ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回は、アカデミーの定点観測を続けている土地記者に、高校年代最高峰の戦いと言われている高円宮杯プレミアリーグの開幕戦をレポートしてもらいました。
【ライターコラム「春夏秋橙」】土地 将靖
終盤に追い付きドロー発進。負けない強さを見せる
大宮アルディージャU18の2023シーズンがスタートした。
4月1日、高円宮杯U-18サッカーリーグ2023プレミアリーグが開幕。大宮U18は翌2日、EAST第1節で市立船橋高校をホームNACK5スタジアム大宮に迎えた。
開幕戦独特の緊張感が漂うなか、長いボールを主体にじりじりとしたせめぎ合いが続いたが、安部直斗が右サイドを突破、深くえぐってクロスを送り、チャンスが生まれたところから大宮U18のラッシュが始まった。
その直後の25分、左から種田陽が送ったクロスに、この日はFWに入った菊浪涼生が頭で合わせた。
「種田選手がカットインしたときに(クロスが)上がってくるというのはわかっていたので、そこに走りこんだらちょうどピンポイントに来て、当てるだけでした。ヘディングは苦手なんですけど、気持ちで押し込みました」(菊浪)
これで勢いづいた大宮U18は、さらに怒涛の攻めを繰り出す。31分、コーナーキックからの真壁拓海のヘディングシュートはクロスバーをたたき、40分には種田のクロスから菊浪が決定的なシュートを放つ。1-0で折り返した後半も、種田を中心にボールを支配して市立船橋ゴールに攻め寄った。
しかし、思わぬ形で失点を喫した。縦パスを最終ラインの裏に通されたところへ、この日がプレミアデビューとなった2年生守護神・清水飛来が飛び出すも、そのままかわされると無人のゴールへ蹴り込まれてしまった。
「(市原)吏音さんとしっかりコミュニケーションを取れていれば、出ない判断をして、その後、1対1に持っていきたい場面でした」(清水)
さらに81分、市立船橋はロングスローからヘディングシュート。これが大きな山なりの軌道でゴールに吸い込まれる。アンラッキーな失点で逆転を許してしまったが、しかし大宮U18の心は折れてはいなかった。
直後の83分。コンビネーションで右サイドを破った浅井一彦がクロスを送ると、ファーサイドで種田がフリーで待ち構えていた。
「足でも頭でもいけるって感じの(ボールの)高さでしたけど、ヘディングのコースが見えました。カズ(浅井)のボールがすごく良かったので、流し込むだけでした」(種田)
その後も再逆転を目指し、セットプレーでは市原の高さで市立船橋ゴールを何度も脅かしたが及ばず。オープニングゲームは2-2の痛み分けとなった。
「開幕戦をこのスタジアムで戦うことができて、たくさんの人に観に来てもらっていい雰囲気のなかで、勝点1でしたけど負けなかったことはポジティブに考えたいと思います」
森田浩史監督はそう試合を振り返った。
陣容を見れば、斉藤秀輝や磯崎麻玖といった去年からの中心戦力がコンディション面の問題で戦列を離れている。選手の数自体、現時点で32名と1学年平均で11名を切っており、若干スリムな組織である。これを、層の薄さと捉えて悲観してしまえばそこまでだ。
この日ベンチには、早くも1年生が3人も控えた。残念ながら試合出場はかなわなかったが、憧れた舞台を、スタンドから見るだけでなくタッチライン際から肌で感じることができたのは、今後への大きな刺激になったはずだ。
「3年生が中心となって、下の学年ともコミュニケーションを取ってうまくまとまって進んでいこうというのが、もうこの時期でもすごく見える。そういう3年生に引っ張られて2年生もよくやってくれているし、これから1年生も本格的に入ってきて、彼らも交えたなかでどんどん競争が生まれて、いいものになっていけばいい」(森田監督)
もちろん、やるからには頂点を目指す。だが、優勝が途絶えてから下方修正を繰り返した過去の反省から、今年は中間目標的なものを設定したという。そこをクリアするのが早ければ早いほど、より優勝の可能性が高まるということだ。
「戦いながら選手とチームが成長していくことが一番大事だと思うので、地に足をつけて一歩ずつ頑張っていきたいと思います」(森田監督)
目標に向かって、長く厳しい戦いが始まった。