【聞きたい放題】高柳郁弥「どれだけ自分を追い込めるかが大事」

選手やスタッフにピッチ内外に関わらず様々な質問をしていく本コーナー。今回はアカデミー出身で、今季、東洋大学から加入した高柳郁弥 選手に話を聞きました。

聞き手=須賀 大輔

「どれだけ自分を追い込めるかが大事」


大学経由での帰還

――新体制発表会から1週間が経ちました。プロになった実感は出てきていますか?
「何か特別な感情などが沸いている訳ではないですけど、昨季、JFAJリーグ特別指定選手として試合にも出させてもらったのである程度のイメージはあります。そのときから、『プロになるんだ』、『こういう環境でやれるんだ』と思っていたので、それが毎日の生活になる感じですかね」

――東洋大学での4年間はJr.ユースとユースとプレーしてきた大宮に戻るために費やした時間でしたか?
「トップチームに上がれなかった悔しさはありましたし、4年間で戻れるなら大宮に戻りたいとは常に思っていました。一番の目標はプロサッカー選手になることでしたけど、大宮に戻れるのがベストな形だと思っていました」

――大宮への思いを糧に頑張ってきた部分はありましたか?
「アカデミー時代の同期はもちろん、先輩も後輩も試合に出ているので応援はしていました。また、東洋大学はアルディージャと提携していて距離も近く、練習試合に参加させてもらうなど関わりは多かったので、自然と意識はしていましたね」

――Jr.ユースとユースの同期は誰になりますか?
「今季から愛媛に行った吉永昇偉が同期ですね。1つ上が(奥抜)侃志で1つ下が髙田颯也です(徳島)。あと、自分が高3のときの1年生が柴山(昌也)と大澤(朋也)になります」

――彼らと切磋琢磨してきた訳だと思いますが、ユースからトップチームに上がれないと分かったときの心境は覚えていますか?
「何となく上がれないだろうとは思っていました。1年生のときから試合に出させてもらっていましたけど、プロになった先輩たちと比べると自分の実力が足りていない、プロになれるレベルにいたかと言われればそうではないと、分かっていました。悔しさはありましたけど、もっとやらないといけないと思っていたので、大学を経由して戻ってこようという思いでやっていました」

――4年後、その思いが現実になります。加入が決まったときはどんな思いでしたか?
「昨年は勝負の年だと思って取り組んでいたなかで早い段階で内定をいただけて、うれしさよりも、肩の荷が下りて、ホッとした気持ちが強かったですね」

――ご両親や周囲の反応はどうでしたか?
「自分は兄がいて、大宮ユース、東洋大学と同じルートを歩んできました。兄は黒川淳史くん(町田)と同い年でその代は4人ほどがトップチームに昇格しましたし、今年、東洋大学の4年生は自分を含めて7人くらいプロになるので、両親からすると、身近にプロになる選手が多くいたので、特別感よりも『ここからが大変だよ』と言われました()。その分、周囲の人から言ってもらえた『おめでとう』などの言葉をもらったときに『プロになることはすごいことなんだな』と実感しました。また、兄は喜んでくれていますね。内定が決まったときには、仕事終わりに電話をくれて、すごくうれしかったです」

――新体制発表会の場では早速、ユニフォームを着用しました。
「またアルディージャのユニフォームを着られることに喜びを覚えました。中学、高校と応援していた立場なので、その憧れていた舞台に立てたうれしさはありました」

――当時、印象に残っている選手はいますか?
J1にいたときのことはよく覚えています。トミくん(富山貴光)や仁くん(泉澤仁)のプレーはスタジアムで観ていたのでので、応援していた選手と一緒にプレーできるのはすごく不思議な気持ちです」

――今度は、ご自身が応援される側になります。
「すごいことですよね()

4年間で伸びたことは?

――大学4年間で意識して取り組んだことや伸びた実感のあることを教えてください。
「フィジカルは強化してきて体重も増えました。あとは、ユースのときはアルディージャ独自のサッカーを磨いていて、そこに強みはもっていましたけど、サッカーはチームメイトありきです。ユースのメンバーとなら自分はうまくできるけど、メンバーが代わったときに同じようなプレーができるかというとそうではなかったので、違うスタイルのサッカーで育ってきたメンバーのなかでどれだけ自分の力を出せるか。そこはすごく求められましたし、伸びたと思っています」

――大学サッカーを経験した選手のほとんどがメンタル面の成長を挙げます。
「僕もメンタル的にはだいぶ鍛えられました。1年生の最初は試合に出られていたけど、夏を過ぎてから試合に出られなくなって、2年の頭もBチームからのスタートでだいぶ落ち込んでいました。ただ、2年生になってボランチだけでなくサイドハーフをやるようになり、そこでリバウンドメンタリティーを働かせて這い上がってこられたのでメンタルは強くなったと思います」

――特長やプレースタイルを教えてください。
「ボールコントロールには自信があります。また、幅広いエリアを動いてプレーできるのは自分の強みだと思っています」

――[4-4-2]のポジションに当てはめるならば、どこでのプレーをイメージしていますか?
「ボランチかサイドハーフになると思っています。ボランチなら縦への意識をチームに植え付けたり、縦に動いたり、運動量は求められると思っています。サイドハーフも縦横無尽に走ることが求められると思いますけど、[4-4-2]ならばサイドハーフが一番変化を付けられるポジションだと思っているので、どれだけ周りと違いを作れるかだと考えています」

