【聞きたい放題】大森理生「“ウチの選手”と受け入れてもらうために、熱さを伝えていく」

選手やスタッフにピッチ内外に関わらず様々な質問をしていく本コーナー。今回はFC東京から育成型期限付き移籍で加入した大森理生選手に、熱い想いを語っていただきました。

聞き手=須賀 大輔

「“ウチの選手”と受け入れてもらうために、熱さを伝えていく」


合流して3週間。大宮の印象は?

――始動日から3週間ほどが経ちました。チームには馴染んできましたか。
「『まだ3週間』と『もう3週間』の両方の気持ちがありますけど、あまり気負わずに生活できています。特にピッチ外はアットホームに過ごせていて、サッカーにすべてを注げる環境にあります。昨季も移籍を経験していてどういうモノか分かっていますし、チームからは至るところで受け入れてくれようとする姿勢を感じているので、それは本当にありがたいです」

――チームとしての手ごたえや、自身のコンディションはどうですか?
「毎日タフにやっていて強度も高くできています。決してやらされているだけでなく、自分たちから楽しみを見出だしたり、コミュニケーションを取ったりと常に欠かさずできているので、良いトレーニングを積めていると思います。個人としてはキャンプに入って少しケガをしてしまいましたが、回復できているし大きな問題ではないです。キャンプで自分のプレーを見せたかったので悔しさはありますけど、シーズンに関わる大きなケガでなかったのは不幸中の幸いと、前向きにむしろラッキーと捉えています」

――これまでの大宮や今季トライしようとしているサッカーにはどんな印象をもっていますか。
FC東京U-18のころから大宮U18とはよく対戦していました。当時はポジショナルプレーのイメージで、自分もそういうサッカーに興味があって、対戦していても良い印象や戦いづらかった印象はありました。トップチームも同じようなサッカーを目指している時期があったなか、昨季途中から相馬直樹監督になって、よりアグレッシブさやスピード感が加わって、端的に言えば、結果にこだわるサッカーになったと思っています。サッカーのスタイルが変わったというよりは、(ポジショナルプレーをベースに)プラスαでどんな相手にも勝てる芯の強いチームを作っていくと捉えています。もちろん、新しいこともあるけれど、それはサッカーの本質だと思うので相馬監督の要求は受け入れやすかったし、戦う覚悟はできましたね」

――DFの選手として、現役時代にDFだった監督から指揮を受けることで新しい発見やこれまでとの違いはありますか。
「チームとしての決まりごとや基盤がしっかりしていると感じていますね。それは、一年間を戦い抜くうえですごく大事です。シーズンを通して、自分たちではどうしようもできないトラブルは必ず出てくると思いますが、そのときに結果がどう変わるかといえば、決まりごとや基盤の部分でチームとして一つになれているかどうかです。それは昨季、身をもってすごく大事だと感じました」

プロ3年目。毎年が勝負

――選択肢はいくつかあったと思いますが、今季、大宮でプレーすると決めた理由を聞かせてください。
「昨季、J2でプレーしてみて自分の中で『やれる』感覚はありました。だから、J2でもう一度しっかりと戦いたい気持ちは強かったですし、J2で戦うからには結果を出して終わりたいです。もちろん、チームとして目の前の試合に集中して戦うことは大事ですけど、その上で昇格、J1と上を見ることは絶対の目標としてあります。そのくらい戦えるチーム、そういう可能性のあるチームでやりたいと思っていたときに大宮から声をかけてもらいました。チームのレベルが上がれば競争が激しくなるのは重々承知ですが、すごくうれしいオファーだったので早めに決めさせてもらいました」

――プロ3年目の今季はすごく大事なシーズンだと思います。
「それは意識しています。毎年、“次”を懸けて戦っているし、“様子を見る”みたいな考えはないです。毎年が勝負のつもりでやっていかないといけない。そのなかで、自分のプレースタイルを考えると、背伸びせずにできること、やらないといけないことを最大限出す努力をしていけばチームに貢献できると思っています。勢いが余り過ぎても仕方ないと思っています。性格的にもキックオフの笛が鳴れば勝手にスイッチは入るので、自分をフラットに見ながら戦っていきたいです」

――プロの厳しさを痛感したFC東京での1年目と、結果の重要性に直面したFC琉球での2年目。その2年間で何を得ましたか。
FC東京では公式戦の出場時間を見てもほとんど貢献できませんでした。ただ、人生で一番大事な年だったと思うくらい濃い時間でした。練習でも対峙する相手はJ1トップクラスの選手たちで求められる質も違いました。目の前に良いお手本がたくさんいて、いろいろと声をかけてもらいました。サッカー以外の時間の使い方やトレーニングの仕方など、いろいろと教わりました。あの1年は不可欠だったと思っています。また、昨季は昨季でとても大事な時間でした。ずっと東京で育ってきてはじめて東京を離れて一番遠い沖縄に行ったけれど、自分のなかでも思い切った、ちょっと振り切った決断でした。結果こそ付いてこなかったけれど、本当に1試合1試合の重みを感じました。ピッチ上で戦っているのは自分たちかもしれないですけど、負けて悔しいのは自分たちだけではないし、自分たちだけでサッカーをしている訳ではないと感じました。11人の中の一人としての重要性も学ばせてもらいました。琉球に関わる人には悔しい思いをさせてしまったので、成長した姿を見せないといけない責任があります。たった1年間でしたけど、あの時間は僕の人生であり、今後、どのチームに行っても琉球での経験が生きていると言えるようにしないといけないと思っています」

