番記者座談会 前編【聞きたい放題】

シーズン終了後の11月某日、クラブOBの渡邉大剛さん、MCタツさん、エルゴラッソの須賀大輔記者による番記者座談会を開催! 厳しい戦いが続いた2022シーズンを振り返っていただきました。
※3名の意見は、クラブの公式見解ではありません。

相馬体制で見えた変化

須賀:今年もこの季節がやってきました。もう4回目です。

大剛:もう4回目ですか。

須賀:昨シーズン後の振り返りが1回目で、今季の開幕前が2回目。そして今季のシーズン途中に緊急招集があって3回目をやりました()

タツ:緊急招集ありましたね()

須賀:さて、本題に入っていきたいと思います。今回は相馬直樹監督になってからの戦いぶりを中心に話していきたいと思います。まずは大剛さん、率直に振り返ってどのような印象をお持ちですか?

大剛:霜田さんから相馬さんに代わって大きく変ったのは守備のベースのところだと感じています。戦う部分。球際や切り替えで負けない。走り負けない。それらを前提に、攻撃は前へ入れてセカンドボールを拾い、もう1回前へ入れてと、やり方がはっきりしましたよね。それが浸透すると、少しずつ遅攻もできるようなってきた印象はあります。ただ、それは相馬さんが落とし込んだというよりは、選手たちが試合を重ねるなかで自分たちで見つけたやり方かなと。だから、今回大事な見方は二つあると思っていて、一つは自分たちで少しずつ変化しながら残留できたこと。二つ目はこれをベースにしながらも来季はどう戦っていくか。そこに関しては、あらためて相馬さんの提示が大事になってくると思っています。

タツ:勝点で言えば昨季よりも『1』多く取っている。そう考えれば、今季の残留争いは厳しいものだったと言えると思います。とは言え、この順位は大きな問題というのが率直な意見ですね。霜田さんから相馬さんに変えてうまくいった点はすごくよかったと思いますが、相馬さんに代えたタイミングでもっと分かりやすいメッセージを発信してほしかったし、共有してほしかった。それは前任者の悪口を言うような感じになってしまう部分もあるから言いづらいところではあるけれど、霜田さんのときはどうしてもつないで崩すための足元へのボールが増えて、単純に裏に走る回数やパワフルさを欠いていた。それを相馬さんになってアバウトでもいいから前へ入れて、頑張って走って追い付くところを強引にでも引き出そうと原さん(原博実フットボール本部長)は思っていたと思います。実際、練習や試合を見ても裏にボールを出して頑張りましょうという感じだった。原さんには「裏へのボールを増やして走る回数増やしますので、そこを追えているかしっかりサポーターの皆さんみていてくださいね」ぐらいに具体的に言ってもらいたかったすね。今の時代サッカーもプロセスエコノミーの時代に入っていると思うんですよ。特にJ2のカテゴリーはJ1に上がっていくまでの過程をサポーターにお金を出してもらうという意味ではプロセスエコノミーといえると思うんです。そのためにはサッカーの内容を簡単にわかりやすくシェアして一緒にそこを見ていきましょうよってやったほうがいいんじゃないでしょうか。サポーターもいきなり結果は求めないはずです。ちゃんと途中経過をシェアして「いまはこれが出来ているからOK」みたいな指標があったほうがよかったと思いますね。

須賀:監督交代を機にスタイルが真逆になり、選手たちに混乱が起きていたと思いますが、そのあたりはどう感じていましたか?

