ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回は、戸塚啓記者に今季の戦いを振り返っていただきました。
【ライターコラム「春夏秋橙」】戸塚 啓
19位という現実。這い上がる覚悟を
悔やまれる開幕2戦
厳しい1年を過ごした。
シーズン開幕前は、「勝点68」を目標とした。そのとおりの数字を残していれば、4位でフィニッシュしたことになる。目標設定に間違いはなかったが、実際には勝点43で19位に終わった。
10勝13分19敗は、クラブワーストである。勝利数こそ昨年を上回ったが、「60」を目標とした得点は「48」にとどまり、「44以下を大前提」とした失点は「64」にのぼった。
21年に16失点を喫したラスト15分の失点を減らすことも、今季のテーマだった。しかし同じ「16」を数え、後半アディショナルタイムの失点はリーグワーストの「8」である。
逆転勝利は第12節のザスパクサツ群馬戦に限られた。逆境をはねのける反発力、苦しい時間帯をしのぐ粘り強さ、接戦をモノにする勝負強さといったものを、磨き切れなかった印象だ。
開幕2試合の結果が違っていれば、との思いは募る。開幕節は横浜FCのホームへ乗り込み、0-2から2-2まで持っていった。しかし、終了間際のPKで敗れた。
第2節のアルビレックス新潟戦は、64分まで2-0とリードした。そこから2失点し、2-2のドローに持ち込まれた。横浜戦を引分けで終わらせ、新潟戦を勝ち切っていれば、その後の歩みは違うものになったのではないだろうか。両チームがJ1昇格を勝ち取ったことを考えても、この2試合が持つ意味は小さくなかったと思うのだ。
相馬直樹監督の下でメンバーが固まったシーズン終盤は、戦いぶりが多少なりとも安定してきた。10月5日のモンテディオ山形戦では、89分の得点で同点に持ち込んだ。直後のレノファ山口FC戦も、2-1で勝利をつかんでいる。
足りなかったのはやはり、安定感になる。試合のなかでの安定感であり、内容のある試合を続ける安定感だ。
育成型へと進む改革
20年から3年連続で二ケタ順位に終わり、15位、16位、19位と後退している。シーズン途中の監督交代も2年連続だ。J1昇格を目標に掲げつつも、中長期的な視点に立つべきなのだろう。
原博実フットボール本部長の下で、すでに改革はスタートしている。アカデミー出身の選手が多い特長を生かして、「育成型のクラブ像」を描く。
夏の補強もその考えに基づいた。20年はFWイバ、21年はGK南雄太とFW河田篤秀と、即戦力を補強してチーム浮上への起爆剤とした。イバと河田は完全移籍だった。
22年も夏の移籍市場で動いたが、右SBの岡庭愁人、左CBの袴田裕太郎を期限付き移籍で獲得するにとどめた。二人は最終ラインを担い、J2残留に貢献した。
22年は外国籍選手のいない編成だった。クラブ史上初めてのことである。予算的に外国籍選手を獲ることは可能だったと聞くが、これもまた「育成型」への第一歩だったのだろう。
いずれにしても、2年続けてJ2残留争いに巻き込まれた事実を、5年連続J2で戦っている現実を、真正面から受け止める必要がある。J1を経験したことのあるクラブとしてのプライドは一度脇へ置いて、J2から本気で這い上がっていく覚悟を固める。覚悟を行動で示す。それこそが、23年の第一歩だと考える。