【ライターコラム「春夏秋橙」】始動日から見えた、新シーズンへの決意

ピッチで戦う選手やスタッフの素顔や魅力を、アルディージャを“定点観測”する記者の視点でお届けする本コーナー。今回は、2024シーズン始動日の練習を取材したオフィシャルライターの戸塚啓さんに、西大宮で感じた新チームの印象をレポートしていただきました。

【ライターコラム「春夏秋橙」】戸塚 啓
始動日から見えた、新シーズンへの決意


ピッチから伝わる期待感

2024年への期待を、それも大きな期待を、抱かせた。 

19日、大宮アルディージャはチーム始動日を迎えた。長澤徹監督以下スタッフと、ほぼすべての選手が西大宮のグラウンドに立ち、新たな一歩を踏み出した。

練習の冒頭では長澤監督を中心に円陣が組まれ、その後は器具を使ったウォーミングアップとフィジカルトレーニング、ボールトレーニングなどが行なわれた。選手たちは初日特有の緊張感に包まれながらも、ボールを使った5対2のトレーニングでは大きな声が響いた。

練習開始直前に期限付き移籍での加入が発表された杉本健勇は、「初めての選手が多いので、しっかりコミュニケーションをとっていきたい」と話した。様々な選択肢があるなかでアルディージャを選んだことを明かし、「クラブハウスも含めて環境はホントにいいし、ここにいたらダメだと思う。今年はJ2に上がるのが目標ですけど、のちのちはJ1に上がらないといけない。そういういい危機感、厳しさを持って、チームが同じ方向を向いてできるように」と、引き締まった表情を浮かべた。

ランニングで先頭に立ったのは浦上仁騎だ。「このクラブのDNAを持った選手が多く離れたなかで、僕とか小島(幹敏)とかは年齢的にもチームを引っ張る役割を担います」と話した。その上で、「新加入選手のプレースタイルを把握しつつ、人柄とかも知っていければ」と語り、ピッチの内外でコミュニケーションを深めていくとした。

浦上と同じくアカデミー出身の石川俊輝は、プロ11年目のシーズンを迎えた。「J3優勝を果たすために、僕自身がこれまで経験してきたことを伝えていかなければいけないですし、伝えるだけじゃなくて自分自身ももっともっと成長しないといけない」と、チーム全体へ目配せをしながら自らに矢印を向ける。DF濱田水輝、MFアルトゥール シルバ、FW杉本らの新加入選手については、「対戦して苦しめられた選手もいて、そういう選手たちとアルディージャのユニフォームを着て試合をするのはホントに楽しみです。自分がその場に立てるように、しっかり競争で勝っていけるようにしたいです」と決意を新たにしていた。

“躍動感”を表現したい

練習後に取材に応じた長澤監督は、最初にファン・サポーターに触れた。

「ファン・サポーターの方がこんなに来てくれて、やっぱりすごいクラブだなあと。トレーニングうんぬんよりもまず、そちらにびっくりしています」 

55歳の指揮官はJリーグの複数クラブを渡り歩きながら、現場の最前線に立ち続けている。19年にはFC東京U-23を率い、J3リーグを戦った。

J3は甘くない」との大前提に立ちながらも、優勝をターゲットとする。その上で、「躍動感」を表現したいと話す。

「生き生きとした躍動感が価値観として大好きで、週末になったらユニフォームを着て試合を観にいこうと思ってもらえるようにしたい。アグレッシブにやりますと口で言うのではなく、そう感じ取ってもらえるか。観ている人が認めてくれないとスタイルにならないので、そこは年間を通して追求していきたい」

選手、スタッフがそれぞれに揺るぎない決意を胸に秘めて、2024年のアルディージャは動き出した。期待を希望に、希望を自信へ、自信を確信へ変えていく日々が、今、始まった。


戸塚 (とつか けい)
1991年から1998年までサッカー専門誌の編集部に所属し、同年途中よりフリーライターとして活動。2002年から大宮アルディージャのオフィシャルライターを務める。取材規制のあった2011年の北朝鮮戦などを除き、1990年4月から日本代表の国際Aマッチの取材を続けている。

 

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