大剛:本質の部分で言えば、それでも結果を出していく選手でないと高いレベルではやれないし、結果を出さなければ次の年の契約を勝ち獲れない。だから覚悟を決めてやるしかない。それはプロとして大前提だと思います。一方で、真逆なスタイルだと、今季は霜田さんが編成にも入って霜田さんのサッカーを体現するための選手が多く来たけど、最後に、そういう選手たちがどれだけピッチに立っていたかというと、ほとんど出ていない。そこの難しさはあったと思います。もちろん、選手側も相馬さんのサッカーにコミットしようとはするけど、自分の特長と照らし合わせたときに「なかなか難しい」と感じる選手が多かったのではないでしょうか

タツ:ストレートに言っちゃえば、霜田さんのやり方がうまくいっていなかったら、勝つためには切り替えやすかったとは思っています。その逆でうまくいっているのに勝てないから監督を代えるときのほうが難しい。あのときは何かを変えないといけない段階ではあったから変えた。最後のほうは、霜田さんもやり方を少し変えて成績もよくなっていた時期もあったけど、そこで少しずつ積み上げていくのではなく、全部を変えて、分かりやすい方向に振った。「ここは継続しよう」と中途半端に残さなかったのはシンプルでよかったと思っていますけどね。

効果的だった夏の補強

須賀:夏の補強で袴田裕太郎選手と岡庭愁人選手が来たことは大きかったですね。

タツ:袴田選手と岡庭選手を連れてきたことはすごく評価されるべき事案だと思っています。少ない予算のなかで獲得したあの二人がフィットしたから地獄を見なかったわけで、そういう選手を連れて来た点は評価されるべきだと思っています。それはサッカーをちゃんと分かっている人が関わっているからだと思うし、原さんの人脈も大きいんじゃないでしょうか。何人も獲れる予算がなかったなかで的確な補強をできたことはすばらしいと思っています。

大剛:同じ日本人とは言え、夏の補強は助っ人なので二人にも責任感はあったと思います。二人とも試合に出ていない状況である意味拾ってもらった身で、「ここで結果を残せなかったらこの先はない」という覚悟もあったはず。二人は試合に出続けて成長していったし、チームとしても最終ラインが安定した。本当にこの二人の獲得がなければ残留は難しかったかもしれないですね。

須賀:もう一つ、相馬体制になって象徴的だったのはセットプレーからの得点だと思います。担当していた北嶋秀朗ヘッドコーチは「セットプレーは42試合を通した物語」と言っていて、実際にセットプレーからの得点は20点でリーグトップでした。

タツ:僕はセットプレーでしか取れないと思っていたくらいです……()。ただ、チャンスが多くないぶん、セットプレーの集中力は高かったし、取れそうな雰囲気はありましたよね。

大剛:セットプレーはとても重要ですし、それで取れればめちゃめちゃ楽です。大事な試合ほどセットプレーで取ってそのまま勝っちゃうみたいなこともある。いまは得点の3割がセットプレーと言われているけど3割も取れないチームはある。そういう意味でも本当にハマったと思いますね。

須賀:セットプレーは練習時間を割いたぶんだけ、取れるようになるものですか?

大剛:そうでもないです()。讃岐時代、北野監督のときにセットプレーの練習に2時間使っていたこともありますけど、いま思えばやり過ぎでしたね(苦笑)。どこかで「もういいでしょ」ってなっちゃう。だから、時間と結果はそんなに比例しないかなと。それよりも集中力と、いまはデザイン。相手の守り方を分析してウィークポイントと照らし合わせながらやる。最初の1本目は本当に大事だと思っています。

今季の上積みを来季へつなげる

須賀:そんなこんなで残留は勝ち取りましたが、残留が決まったレノファ山口FC戦後に相馬監督が「本来の目標とは程遠い結果になってしまった」と話しているのを聞いて、ハッとしました。最初は「勝点2ずつを積み上げてプレーオフを目指す」と言っていたと思いますが、相馬監督の采配と成績はどう見ますか?

タツ:内容の向上と選手の成長が見えて、サッカーの内容が固まってきてからはすごく評価できると思っています。横浜FCとベガルタ仙台に連勝したところがハイライトで、その後、その時期に活躍していた奥抜侃志選手がいなくなってしまったのにもかかわらず、ちゃんと形にした。前線の補強はなかったなかで対応したところはさすがだなと思っていました。

須賀:中・長期の視点で考えれば、相馬さんの路線で来期以降も続けていくことに納得ですか?

