【ライターコラム「春夏秋橙」】世代をまたいでOBが集結。懐かしい面々のプレーにスタジアムが沸く

ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回は、1022日(日)に浦和駒場スタジアムで行われたOBスペシャルマッチの模様を、クラブオフィシャルライターの戸塚啓さんにレポートしてもらいました。

【ライターコラム「春夏秋橙」】戸塚 啓
世代をまたいでOBが集結。懐かしい面々のプレーにスタジアムが沸く


懐かしい姿に、ファン・サポーターが胸を躍らせた。

大宮アルディージャがさいたま市、同市サッカーのまちづくり推進協議会、浦和レッズと共催している『さいたまサッカーフェスタ2023』が、10月22日に浦和駒場スタジアムで開催された。サッカー教室など多数のプログラムが盛り込まれた中で、両チームのファン・サポーターを沸かせたのはOBスペシャルマッチだっただろう。アウェイゲームとなった2023明治安田J2リーグ第39節・藤枝MYFC戦と同じ日の開催となったものの、スタンドにはアルディージャのファン・サポーターも多数駆けつけている。

試合は20分ハーフで行なわれた。ケガ予防などの観点から、選手交代の制限はない。

アルディージャはクラブ伝統の[4-4-2]のシステムで臨んだ。ここ数年のトップチームは[3-4-2-1]や[5--1]で戦うこともあるが、98年のチーム立ち上げから脈々と受け継がれてきた4バックに、クラブの歴史を彩ったOBたちが並ぶのだ。それだけで胸が高なると言ってもいいだろう。

しかも、多くの選手たちが現役当時と同じ背番号を着けている。現役当時の姿が思い起こされ、懐かしい記憶がよみがえってくる。

現役当時の体型を維持している方がいれば、少しばかり体型が変わった方もいる。それがまた時の流れを感じさせるが、往年と変わらないプレーが随所に見られた。

SBでプレーする上村祐司(98-02年在籍)を見ると、クラブの黎明期が思い出される。上村と同じ右SBを主戦場とした村山祐介(07-09年在籍)は、今日はCBでプレーする。


上村祐司()と村山祐介()

SBで出場した尾亦弘友希(04年在籍)は、左足のサイドチェンジやクロスでスタンドを沸かせた。その尾亦とMF渡邉大剛(11-15年在籍)のコンビが、左サイドで優位性を作る。


尾亦弘友希


渡邉大剛

中盤では斉藤雅人(98-09年在籍)と氏家英行(99-04年在籍)のダブルボランチが、現役当時さながらのコンビネーションを披露する。FW横山聡(01-05年在籍)の鋭い飛び出しも健在だ。


斉藤雅人


氏家英行


横山聡

序盤は自陣での攻防が続いたものの、15分に先制する。相手GKのパントキックを敵陣でカットすると、ペナルティエリアすぐ外の斉藤にボールがわたる。右足のミドルシュートが、鮮やかにネットを揺らした。

前半を1-1で折り返すと、後半開始から片岡洋介(05-09年、11-15年在籍)が登場する。現役当時は守備のオールラウンダーだったが、この日はFW(あるいはセカンドストライカー)のようなポジションでプレーした。「もう動けないですから、なるべく迷惑がかからないようにと思って。イメージはあるんですけど、体がついていかないですねえ」とは本人の弁だ。


片岡洋介

最終ライン中央では福田俊介(09-16年在籍)と村山がどっしりと構えていた。さらに、GK関修(98年在籍)が前半から好セーブを見せていただけに、片岡が入らなくても守備に不安はなかったということなのだろう。


福田俊介


関修

後半に失点をしてしまったが、これはエキシビションならではと言うべきもの。1-2という結果はともかく、ファン・サポーターにとっては満足できる40分だったに違いない。

選手たちも楽しそうだった。

CBとして存在感を見せつけた福田は、37歳の今も現役を続けている。関東サッカーリーグ2部のアヴェントゥーラ川口で、ヘッドコーチ兼任でプレーしているのだ。抜群の存在感も納得である。

「OB戦は毎年の楽しみで、こうやって集まってみんなでプレーするとやっぱりいいなあと。途中からは僕の右に(渡部)大輔がいたりして、現役当時を思い出しました」

昨シーズンまで現役でプレーヤーした渡部大輔(08-21年在籍)は、初めてのOB戦だった。右MFや右SBで躍動感あふれるプレーを披露した。ボール際の攻防などで「やっぱり、一瞬熱くなったりすることもありました」と笑顔を浮かべた。


渡部大輔

「現役のときに一緒にやっていた選手とプレーするのは懐かしいですし、『そうだ、この人はこういうプレーをするんだよな』とか、『懐かしいボールがきたなあ』と思い出したりもしました」(渡部)

背番号7を着けた氏家英行は、中長距離のフィードを鮮やかに通していた。テンポの良いパスワークの中心にもなった。「U40のチームでプレーしているので、まあまあ、動けます」と、気持ち良さそうに汗をぬぐう。

「このメンバーで練習をしてきたわけじゃないんですけど、[4-4-2]はやっぱり体に残っているというか、しっくりくるというか、何か言わなくてもできるところがありますね。こうやって大宮の仲間とやると、『あ、そこにいるよな』とか『ここに立っていればパスが来るよな』とかいう感覚があるんですよね。マサさん(斉藤雅人)とは何年もやっていたので、やっぱりやりやすいですしね」(氏家)

懐かしい背番号15に身を包んだ斉藤は、「オレンジのユニフォームを着てプレーするのは。やっぱりいいですね。天然芝の上でサッカーをやるのは久しぶりでしたし、フルコートでやるのはなかなかないので、楽しかったですね。自分も含めてOBが元気な姿を見せることで、アルディージャを応援してくれるみなさんに喜んでもらえたらうれしいです」

世代をまたいでたくさんのOBが集い、ピッチに、スタンドに、笑顔が広がった。

■大宮アルディージャOB出場選手(敬称略)
平本大介 (1997-1999年在籍)
関修 (1998年在籍)
上村祐司 (1998-2002年在籍)
氏家英行 (1999-2004年在籍)
横山聡 (2001-2005年在籍)
石亀晃 (2004-2007年在籍)
村山祐介 (2007-2009年在籍)
川辺隆弥 (2007-2009年在籍)
市川雅彦 (2008-2012年在籍)
渡部大輔 (2008-2021年在籍)
福田俊介 (2009-2016年在籍)
渡邉大剛 (2011-2015年在籍)
斉藤雅人 (1998-2009年在籍)
尾亦弘友希 (2004年在籍)
片岡洋介 (2005-2009年、2011-2015年在籍)
西村陽毅 (2006-2007年、2009年)


戸塚 啓(とつか けい)
1991年から1998年までサッカー専門誌の編集部に所属し、同年途中よりフリーライターとして活動。2002年から大宮アルディージャのオフィシャルライターを務める。取材規制のあった2011年の北朝鮮戦などを除き、1990年4月から日本代表の国際Aマッチの取材を続けている。

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