――中村憲剛さんを参考にしていると聞きました。
「小学生のころから好きです。本も読みましたし、ずっと好きですね。足元の技術の高さや視野の広さなど憧れているところはたくさんありますけど、足にタコができるくらいインサイドキックの練習をしていたとか、高校までは背が低かったとか、どんなことがあっても挫けずにやり続けて日本代表まで昇りつめたのはすごいと思います。いつか自分もそうなりたいです」

――チームにはすっかり馴染んでいるように映りますが、お世話になっている先輩はいますか?
「石川俊輝選手は大学も一緒でボランチをやるならポジションも同じなので尊敬しています。プレーを見ていてもそうですし、いろいろと考え方は参考にしていきたいです」

――今季はチームとしてチャレンジ・チャレンジャーの言葉を大事にし、ポジション争いもフラットだと思います。
「チームとしてもチャレンジャーの姿勢を大事にしていますけど、自分自身もプロ1年目でチャレンジャー精神をもってやっていかないといけないと思っています。相馬監督が、練習から頑張っていればメンバーに入れてくれる監督であることは昨季の時点で分かっているので、がむしゃらにやり続けていきたいですね」

――どんなところをアピールしていきたいですか?
「試合に出るのが第一だと思うので、まずは試合に出るために毎日の練習に必死に取り組んでいきたいです。ただ、試合に出るだけでは意味がないので、試合で何をできるか。自分の持ち味を出すことも、周りを生かすプレーも両方やっていきたいです。とにかく、満足することなく突き詰めていきたいと思っています」

――ここだけは見てくれというポイントはありますか?
「ラストパスは注目してほしいです」

――背番号は32です。何か理由はありますか?
「たまたまと言えばたまたまですけど、ユースのときに高校1年生で付けた番号で、大学1年生のときも最初は32番を付けていたので、“1年目”は32番を付けようと。縁のある番号を付けられたと思います」

――32番によいイメージがあるんですね。
「よいイメージも苦い思い出もありますけど、最初は32番を付けることが自分にとってスタートだと思っています」

――具体的な数字の目標は決めていますか?
「点を取るようなタイプではないですけど、1点は取りたいです。また、開幕スタメンは狙っていきます。まだ何試合以上出たいとかは考えていないですけど、試合に出続けられるようになりたいですし、出られないとしてもトライし続けていきたいと思います。ケガなくやりきることを大事にしながらも、どれだけ自分を追い込めるかが大事だと思うので、そこへの挑戦はしていきたいと思います」

――NACK5スタジアム大宮でのプレーが待っています。
「プロの選手として立ったらいろいろな感情が湧いてきそうです。ユースのときとはファン・サポーターの数も雰囲気も全然違うと思うので、そのなかで勝ってサポーターのみなさんと『寝ても大宮』を歌えるのがすごく楽しみです」

ピッチ外での目標

――少しピッチ外のことも聞かせてください。趣味やリラックス方法はありますか?
「テレビをたまにつけるくらいですかね……()。これから時間はたくさんできると思うので、いろいろとチャレンジしていきたいと思いますし、何か資格も取りたいと思っています」

――大学ではどんなことを学んでいたんですか?
「国際観光学部で観光について学んでいました。ホテルマンやCAさん、旅行業を目指す人が多い学部で授業は面白かったです。ちょうどコロナ禍で観光業界もいろいろと変わってしまいましたけど、勉強していくうちに面白くなり、どんどん興味は生まれました」

――では、就活するとなった場合は観光業界を目指していましたか?
「それも選択肢の1つとしてあったと思いましたが、大学3年生の終わりごろからスポーツマーケティングの会社にインターンに行かせてもらっていたので、おそらくそっちの業界に進んでいたと思います。授業が少なくなった時期に行かせてもらっていましたけど、なかなかハードでした()

――スポーツマーケティングに興味があったんですか?
「サッカーを続けられないとなったら、スポーツを支える側の仕事に興味がありました。サッカー部の先輩が入社していたつながりでインターンに行かせてもらい、スポーツ業界やチームの裏側を知れてすごく面白かったです」

――具体的にどんな仕事をしていたんですか?
「スポーツチームのホームページの作成や広告、営業のお手伝いなどいろいろとやらせてもらいました。だから、他の選手と比べれば、フロントスタッフの人の気持ちや思いはちょっと分かると思います」

――そういう経験を踏まえ、ピッチ外の目標はありますか?
SNSの更新は頑張ろうと思っています。あまり更新頻度は高くなく、11回は難しいかもしれないですけど、それを目標にやっていこうと思っていますので、温かく見守ってください()

――最後にファン・サポーターの方にメッセージをお願いします。
Jr.ユース、ユースのときに応援していた選手の立場に今季からなれることをすごくうれしく、誇りに思います。ファン・サポーターの方々にもっと応援してもらえるような選手になりたいと思っていますので応援よろしくお願いします」

FOLLOW US