タツ:続けてほしいと思っています。コロコロ変えるのが一番よくない。いまは積み上がってきていると思うから、それをしっかりと積み上げていってほしい。来季はできるだけ相馬さんの理想の編成を整えて戦ってほしいです。

大剛:今季で言えばいる選手でよく耐えた印象はありますね。2トップがトミ(富山貴光)と中野(誠也)くんに固定されてからは、中野くんはゴールを取っていたし、トミの貢献度はめちゃくちゃ高かったと思う。いまできるベストメンバーを見つけられた点は評価できると思います。来季に関しては、予算面も考えても相馬さんの続投がいまの最大限だと思う。ここで変えたらファン・サポーターは「なんで?」となる。その意味でも来季はどういう選手を獲ってきて戦うかが本当に大事になる。予算がないなら作るしかない。スポンサー料も大事だけど、アカデミー出身選手たちを中心に育てて高く売ってクラブにお金を落とす。日本だとまだまだビジネスの観点でサッカーを捉えているクラブは少ないけど、ヨーロッパのクラブはうまい。そこのモデルケースは作っていったほうがいいと思いますね。

須賀:クラブとしては2年連続で残留争いをしたことは重く受け止めないといけないと思います。

タツ:フロント批判になっちゃうと思うけど、あえて言わせてもらうと、今季はシーズン途中に10億円に迫る予算削減があったと発表がありました。このご時世の影響もありそれはある意味で仕方がない。ただ、予算が下がったなかでやっていかないといけないとなったときに、シーズン最初は「予算は減ったけど強化費は減っていない」とか「外国籍選手を獲らないはチーム力を高めるため」といった説明は、納得できない人が多かったのではないでしょうか。

中・長期の視点を見せてほしい

須賀:2年連続で残留争いに巻き込まれてしまったいまの力を認めないといけないですよね?

大剛:本当にその通りだと思います。今季の開幕前、クラブは「プレーオフを目指す」と言っていたけど、この座談会で僕は「難しいと思う。よくて10位前後で、ひとケタ順位で終われればよいかな」と話しました。ただ、そこすら届かなかった。その原因は霜田さんに編成を任せ過ぎたことや、そもそも霜田さんに任せないといけないような状況だったことが大きいと思います。そこで原さんが来てくれて、社長、強化部、監督とちゃんとしたラインが整理され、少しずつよくなっていきそうかなと感じています。来季に向けては予算の問題もあるでしょうけど、限られたなかでもできることをやっていかないといけない。こうなってしまった以上、いますぐにではなく、中・長期的にJ1に戻るためにどうするべきか、何をやるべきか、それを1個ずつ、何年かけてでもやっていくしかないと思いますね。

タツ:大剛さんが言ったように、いまの大宮には中・長期的の目線が必要だと思います。監督に任せきりだと短期の視点しかなくなってしまう。監督はそのシーズンのことしか考えないけれど、強化部は中・長期でチームを見る必要があります。監督が何と言おうと、強化部は言うべきことはちゃんと言わないといけない。監督の短期プランとは別軸で、強化部は中・長期のプランをしっかりと動かさないと、状況は変わらないと思っています。原さんが来て少しずつ変わるのか、このオフは、そこを一番期待していますね。

須賀:いろいろな課題や問題は残っていますが、最後は明るい話題で締めたいと思います。今季のMVPを挙げるとすればどの選手でしょうか?

タツ:袴田選手しかいないでしょ。チームを変えてくれた。とにかくかっこよかった。

大剛:柴山くんは頑張ったと思います。ほとんどの試合に絡んだと思いますし、成長したなと。まだまだ成長しないといけないけど、周りを使えるようになってアシストもすごく多かった。J2でもトップクラスの数字を残したので今後、楽しみですね。アカデミー出身の選手が頑張ってくれないと、育成型クラブをうたう意味が薄れてしまうと思っていますからね。

須賀:志村選手ですかね。彼がいなければ残留はなかったかもしれないかなとも思っているほどです。キャラクターもよくてチームにすぐ馴染んだことも大きかった。今季途中から来たことを忘れている人も多いのではないかなと思うくらい()。それくらいピッチ内外での貢献度は高かったと思っています。

※後編に続く

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