうですね。最初の2試合はシンプルにやることをちょっと意識し過ぎてしまって、ふんわりとしたロングボールを蹴ることしかできていない反省はあります。もっと低いボールで対角の選手の足元に付けるとか、SBに付けて運んでもらうとか、チームのスタイルは理解しながらもつなぐパスは増やしていきたいです」

4バックのCBでも問題ない

――横浜FC時代は左SBのイメージが強かったのでCBは新鮮です。
「自分の特長が最も生きるのは3バックの左だと思っています。ただ、ジュビロのときはスタートポジションが3バックの左でしたけど、自分たちがボールを持つときは可変して、3バックの右の選手が右SBのような立ち位置を取って自分は2CBの左という感じだったので、まさにいまやっているポジションでした。だから、大宮で4バックのCBをやることに抵抗はぜんぜんなかったです」

――てっきり、左SBに入って小野選手を中盤で使うものだと思っていました。
「それはマサにも言われましたね()。だから、自分の左にマサがいることは大学時代を考えればあり得ないですし、考えられないですね()。でも、昔から明治って『SBの選手が育つ』と言われていますからね」

――実際、左SB・小野雅史はどう映っていますか?
「まだ信じがたいですよ()。ただ、マサは足元の技術がちゃんとしていて失わないのでボールを預ける安心感があるし、少し苦しい状況で預けてしまってもドリブルで運んでくれるのでとても助かります」

――プロ1、2年目と比べるとたくましくなりましたね。横浜FC時代は練習中によく怒られているイメージがあったので。
「マジで一番怒られていましたからね()。ただ、大卒のプロ4年目でもういい歳ですから。プロに入ってからはいろいろな選手とプレーさせてもらいましたし、移籍も経験して多くの監督のもとでやってきて、いろいろと揉まれた感覚はあります。そのなかでも特に横浜FCでの3年間は大きかったですね。カズさん(三浦知良)や俊さん(中村俊輔)、大さん(松井大輔)ともプレーできましたし、個人的には伊野波(雅彦)さんと一緒にプレーできたことで多くのことを学ばせてもらいました。それこそ、最初はボロカスに言われて、嫌われているんじゃないかなというくらいすごく指摘されましたけど、練習中はたくさんアドバイスをくれて、練習後は筋トレも一緒にやることが多くて、プライベートでもすごくお世話になりました。伊野波さんは代表経験もあって海外でのプレー経験もあって、いろいろな話を聞かせてもらいました。自分はいろいろな人と話して考えを聞いたり参考にして吸収したりすることが好きなので、偉大な人たちと関わらせてもらったことで成長できたと思います。

――最後にサポーターにメッセージをお願いします。
「この苦しい状況のなかで加入したからには、相当な覚悟を持ってきました。残留は絶対にしないといけないですし、もっと上の順位で終われたらいいと思っているので、本当に11日を大切にしたいです。残り試合は目の前の試合に勝てるように全力でプレーすることを約束するので、ぜひスタジアムに足を運んで応援してください」

――セットプレーからの得点は期待していいですか?
「ゴールを決めて、あのお立ち台に立ちたいです! あとは、早くホームで声出し応援の試合を戦いたいですね」

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