――それらの経験や思いを踏まえ、大宮での3年目にどうやってつなげていきたいですか。
「その2年があるからこそ、今季は大宮で戦わせてもらえるので勝負の際は大事にしたいです。言葉にするのは難しいし、何が正解なんてないと思うけれど、昨季は勝点1を守り切る、勝点3を奪い切るための最後の5分、10分の大切さを本当に学びました。プレー強度や質もそうですけど、そういう勝利の分かれ目でチームに良い影響をもたらしていかないといけないと思っています」

――「昨季は勝点1を守り切る、勝点3を奪い切るための最後の5分、10分の大切さを本当に学びました」。この言葉は、近年の大宮にも必要な部分だと思います。
「昨季、琉球では本当にそこで泣いた試合が何試合もあって、結果的にギリギリ残留に手が届かなかった。その痛みはすごく残っています。大宮もここ数年は苦しい戦いになってしまっていることは知っています。だけど、大宮には上位で輝けるパワーがある。前線には点を取れる選手がいるし、自信を持って勝てると言える選手がそろっていると思うので、それを後ろからサポートして、試合をまとめる役割を担っていきたいです」

――ピッチ上で何ができるか問われるシーズンになりそうですね。
「そうだと思っています。もちろん、シーズン中に何が起きるかは分からないし、もしかしたらケガをするかもしれない。シーズンを通して試合に出るかもしれない。自分にできる準備や対策はするけど、起きてしまったことは仕方がないと受け入れます。どんな立場でもチームの一員でいる以上は移籍形態に関係なく、アルディージャのために戦う自覚をもってやっていきたいです。Jリーグファンのなかには“レンタル移籍のイメージ”があると思いますけど、それを払しょくして“ウチの選手”と受け入れてもらうために、熱さを伝えていかないといけないですし、そうでないとファン・サポーターの皆さんと一緒に戦ってもらえないと思うので、その姿勢を見せていきたいです」

――矢島輝一選手も岡庭愁人選手もとにかく熱いです。FC東京で育った選手にはそういう血が流れているのでしょうか。
「そういう熱いチームで育ってきた自覚はありますし、その熱さはどこのチームに行っても変わらないと教わってきました。東京のアカデミーで育ってきたということは、自ずとそういう思いが染み付いているはずだし、もしかしたら、そういう熱さが染み付いている選手が集まる場所なのかもしれません。どのチームに行っても自分のやるべきことは変わらないです。それぞれのチームにいろいろな思いがあって、歴史がつながってきて、それでいまがあると思うので、今季は大宮で結果を残すことだけを考えています」

趣味はF1鑑賞。人間模様にハマる

――プレーの特長を教えてください。
「粘り強さや最後に足が伸びるよねと言われるプレーヤーを目指しているので、そこは特長にしていきたいです。あとは、フィードです。得点に絡むフィードやパスなど攻撃的なプレーは意識しています。早く、チームメートとファン・サポーターと熱く戦うのが楽しみですね」

――ピッチ外では誰と仲良くなりましたか。
「いろいろな人と話す時間はありますけど、キャンプでは小島幹敏くんと同部屋です。普段の口数は多くないと思いますけど、部屋では他愛のない平和な話をしています()。会って間もないですけど、落ち着くし居心地がいいです。元気に楽しく過ごせています。幹敏くんはマイペースですけど優しいので、お互いにマイペースに生活できています」

――趣味やリラックス方法はありますか。
「琉球時代はカフェにけっこう行っていました。いまはF1にハマっています」

――好きなドライバーがいるんですか?
「いるんですよ。でも、F1に詳しい人があまりいなくて、ほとんどの人が名前を言っても分からないんですよね……(苦笑)。父がF1に詳しいので、実家に帰ったときはずっと話しています」

――ファン・サポーターや読者の方に知っている人もいるはずなので、好きなドライバーの名前を教えてください。
「ルイス・ハミルトン選手です。メルセデスベンツのメルセデスというチームのドライバーです。モータースポーツなのでサッカーと比べたら人間味が少ない競技なのかなと思って観始めたけれど、全然違いました。ドキュメンタリーを観ても、ドライビングにメンタルの影響が出る競技で、数百人が関わってマシーンを作り上げて、それを操縦するドライバーがいて、スポンサーの考えもあってと、サッカーよりも人間関係の影響がより濃く出るので観ていて楽しいですね」

――F1から影響を受けることはありますか?
「ドライバーは孤独な戦いで自分の調子に全部が左右されるぶん、難しい場面でも自分の芯をブラさないところはすごいです。ドライビング技術一つを取っても、クリーンに走る選手もいれば、果敢に追い抜こうとする選手もいるし、味方とバトルしてしまう選手もいる。一人ひとりがプロフェッショナルなのでカッコいいし勉強になります」

――昨季は実現できなかった兄・渚生選手(栃木)との兄弟対決が楽しみです。
「ちょうど3歳離れているのでアカデミー時代も対戦経験がなく、実現すればおそらく初めてなのですごく楽しみですね。両親やおじいちゃんおばあちゃんも楽しみにしてくれていると思うので、実現できたらなと思っています」

―― NACK5スタジアム大宮でのプレーは待ち遠しいですか。
「昨季のアウェイゲームはベンチでしたけど、プレミアリーグみたいな近さでギュッとなった熱量はJリーグではなかなか味わえないですし本当に楽しみです。ゴールを決めればすぐにゴール裏に行けるので、ポジションに戻るのも大変ではなくていいですね()。たくさんゴールを決めて一緒に喜べるようにしたいです」

――ファン・サポーターの皆さんにメッセージをお願いします。
「チーム一体になって戦うことが大事だと思います。もちろんそれは選手を含めてですけど、どんどんその輪を大きくしていって、街全体、クラブ全体、サポーターの皆さん全体で戦っていくことが結果につながると思います。その結果に応えるのが僕たち選手の責任なので、ぜひ、みなさんも一緒に戦ってください」


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